17/01/01
確定拠出年金では、年末調整、離転職、倒産した場合はどうなるの?
FPでありDCプランナーでもある筆者が、確定拠出年金(DC)の「企業型」にフォーカスして、初歩からわかりやすく説明していきます。
この連載を読めば、企業型DCを上手に活用できるようになります。
今回は年末調整、離転職、倒産した時、金融機関先が破綻した時の扱いについて説明します。
拠出時の節税効果を受けるためには、年末調整時の申告や確定申告が必要
確定拠出年金の大きなメリットひとつである、掛金が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除となり、所得税や住民税の節税効果をうけるためには、年末調整または確定申告をする必要があります。
ただ、企業型DCでは掛金は会社が負担するので、従業員の節税効果はなく申告の必要もありません。マッチング拠出として従業員が上乗せ拠出をしている場合がありますが、その場合は、会社が年間拠出額を把握していますので手続きをしてくれます。
なお、2017年からは企業型DCに加入していても、マッチング拠出はしていない状況で、かつiDeCoiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入できる旨が規約にあれば、個人型DCに加入することができます。その場合は、控除証明書を会社に提出して年末調整で手続するか、確定申告をする必要があります。
転職時、離職時の取扱い
確定拠出年金のメリットのひとつは、ポータビリティがあることです。つまり、退職しても、企業型DCがある会社に転職した場合は、転職先の企業型DCに移管し、転職先に企業型DCがない場合は、個人型DCに移管することが可能です。
ただし、どちらにしても一旦時価(その時の市場価格)で現金化してから、移管先の商品を買うことになるので、手数料がかかる可能性があることと、移管手続中は運用ができないため、商品の価格変動に対応できないことがあります。
とはいえ、運用を続けている間は、拠出時の節税効果のメリットを受けることができます。
しかし、一番やってはいけないことは、退職したあと移管手続きをせずにほっておくことです。
6ヶ月以内に移管手続きをせずにいると、勝手に資産が換金されて、「国民年金基金連合会」に移管されてしまいます。拠出はもちろん、運用もできなくなり、保管手数料が引かれ、資産はどんどん目減りしてしまいます。その上、年金の加入期間に合計されない期間となるので、60歳時点で資金を受け取ることができなくなる可能性でてきます。
2017年からはほぼすべての方が、確定拠出年金の加入対象者となるので、かならず移管手続きを忘れないようにしましょう。
勤務先が倒産してしまった場合は?
確定拠出年金の資産は、会社の口座に積み立てられているわけではありません。「資産管理機関」と呼ばれる、信託銀行などの個人口座で管理されているので心配はありません。
もちろん、倒産後は、勤務先は掛金を負担してくれませんので、さきほどの離職時と同様、資金を個人型DCに移管して、個人で負担するなどの手続きをしなければなりません。
金融機関(運営管理機関)が破たんした場合は?
金融機関(運営管理機関)が破たんした場合はどうでしょうか。
資産は金融機関の口座とは別立てで保全されていますので、全額保全されます。
しかし、商品提供会社が破たんした場合は注意が必要です。例えば預金は、預金保険制度(ペイオフ)の対象として、一般の同じ金融機関の預金と合算して1000万円とその利息までの保護となります。
また保険商品は保険契約者保護機構の補償対象となり、生命保険商品は責任準備金の90%までが、損害保険商品は保険金・返戻金の90%までの補償となるので注意が必要です。
投資信託についてですが、投資信託に関わる「販売会社」「運用会社」「信託銀行」のどれか、またはすべてが破たんしても、投資信託の制度の仕組みから預けたお金は全額保全されています。しかし万が一に備えて「投資者保護基金」という制度があり、1人あたり時価で1000万円を限度に補償を受けることができるという、二重の保護となっています。
まとめ
確定拠出年金の大きなメリットである、掛金の所得税・住民税の節税効果は、掛金を拠出していてこそ受けることができます。企業型の掛金は会社負担であることと、マッチング拠出をしていても会社が自動的に年末調整で手続してくれるので、普段は意識しにくいところです。退職し、転職先に企業型がないときや、起業するとき、専業主婦になるときなどは、個人型への移管手続きを忘れないようにしましょう。
次回はいよいよ最終回、確定拠出年金を受給するときの注意点の説明をします。
最終回もぜひおつきあいください!
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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