22/09/07
働く60歳代の給与はいくら? 50歳代よりいくら減るのか
最近は、定年後も働く人が多くなっています。しかし、60歳以降は働いても給与が減るので、働くことに前向きになれない人もいるでしょう。今回は60代になっても勤務を続けた場合、どれくらい給与が減少するのかを説明します。老後のライフプランを考える上で参考にしてください。
60代以降は年収が大幅ダウン
国税庁が行った「令和2年民間給与実態統計調査」によると、民間の事業所に1年を通じて勤務した従業員・役員のうち、50代以上の人の年代別平均給与(1年分)は次のようになっています。
●50代以上の年代別平均給与
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」より筆者作成
60代以降は、年齢が上がるにつれ年収が減っていくことがわかります。女性は比較的減少幅は小さいですが、男性は50代後半と60代前半の平均年収の差は150万円近くもあります。全体で見ても、50代後半と60代前半の平均年収には100万円以上の差があります。
日本では年功序列賃金が一般的で、50代になるとかなり給与が上がっています。しかし、給与が上がるのは定年までです。定年後に同じ会社で再雇用される場合、契約社員や嘱託社員の扱いになることが多くなっています。
日本の現状では、正規雇用と非正規雇用で賃金に格差があります。つまり、定年を境に、50代の高水準の給与から非正規雇用の低水準の給与になってしまうのです。
定年後の再雇用で給与は4~6割減少
日経ビジネスが2021年に定年後働いている(もしくは働いた経験がある)人を対象に行った「定年後の就労に関する調査」によると、定年後同じ会社で再雇用されている人の割合は65.3%です。再雇用者の年収は、「定年前の6割程度」が最多の20.2%、「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%で、4~6割減少している人が過半数となっています。それでいて、勤務時間や日数は63.5%、業務量は47.9%の人が「定年前と同水準」とのこと。定年前より増えたと回答した方もいます。
パーソル総合研究所が2021年に実施した「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」でも同様で、定年後再雇用者の年収は平均で44.3%低下。「50%より下がった」と答えた人がもっとも多く、27.6%います。定年前とほぼ同様の職務を行なっている人も55%にのぼります。
●定年後再雇用者の年収・職務の変化
パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」より
以上をまとめると、定年後の再雇用によって、60代の給与は50代までより4割〜6割程度減ることを覚悟する必要があるでしょう。
正規雇用と非正規雇用の給与の違い
さらに、正規雇用と非正規雇用でどれくらい給与が違うのかを見てみましょう。厚生労働省が行った「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、50歳以上の正規雇用者(正社員・正職員)と非正規雇用者(正社員・正職員以外)の1か月あたりの賃金は、次のようになっています。
●50代以上の正規雇用者・非正規雇用者の1か月あたりの賃金平均
厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より筆者作成
50代では正規と非正規で大きな格差があることがわかります。60歳以降は正規雇用でも賃金が減っていますが、非正規に比べると多く、ある程度の月収は確保できそうです。しかし、特に50代まで正規雇用だった人が60歳で非正規雇用になる場合には金額の差が大きくなります。
もっとも、60歳時点で賃金がそれまでの75%未満になる場合には、雇用保険の高年齢雇用継続給付により、65歳になるまで差額の一部の支給が受けられます。また、60歳以降も厚生年金には加入できるので、勤務を続ければ将来の年金を増やせます。毎月の収入が減っても働くメリットは大きいので、生活や家計の見直しをして乗り切ることを考えましょう。
まとめ
60歳を過ぎると、働いてももらえる給料が少なくなってしまいます。しかし、60歳以降も働けば厚生年金を増やせるメリットもあります。収入があれば年金の繰り下げ受給もしやすく、繰り下げによっても年金を増額できます。働くことは生きがいにもなるので、元気な間はできるだけ働くことを考えてみましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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