20/11/27
50歳から老後資金を貯めるための妥当な積立額
50歳というと、子育てもそろそろ落ち着いてくるころ。これまで子どもの教育資金や住宅ローンの支払いなどを優先してきたので、老後のための貯蓄ができていないという人は多いのではないでしょうか?
老後資金の準備、今からでも大丈夫?と心配になることもあるかと思いますが、将来の余裕資金作りは50歳からでも大丈夫です。しかし、大丈夫とは言っても若い世代に比べると時間が少ないことは確かです。ですから、目標を立てて貯めていくことが大切です。
今回は50歳で貯蓄がない人がお金を貯めていくときの目標の立て方と、積み立て額の決め方を紹介いたします。
まずは貯蓄目標金額を決めましょう
貯蓄の目標金額を達成するために、まずは「いつまで」に「いくら」貯めたいのかを明確にしましょう。
目指すべき貯蓄目標額を見つけるためには将来の希望生活費、収入、退職時の金融資産額を確認します。この確認作業を提案すると「将来のことなんか分からない!」といわれる方がいらっしゃるのですが、今、イメージできる範囲で構いません。予定は変更しても構わないくらいの気持ちで取り組んでみてください。
では仮の設定で、貯蓄目標額を決めてみましょう。
例えばご夫婦で65歳以降の生活費を月36万円希望するとします。老後の主な収入は公的年金と想定し年金収入はお2人で月22万円とします。このような生活を希望する場合、毎月14万円の不足額がでてきますので、この不足額を年金以外の手段でカバーする必要がでてきます。年間では168万円の不足です。何歳までの期間を考えるのかによって金額は大きく変わってくるのですが、今回は85歳までで計算してみましょう。168万円が85歳までの20年分欲しいのですから、168万円×20年=3360万円になります。
次に退職時の金融資産額をイメージしてみます。今は貯蓄ゼロですが、退職金が1500万円もらえるとしましょう。
仮に85歳までの不足分3360万円を今から準備しておきたいと考える場合、3360万円から退職金1500万円を引いた1860万円がこれから目指すべき貯蓄目標額になります。
今回の例の支出36万円は生命保険文化センターが実施する「生活保障に関する調査(2019年度)」のゆとりある老後生活費のデータです。また、年金収入は厚労省が出している専業主婦世帯のモデル年金額です。当然、希望する生活費や年金額はお一人お一人違います。共働き世帯であれば年金受給額は多くなるでしょう。ご自身の生活費や収入で目標金額を決めるための参考に使っていただきたいと思います。
目標金額が決まれば具体的な積み立て額が見えてくる
目標金額が決まったら、次にそれを達成するための貯蓄方法を考え、実践していきます。
ご自身の退職後の生活費、収入、金融資産残高から今から目標とすべき貯蓄金額が2000万円だとしましょう。
50歳から積み立てスタートですので、60歳か65歳が積立期間の目安になってくるでしょう。50歳の人が60歳までの10年間で2000万円をためる場合、現状、低金利の普通預金や定期預金では毎月約16.7万円を積み立てる必要があります。また、積立期間を65歳までの15年間にした場合には毎月の積み立て額は約11.1万円になります。仮に教育費がすでにかからなくなっていたとしても、収入の額によっては、ちょっと厳しい金額かもしれません。
50歳であれば10年以上の運用期間がありますので、これからの経済成長を期待した投資も活用するといいでしょう。例えば国内外株式、国内外債券に分散投資するインデックス型の投資信託であれば、あくまでも過去の実績からですが、10年以上の運用期間があれば年利3%~4%ほどの運用成績は期待できるかと思います。
仮に50歳から15年間、年利3%の運用成績で積立運用ができた場合は、毎月の積み立て額は約8.8万円で済むことになります。これくらいの金額であれば、現実味がでてくるのではないでしょうか。
このような、目標金額達成のための積み立て額の計算は、金融庁の「資産運用シミュレーション」や、銀行や証券会社などの金融機関のウェブサイトで簡単に計算できるツールが提供されていますので、是非活用してください。
実際に数字を入力し、家計状況に合わせて、無理のない積み立て額を探してみてください。
定年後も働いて収入を増やすことも選択肢に入れてみる
目標金額が決まっても、とても10年や15年の期間では達成は難しいということもあるでしょう。そのような場合、退職後も働いて収入を確保するのも有効な手段となります。特に65歳から70歳までの5年間の収入は、10年や15年では届かない目標金額達成をカバーする力になりえます。
また70歳まで働くことで収入を生活資金にあてることができるので、公的年金の「繰り下げ受給」も選択肢に入れておくといいでしょう。70歳まで公的年金の受給期間を遅らせる繰り下げ受給を行うことで、65歳から受けとることができる年金額が42%増額されます(2022年4月以降、75歳まで繰り下げ受給可能になります。この場合、最大で84%増額されます)。
現状、年金受給時期を遅らせる繰り下げ受給を選ぶ方は1%ほどと少ないようですが、長生きするほど得をする受取方法です。これからの長生きリスクに備える老後資金対策としては押さえておくべき方法かと思います。
まとめ
50歳代スタートであれば老後まで10年以上の期間があります。老後資金も、今から準備すればある程度貯められるでしょう。ただ、老後資金準備のラストスパート時期であることは間違いないので、今からすぐに始めていただきたいですね。スムーズに積み立てをスタートさせるためにファイナンシャルプランナーなど専門家のアドバイスを活用してみてもいいでしょう。
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小林 裕子 ひろファイナンシャルプランニング代表 CFP ・1級FP技能士
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料を一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
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