21/02/24
「ゆとりある老後」と現実の貯金額のギャップはどのくらいか
老後はのんびりと好きなことをして過ごしたいと考えている人もいるかもしれませんが、現実はそう甘くはないようです。ゆとりのある老後を過ごしたいと思っていても、年金収入だけで実現することは難しいでしょう。ではどれくらい生活費があればいいのか、どれくらい貯蓄があれば実現可能なのかを解説します。
つつましい老後とゆとりある老後
公益社団法人生命保険文化センターが3年に1度実施している「生活保障に関する調査」(2019年12月発行)によると、最低限のつつましい生活をするために1ヵ月に必要と考えられている金額の平均は月額22.1万円でした。それに対して、この金額に「老後のゆとりのための上乗せ額」を加えた「ゆとりある老後生活費」の平均額は36.1万円となっています。つまり、14万円の上乗せが必要となります。
上乗せ額はどのようなことに使いたいと考えているのか見てみましょう。
●ゆとりある老後の上乗せ額の使途(複数回答)
公益社団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」より筆者作成
一番多いのは旅行やレジャーなどです。会社員時代時間があまり取れなかったので、老後はのんびり旅行やレジャーを楽しみたいと考えている人が多いようです。ついで、趣味や教養、日常生活費の充実、身内との付き合いなどが多いようです。
上乗せ額はいくら必要?
旅行へいったり、趣味を楽しんだりするゆとりある老後を過ごすためにはどのくらいの金額を準備すればいいのでしょうか。
老後の必要額を考えるとき、年金収入がどれくらいあるのかを知らなければなりません。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2019年」をみると、高齢夫婦無職世帯の平均年金額は約22万円となっています。最低限つつましい生活ができるというアンケート結果とほぼ同額です。ですから、ゆとりある老後資金36万円と、受け取ることのできる年金額との差額14万円の上乗せ準備が必要になります。
上乗せ額の使途を見てもわかるように、旅行やレジャー、趣味などは健康で元気なうちしかできません。すると、最低でも健康寿命を迎えるまでの分を準備すればいいということになります。内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、健康寿命は男性では72.14歳、女性では74.79歳です。これを踏まえて、65歳から75歳までの10年間分の上乗せを準備するとなると、14万円×12ヵ月×10年=1680万円になります。
老後資金はどうやって準備する?
ゆとりある老後を過ごすためには、自分で準備しなければならないことはわかりましたが、実際60歳以降の人たちは準備ができているのでしょうか。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2019)によると、60歳代でも貯蓄が全くないという人が23.7%もいます。反対に、すでに上乗せ額の1680万円以上保有している人も約30%います。とはいえ、貯蓄額の中央値をみると、650万円と目標額まで約1000万円届いていません。
●60代金融資産保有額
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2019年)より作成
老後資金を準備するなら早めの対応とメリハリが鍵を握る
足りない老後資金は現役で働いているうちに貯めるしかありません。自分は老後にどのように過ごしたいかがわかれば、必要な金額がわかり、あとは逆算して準備をしていくだけです。しかし、実際のお給料の中から貯めていくのは大変なことかもしれません。ですが、お金を貯めることは、老後の資金だけでなく、夢を叶えるためにも、病気で働けなくなったときのためにも大切なことです。優先順位をあげて貯蓄をするようにしましょう。
また、どうしてもやりくりが難しいという場合は、譲れないものとそうでないものにわけて支出のメリハリをつけるようにしましょう。なんでもかんでも節約をすることだけがいいことではありません。自分の人生の満足度も上げながら貯蓄をするには、使うところ、使わないところのメリハリが大事になるのです。
まとめ
老後も自分のすきなことをして過ごしたいと思うのであれば、年金収入だけでは十分ではありません。その分、いまのうちからコツコツと準備をしておきましょう。時間があればあるほど、目標に達成しやすくなるので、まだ早いからと後回しにせず、優先順位をあげて貯蓄をするようにしましょう。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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