19/10/30
老後資金3000万円あればゆとりある老後が送れる? 3000万円貯めるにはどうすべき
「老後資金2000万円問題」が話題になりました。
老後資金は2000万円必要ということですが、この2000万円を貯めるのは大変だと感じている人も多いと思います。しかし、たとえ2000万円の貯蓄があったとしても、老後の生活はギリギリでとても豊かな生活とは言えないというデータもあります。
生命保険文化センターのアンケート調査によると、夫婦2人で老後生活をおくるための生活費として最低日常生活費は、平均22.1万円が必要ということです。ただし、このデータは持ち家が前提ですので、老後もローン返済が続いたり、賃貸であったりするとより支出がかかります。
では、ゆとりのある老後生活をするためには、いくら必要か? というと、月額平均で36.1万円は必要だというのです。
この月額36.1万円というのは、最低の生活費22.1万円に、旅行やレジャー費、趣味や教養のための費用として14万円が上乗せされた金額です。
つまり、月額36.1万円の生活ができれば、豊かな老後生活になると感じている人が多いということです。
今回は、本当に3000万円くらいの資金が必要になのか。そうであればどう用意すべきか。一緒に考えてみましょう。
最低源の老後生活の場合には、困らないで生活ができる
では、高齢者は収入である公的年金を、どのくらい受け取っているのでしょうか?
厚生労働省のモデル世帯の年金受給額は、妻の基礎年金が6万4941円で、夫の厚生年金が9万1395円、合計で22万1277円です。
これを先ほどの生命保険文化センターの調査に当てはめてみましょう。
老後生活をおくるための最低日常費というのは、22.1万円ですので、公的年金だけでも、最低源の生活はできると言うことになります。ただし、このデータは持ち家が前提ですので、老後もローン返済が続いたり、賃貸であったりするとより支出がかかる点に注意が必要です。
すると、あとはもしものときの費用を準備しておけば、生活にはそれほど困らないということです。
豊かな老後生活のためには3000万円〜4000万円の資金が本当に必要か
次に、豊かな老後生活をおくるための資金について見てみましょう。
豊かな老後生活のためには、月額36.1万円必要になります。モデル年金は、22.1万円ですから毎月14万円の赤字になります。
毎月14万円の赤字を埋めるためには、老後資金からの年間168万円の取り崩しが必要になります。
65歳から何年生きることができるかわかりませんが、85歳まで、20年生きるとしたら3360万円が必要になります(168万円×20年=3360万円)。90歳までの25年間ですと約4000万円の資金が必要になってきます。
ということは、3000万円から4000万円あれば、豊かな老後生活ができるということになります。
2000万円の老後資金を準備するのも大変だなと思っているところに、3000万円〜4000万円が必要と言われても、かなり難しいと言うことになります。
3000万円の老後資金を貯めるにはどうする?
では、まず目標として65歳までに、3000万円を貯めるにはどうすればいいのかを考えましょう。35歳の人は、65歳までに30年間あります。1年間100万円(月額約8.3万円)の貯蓄ができれば、30年で3000万円の資金が準備できます。
たとえば、月額約6万円の積立を4%で運用できれば、65歳までに3000万円は貯まります。まずは、税制優遇のあるiDeCoとつみたてNISAなどを使って、積み立てていくことを考えます。
iDeCoの拠出限度額は、年額27.6万円(月額2.3万円)です(企業型DCなどがない場合)。つみたてNISAの限度額は年額40万円(月額約3.3万円)です。年額合計67.6万円(月額約5.6万円)を積み立てることができます。
ご夫婦の場合には、2人分のiDeCoとつみたてNISAの限度枠が使えるので、協力をして貯めてください(2人分の枠を使うと年間135.2万円を積み立てることが可能です)。
1人で積み立てるとどうなるのかシミュレーションをしてみましょう。
たとえば、iDeCoで月額2.3万円(年間27.6万円)を35歳から60歳まで25年間、4%の運用で積み立てると約1182万円になります。
つみたてNISAで月額3.3万円(年間約40万円)を35歳から55歳まで20年間、4%の運用で積み立てると約1210万円になります。
iDeCoやつみたてNISAが途中で終わってしまうので、その後は証券会社などの投資信託を使って運用したとします。
まず、つみたてNISAは55歳で終わり、その後は特定口座へ移管されます。その後も4%運用を続けると、1210万円が1656万円(税引後)になります。
また、55歳から65歳まで特定口座などの一般の証券口座で月額3.3万円を4%の投資信託で運用すると、約466万円(税引後)になります。
iDeCo約1182万円、つみたてNISA約1656万円、55歳からの投資信託分の466万円で、3304万円になります。
これにiDeCoの所得控除の効果を入れたら、さらにプラスすることができます。
繰下げ受給をすると1400万円で大丈夫
実際問題、月額約6万円を積み立てるのは、なかなかむずかしいですね。しかし、1400万円くらいの老後資金で、豊かに暮らせる方法もあります。
それは、公的年金の受給額を増やす方法です。この方法を使うと月額の貯蓄額を半分の3万円で用意できるのです。
年金の受給額を増やす方法には、繰下げ受給があります。70歳まで繰り下げれば最大42%の増額になり、その金額を一生涯受け取ることができます。
例に出した、夫婦の年金月額22.1万円ですが、70歳まで繰下げ受給をすると、42%の増額(9282円増)になり、月額の受給額が約31.4万円になります。
豊かな老後生活である36.1万円には、あと4.7万円足りません。年間ですと約56.4万円が不足です。20年間で1128万円、25年間ですと1410万円が不足するということになります。
35歳から65歳までの30年間で約1400万円を用意するためには、月額4万円の貯蓄をすれば1440万円になります。
先ほどと同じように毎月3.5万円を2%の運用で積み立てると、65歳で1400万円を貯めることができます。このときもまずiDeCoを限度額いっぱいに使って、足りない分をつみたてNISAを利用して貯めてください。
繰下げ受給のためには65歳以降も働く必要があるかも知れませんが、35歳からiDeCoやつみたてNISAを続けているとなんとか豊かな老後に近づけることができそうです。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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