24/05/26
【知らないと大損】年金受給者やフリーランスが定額減税を受ける方法
2024年6月から実施される定額減税の対象になるのは、会社員・公務員といった給与所得者だけではありません。年金受給者やフリーランスももちろん対象です。しかし、年金受給者やフリーランスの定額減税の控除方法は、給与所得者とは異なります。今回は、年金受給者やフリーランスの定額減税がどのように行われるのかを見ていきましょう。
定額減税はどう行われる?
定額減税では、1人あたり所得税3万円、住民税1万円の計4万円が減税されます。
定額減税の対象となるのは、納税者本人とその扶養家族(同一生計配偶者または扶養親族)です(いずれも居住者のみ)。たとえば、夫が妻と子ども2人を養う4人家族の世帯では、所得税12万円、住民税4万円の減税が受けられます。
会社員や公務員といった給与所得者の場合、所得税と住民税は次のように減税されます。
●給与所得者の定額減税
・所得税…2024年6月から12月の7か月間にわたって減税
・住民税…2024年6月分は徴収せず、7月分から2025年5月分までの11か月間にわたって減税分を割り振って減税
※定額減税で引ききれない分は「調整給付」としてもらえる(1万円未満の金額は切り上げ1万円単位で給付)
給与所得者は毎月の給与から所得税や住民税が天引きされています。定額減税によって、その天引きされる所得税や住民税が減る(控除される)ため、手取りが増えます。また、定額減税で引ききれない分は「調整給付」という給付金がもらえます。
年金受給者やフリーランスも、大まかには給与所得者と同様なのですが、定額減税で控除される方法や時期には違いがあります。
年金受給者の定額減税はどうなる?
年金受給者の年金は年6回、原則偶数月の15日に2か月分が支給されます。年18万円以上の年金を受給していれば所得税や住民税は「特別徴収」といって、支給される年金から天引きされます。
所得税は2024年6月に支給される年金から減税が行われます。6月に全額を減税しきれない場合は、以後「2024年中」(=2024年12月分まで)に支給される年金から順次減税されます。
たとえば、2か月分の年金の所得税が1万2000円の人(単身者)の場合、所得税は次のように減税されます。
<年金受給者の所得税の定額減税>
(株)Money&You作成
単身者ですので、所得税の控除額は3万円です。2024年6月の所得税から1万2000円を控除しただけでは所得税が引ききれないので、8月にも1万2000円、10月には6000円を控除することで合計3万円控除します。
住民税も所得税同様、年6回の年金支給の際に源泉徴収されている分から減税が行われるのですが、所得税とは違い、2024年10月分から控除が行われ、引ききれない分は12月分以降「2024年度中」(=2025年2月分まで)に支給される年金から順次減税されます。
<年金受給者の住民税の定額減税>
総務省「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」より
フリーランスの定額減税はどうなる?
フリーランスの人は、毎年確定申告をして所得税を納めています。定額減税の対象になる「2024年(令和6年)分の所得税」は、2024年1月1日から12月31日までの1年間の所得をもとに計算し、2025年2月〜3月に確定申告を行って支払います。このときに、定額減税の1人あたり3万円分を差し引きます。
なお、前年の所得を基に計算した納税額が15万円以上の場合は、確定申告前の年2回の予定納税(7月・11月)のときに所得税の減税を行います。
つまり、自営業やフリーランスの方は、確定申告をしないと所得税の定額減税が受けられません。
もっとも、自営業やフリーランスの場合、毎年確定申告していますので、確定申告自体をすること自体は問題ないでしょう。申告書の書き方などはまだ発表されていないので、今後の情報を待ちましょう。
一方、定額減税の対象になる住民税は「2024年度(令和6年度)分」。2024年度分の住民税の金額は、前年の2023年1月1日〜12月31日までの1年間の所得をもとに計算されます。したがって、すでに住民税の金額は決まっています。
フリーランスの場合、2024年度の住民税は、郵送で届く納付書にしたがって、2024年6月・8月・10月・2025年1月の4回に分けて支払います。
<フリーランスの住民税の定額減税>
総務省「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」より
図のように、住民税の定額減税分は1回目(2024年6月分)からまとめて控除されます。また、もし控除しきれない場合は2回目(2024年8月分)からも順次控除されます。郵送で届く納付書の金額は、すでに定額減税分を反映したものになっていますので、とくに手続きなく減税を受けることができます。
定額減税されたかを確認するには?
