21/05/14
シングルの女性が老後を迎えたら老後資金はいくら必要? 今からできる経済的自立への準備
最近ではシングルの女性も珍しいものではなくなってきました。結婚せずに生きていくにも楽しみが多いですし、一人で気楽に生活していくことに魅力を感じている人も多いでしょう。また、結婚したものの夫が亡くなったというパターンもあります。
とはいえ、どのような場合でも、老後資金を貯めることに対して不安がないという人はいないのではないでしょうか。そこで今回は、シングルの女性が老後を迎えたら必要な老後資金やそのための準備についてご紹介します。
シングルの女性の老後生活における支出額と収入額をチェック
まずは一人暮らしの方が老後生活を送る場合に必要な生活費をチェックしてみましょう。
総務省統計局が公表している家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)によると、「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)」の消費支出は13万3146円となっています。一方で実収入は13万6964円、そのうち可処分所得は12万5423円となっています。
たた、2020年の数字には新型コロナウイルス感染症の影響もありますので、これ以降では前年の「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)」の数字を見ていきたいと思います。
「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)」の消費支出は13万9739円、実収入は12万4710円、そのうち可処分所得は11万2649円でした。
ただし、これはあくまで統計であり、65歳を迎えたときに置かれている状況によって大きく変わってきます。
たとえば65歳を過ぎて正社員でなくとも働いていれば実収入はもう少し増えるかもしれません。一方で65歳を過ぎても何らかのローンが残っている、都心で家賃を支払いながら生活しているなどのさまざまな状況によって支出額が上振れしてしまう可能性があります。消費支出を見て、現在都心に住んでいるシングルの方は消費支出が13万円台に抑えられるかと不安に感じた方も多いのではないでしょうか。
一人暮らしをするとして住宅は購入するのか、それとも賃貸で生活していくのか。住宅ローンを組むなら何歳で住宅ローンを組み、何歳までに完済する予定なのか。今と同じところで暮らすのか地元に帰りたいのかなど暮らす場所にもよりますし、両親の介護をどうするかにもよります。
実に多くの要素によって老後の支出額も収入額も変わりますので、統計や平均値を参考にするのもいいですが、現在の自分の生活と将来的なプランと照らし合わせながら現実的な支出額と収入額を今のうちから考えてみましょう。
シングルの女性の貯金額と老後にもらえる年金額とは
続いて、「平成26年全国消費実態調査」で一人暮らし世帯の平均貯金額を見てみましょう。65歳以上の貯蓄現在高階級別の世帯分布を見ると、平均値は男性が1502万円、女性が1466万円となっていますが、この平均値を下回る世帯が男性で6割以上、女性で5割以上を占めています。老後に向けて思うように貯金ができていない人も少なくなく、中央値は男性が920万円、女性が830万円となっていました。
続いて、もらえる年金額を見てみましょう。「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給額は男性17万1305円、女性10万8813円となっています。厚生年金は会社員や公務員として働き、保険料を納めてきた人が対象ですので、自営業もしくはフリーランスとして働いてきた人は国民年金を受け取ることとなります。国民年金は男性が5万8866円、女性は5万3699円となっており、厚生年金よりは受給金額が少なくなっています。
これらの金額と消費支出を比べると、自己資金で貯めなければならない金額がわかります。
シングルの女性が生活していくために貯めなければならない金額を計算してみましょう。
月間の消費支出から年金額を引いて、不足する金額を算出してみましょう。
●厚生年金の場合
13万9739円(月間の消費支出)- 10万8813円(厚生年金の場合)= 3万926円(不足分)
●国民年金の場合
13万9739円(月間の消費支出)- 5万3699円(国民年金の場合)= 8万6040円(不足分)
女性の平均寿命は「令和元年簡易生命表」によると87.45歳。65歳から考えると約22年間分の老後資金を確保しなければならないということになりますが、少し余裕を持って90歳まで(25年間)として計算してみましょう。
厚生年金の場合、月額約3万円不足するのですから、25年間分で計算する場合は約900万円が必要となります。同様に、国民年金の場合月額約8万円不足するのですから、25年間分で計算する場合は約2400万円が必要となります。
こうして見てみると、たとえ前述した高齢単身女性の貯金額の中央値、830万円を貯めていたとしてもやや不足する計算となります。
今からできる老後資金の準備
不足することがわかれば、今すぐにでも老後に向けて準備しようと思いますよね。老後資金を貯めるためには非課税制度をうまく活用するのがおすすめです。じぶんで作れる年金「iDeCo(イデコ)」をはじめ、運用益が非課税となる「つみたてNISA」、「NISA」などの非課税制度を活用し、老後資金を貯めていけば税金を支払わなくていい分効率よく老後資金が貯められます。国がサポートしてくれている制度なので使わない手はありません。
最近では「FIRE」と呼ばれる生き方が注目を集めています。「FIRE」とはFinancial Independence Retire Earlyの頭文字を取ったもので、資産運用などを中心に生活しながら経済的に自立し、早期退職をめざす方法です。ただしFIREでは必ずしも早期退職を目指す必要はなく、好きなタイミングで自分の好きな仕事をして生きていくという方法もあります。この中で重要なのは、FIREでリタイアする場合のその後の資産運用です。FIREを志す人たちの間で定番ルールとなっているのが「4%ルール」というもの。「4%ルール」とは、生活費を投資元本の4%以内に抑えることができれば、資産が目減りすることなく生活していけるという仮定のルールです。
つまり、早期退職時に年間し支出の25倍を貯めておけばリタイア後の資産運用だけで生活していけるということです。年間支出が250万円ならその25倍の6250万円が早期リタイアしてよい貯蓄額の目安ということになります。ただし、リタイアしたあともゆっくりと好きな仕事で月10万円程度をかせぎながら生きていくとすれば年間支出は250万円から120万円を差し引いた130万円となり、3250万円を貯めれば早期リタイアして資産運用と好きな仕事をしながら気ままに生きていけるということになります。
こうして考えていけば、老後資金を貯める方法も様々だと思えるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか。今回はシングルの女性に必要な老後資金とその準備についてご紹介しました。老後2000万円問題が話題となり、「自分はそんなにお金を貯められるのだろうか」と感じた人も多いと思います。必ずしも2000万円が必要なのではなく、人によってはもっと少なくて済むケースもありますし、もっと多くの金額が必要となるケースもあります。まずは自分が老後にいくら必要になりそうか、計算してみてはいかがでしょうか。
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大塚 ちえ ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種
新卒から証券会社一筋で働く、現役アラサー金融ウーマン。スポーツと音楽が趣味。金融機関勤めで得た知識と経験で、キャリアやお金、結婚・恋愛のことなどいろんな女性の悩みに向き合う。現代日本に生きる働きすぎな女性にエールを送る。
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