22/08/12
公務員の平均給与、もっとも高いのはどの職業なのか
コロナ禍、インフレ、政情不安など、何かと先行きが心配になるニュースがめだっています。そんななか、働くなら公務員が安心、と考える人も多いのではないでしょうか。公務員は安定しているし、福利厚生も充実、リストラのリスクが小さく、社会的信用もあります。
さらに給与が高ければ言うことなしと思われますが、公務員の給与は職種によって平均額に差があります。今回は、公務員の給与について、見ていきたいと思います。
公務員の給与はどう決まる?
公務員の給与は、地方公務員なら各自治体の給料表、国家公務員なら俸給表をもとに決められます。給料表・棒給表は、「一般行政職」「警察職」「医療職」など、大まかな職種別に用意されています。
●地方公務員の給料表の仕組み
総務省の資料より
横軸は職務の級を表します。基本的に昇進することで上位の級にランクアップしていきます。また、縦軸は号給で、年齢や勤続年数などによって上がっていきます。上の図は地方公務員の給料表ですが、国家公務員の棒級表もほぼ同じ構成になっています。
ただ、公務員の給与は単に給料表・棒級表だけで決まるわけではありません。公務員の給与の金額は、民間企業の水準と同程度になるように設定されています。
公務員の給与が民間企業の水準をあまりオーバーすると市民・国民から批判的に思われるでしょうし、少なすぎても公務員のなり手がいなくなってしまいます。
そのため、国は「ラスパイレス比較」といって、民間企業の給与を調べ、公務員の給与と比較します。ラスパイレス比較は、役職段階、勤務地域、学歴、年齢が同じ場合に、民間企業の給与と公務員の給与を比較する方法です。民間企業の給与と公務員の給与を比較することで、差があまり出ないように調整しているのです。ですから、公務員で給与の高い職業は、民間企業でも給与が高いと考えていいでしょう。
地方公務員で給与の高い職業は?
総務省「令和2年地方公務員給与の実態」によると、令和2年度の地方公務員全体の給与の平均(平均給料月額)は32万7970円です。これを職種別に見ると、高額収入のトップ5は以下のとおりです。
●地方公務員の給与が高い職業
総務省「令和2年地方公務員給与の実態」より筆者作成
公務員で給与の高い職業は、民間企業でも給与が高いと考えていいでしょう。
1位の医師・歯科医師は民間でも高収入の職業なので、公務員でも給与が高いのもうなずけます。民間と同じように、給料月額に加えて、扶養手当や地域手当などもあわせて毎月の給与として受け取っています。扶養手当、地域手当を合計した金額が、平均基本給月額です。
2位の特定任期付職員とは、民間から期間を限定して雇い入れるスペシャリストです。
行政の高度化、多様化、国際化が進展する中、その分野の特別な人材は必要不可欠と言えるでしょう。必然的に高給となるのでしょう。
3位からは研究職、教職と続きます。高校や大学の先生などは、公務員のなかでも比較的高級取りといえそうです。
ちなみに、一般行政職の給料月額は316,993円、手当を加えた平均基本給月額は344,338円です。
給与の金額は、民間企業とそれほど大きな違いはないようです。
しかし、諸手当がきちんとあることや、リストラや減給の可能性が少ないことを考えると、やはり公務員の安定感は大きなメリットでしょう。
地方公務員の給与の高い都道府県は?
地方公務員の給与は、各自治体で決めた給料表がもとになっています。つまり、都道府県で給与の差があるということです。
では、地方公務員の給与が高い都道府県はどこなのでしょうか。給料と扶養手当、地域手当を合計した、平均基本給月額で比べてみましょう。
●一般行政職の都道府県別基本給(円)
総務省「令和2年地方公務員給与の実態」より筆者作成
給料の高い都道府県は、1位が東京、続いて神奈川、兵庫、大阪、三重、となっています。
総務省の資料によれば、民間企業の給与とラスパイレス比較をした結果、各自治体の給与は適正化してきているとのことです。つまり、民間企業の給与水準の高い地域が上位となる傾向がある、ということです。
国家公務員の平均給与が高いのはどの職業?
では、国家公務員の平均給与が高いのはどの職業なのでしょうか。平均給与月額のトップ5は以下のとおりです。
●国家公務員の給与が高い職業
人事院「国家公務員給与の実態」より筆者作成
平均俸給額はいわば基本給です。それに各種手当を加えた金額が平均給与月額です。
1位は医療職です。医療職俸給表(一)が対象になるのは、病院や診療所などの医師・歯科医師ですから、やはり民間同様、地方公務員同様給与水準が高くなると言えます。
2位の専門スタッフ職とは、特定の分野における高度の専門的な知識経験にもとづく調査、研究、情報の分析などを行うことにより、政策の企画および立案等を支援する業務を行う職務です。専門スタッフという軽やかな名称とは裏腹に、かなりのスペシャリスト業務。高給なのも頷けます。
続けて、研究職、専門行政職、税務職です。専門的な仕事ほど、給与は高くなります。
ちなみに、一般的な行政職の平均俸給額は325,827円、手当を加えた平均給与月額は407,153円です。
まとめ
公務員の平均給与を紹介してきました。平均給与が高いのは、地方公務員・国家公務員とも、医療職や研究職と行った、専門的な仕事です。公務員であっても、平均給与が高い職業は、民間と同様の傾向があるといえるでしょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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