年金受給者の場合、所得税の定額減税の金額は2025年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」に記載されます。
<公的年金等の源泉徴収票>
日本年金機構のウェブサイトより
2024年中に減税された金額については、「源泉徴収時所得税減税控除済額」として、その金額が記載されます。控除しきれなかった金額は「控除外額(控除していない額)」と表示されます。
フリーランスの場合は、確定申告の際に定額減税の金額を記載します。書式は本稿執筆時点(2024年5月18日)にはまだ発表されていませんが、それに正しく記載すればよいでしょう。
また、住民税の定額減税は、6月に届く「住民税決定通知書」で確認できます。具体的には、次のとおりです。
<住民税決定通知書の「定額減税」チェックポイント>
(株)Money&You作成
①「摘要」の欄
「定額減税(控除額◯◯円、控除外額◯◯円)」と記載されます。控除額は住民税の所得割額から差し引くことができた金額、控除外額は差し引けなかった金額です。
②「税額控除額」の欄
税額控除額の欄には、市町村民税(特別区民税)・道府県民税(都民税)から差し引く金額が含まれています。たとえば、住民税を4万円差し引くことができ、他に税額控除がなければ、2つの欄の合計額は4万円です。
③「納付額」の欄
納付額の欄には、毎月納める住民税の金額が記載されます。
上でも紹介したとおり、年金受給者は10月分、フリーランスは6月分から住民税の定額減税が始まるので、10月(6月)から住民税の金額が減っているか、②の金額分減っているかを確認しましょう。
定額減税で引ききれない分は給付金としてもらえる!
納める税額が少ない、あるいは扶養家族が多いなどの理由で、定額減税を行っても税金を引ききれない場合があります。この場合、差し引けなかった分が「調整給付」という給付金としてもらえます。
調整給付では、差し引けなかった分のうち、1万円未満の金額は「切り上げ」になり1万円単位で給付されます。たとえば「3万6000円引ききれなかった」なら4万円がもらえます。
調整給付には、当初給付と不足額給付の2つがあります。
当初給付は、2023年の所得や控除の状況に基づき、定額減税で引ききれない金額があると見込まれる場合に、先に支給される給付です。自治体により異なりますが、早ければ2024年6月から順次実施される予定です。
不足額給付は、2024年の所得税額が確定したあとに、当初給付の金額に不足があった場合に追加で行われる給付です。2025年(令和7年)以降に行われる予定ですが、具体的にいつかはまだ公表されていないようなので、お住まいの自治体の情報を確認しておきましょう。
当初給付は2023年の所得をもとに行われるので、2024年の所得とずれが生じる可能性があります。たとえば、2024年中に収入が減った方や扶養家族が増えた方は、2024年の所得税額が減るため、「当初給付の給付金が本来もらえる金額よりも多かった」となる可能性があります。しかし、この場合でも返金する必要はありません。
反対に、収入が増えた方などの場合、所得税額が増えることで当初給付が足りなかった、ということもあるかもしれません。この場合は、不足額給付の際に追加で給付金がもらえます。
定額減税をきちんと生かそう
定額減税で所得税・住民税が減ること、年金受給者やフリーランスの場合は給与所得者と定額減税の方法が異なることを紹介してきました。定額減税がきちんと適用されているかを確認して、浮いたお金を有意義に活用しましょう。
【関連記事もチェック】
・「年金211万円の壁」を超えると手取りが急激に減るってほんと?
・「ねんきん定期便見たら数十万円増額してた」年金額が増えた驚きの理由
・国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえるのか
・「やらないと損」年金をもらっている人が忘れてはいけない3つの手続き
・ねんきん定期便「放置」は絶対ダメ!放置した人が辿る悲しい末路
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう