23/12/29
【最低賃金の推移】日本の最低賃金1000円の水準は海外より本当に少ないのか
2023年10月に日本の最低賃金は初めて1,000円を突破しました。そんな最低賃金ですが、実は1980年代は300円だった時代がありました。過去と比べると豊かになっているように見えますが、海外と比べるとどうでしょうか。今回は日本の最低賃金と海外の最低賃金について紹介します。
日本の最低賃金はどう推移してきた?
最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が定めている賃金の最低額です。事業主など、労働者を雇って給与を支払うもの(使用者)は、最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。いうなれば、労働者が不当な扱いを受けないよう守るための制度です。
1980年からの最低賃金の推移は下図の通り、右肩上がりです。
<日本の最低賃金の推移(全国加重平均額)>
厚生労働省「地域別最低賃金」より筆者作成
1980年では357円だった最低賃金は、2023年10月にはじめて1000円を超えました。1980年と比べれば、約2.8倍になっています。都道府県別に見ると、東京都1113円、神奈川県1112円、大阪府1064円などが高い地域。8都府県で1000円を突破しています。このところ、アルバイトの募集のチラシを見ると時給が1000円を超えているお仕事をよく見かけるのもそのためです。
海外の最低賃金はいくら?
日本の最低賃金が右肩上がりに増加して、喜ばしいことのように見えますが、海外と比べてみるとどうでしょうか。2023年7月に38ヶ国の先進国が加盟する国際機関、OECD (経済協力開発機構)が発表した「2023年雇用見通し」によると、日本の最低賃金の伸び率(2020年12月から2023年5月)は名目で6.5%増、物価変動を加味した実質で0.7%増となっています。この数値、実はOECD加盟国平均の3分の1。つまり、賃金の増加のスピードが他の先進国と比べて遅いのです。
実際、2023年4月時点での各国の最低賃金を見ると、日本の当時の最低賃金の961円より欧州各国や韓国の方が高いことがわかります。
●2023年4月時点での各国の最低賃金(円ベース)
・フランス::1386円
・ドイツ:1285円
・英国:1131円
・韓国:991円
・米国:961円
・日本:961円
日本総研「全国平均1000円超時代の最低賃金の在り方」より
米国は日本と同じ961円ですが、実際には州によって異なり、カリフォルニア州では2000円に達しているそうです。
他国の最低賃金が高い理由に、物価上昇に合わせて最低賃金も見直す制度が整っていることもあげられます。しかし、日本では残念ながら、物価の上昇スピードが賃金上昇スピードを上回っているのが現状です。
物価上昇に負けない3つの対策
厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年と比べて2.3%減少しています。実質賃金の減少は、これで19か月連続です。実質賃金とは、賃金で物をどれだけ購入できるかを表す指標。それが減少しているということは、買うことができるものがどんどん減っているということを表します。
物価上昇に負けないためには、どんな対策を取ればよいのでしょうか。3つ紹介します。
●物価上昇に負けない対策1:ポイントをフル活用する
現金を使わずに買い物をするキャッシュレス決済を使うと、現金で買い物したのでは得られないポイント還元が得られます。ポイントも、今やお金同様に使う時代です。
たとえば、クレジットカードの中にはポイントの還元率が高いものや、対象の店舗で使用すると還元率が高くなるものがあります。自分がよく利用する場所で有利に使えるクレジットカードを使うようにすれば、ポイントも貯めやすくなります。ただ、利用するカード枚数が増えると管理が煩雑ですし、ポイントも分散して使いにくくなってしまいます。利用するカードは1〜2枚に抑え、集中して使うようにしましょう。
●物価上昇に負けない対策2:不用品は売ってしまう
物価が上がると、家で眠っている不用品の値段も上がっている場合があります。フリマアプリなどを活用して使わないものは売ってしまいましょう。そうすることで、部屋を綺麗にしながら収入が得られます。
●物価上昇に負けない対策3:資産運用を始める
日本の大手銀行の普通預金金利は0.001%と、非常に低い状態です。物価の上昇より金利が少ないのですから、預けているお金は目減りしてしまいます。お金の目減りを防ぐには、資産運用が欠かせません。
たとえば、2024年から始まる新NISAのつみたて投資枠対象の投資信託であれば、年数%の利率が見込めるでしょう。複利効果を活用して、未来の物価高に備えるために少額からでも継続して投資をしていきましょう。資産運用は商品の値動きがあり、元本割れが生じる場合もあります。しかし、15年、20年と長期・積立・分散投資をすることで、元本割れのリスクを押さえることができます。
「働く」以外の収入を手に入れよう
日本の最低賃金は1,000円を超えましたが、海外と比べると賃金の上昇率は低いようです。また、賃金が上昇してもそれ以上に物価が上がってしまうと、生活は苦しくなってしまいます。物価上昇に負けないためにも、ポイントを活用する、不用品を売る、資産運用をするといった、「働く」以外の収入を手に入れる方法が何かできないか、考えて実行していきましょう。
【関連記事もチェック】
・「10月の給与が減った」人は絶対に確認すべき給与明細の項目
・年末調整ですべき5つの控除「忘れると16万円損」になることも
・貧乏人は買うがお金持ちは買わない5つのもの
・「64歳で退職するとお得」は本当?失業給付は65歳退職といくら違うのか
・「お金持ち夫婦」と「貧乏夫婦」を分ける、決定的な5つの違い
金子圭都 ファイナンシャルプランナー(CFP︎®︎)
学生の頃、親族の死をきっかけにお金について学び、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金の勉強をする女性コミュニティでイベントの企画・運営に3年間携わり、のべ200人以上のお金の悩みに寄り添う。その後独立し、お金の不安を安心に変えるマネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう