17/05/09
今の若者は、老後に年金を受け取れないの?
日本は急速に少子高齢化が進んでいますし、今後も進んで行くでしょう。そうなると、現役世代の人口が減り、高齢者を支えられなくなると考える人が増えています。年金についても、現役世代の支払った年金保険料で高齢者の年金を支払う仕組み(賦課方式と呼びます)ですから、少子高齢化が進むと破綻すると考える人が大勢います。
若者の間では(サラリーマンは年金保険料を天引きされてしまうから払わざるを得ないけれど)、自営業者だから年金保険料を払わない、という人も多いようです。今の若者は、老後に年金を受け取れないのでしょうか?
若者が将来年金を受け取れないという事態はない
年金の専門家たちは、若者が将来年金を受け取れないという事態は考えていません。筆者も、大丈夫だと考えています。その理由は以下のとおりです。
年金は、今の高齢者と将来の高齢者が受け取れる年金額が同じになるのが原則です。インフレになれば、その分だけ年金額が増えるので、「年金だけで暮らす人の生活水準が同じになる」と考えて良いでしょう。
しかし、それには「マクロ経済スライド」という大きな例外があります。
少子高齢化の進み具合や、経済成長率などを見ながら、「このままでは将来の年金が破綻する」と思われる時には、少しずつ毎年の給付水準を下げて行く、というのです。つまり、将来の少子高齢化が今考えられている以上に進んだり、経済成長率が今考えられているよりも低かったりしたら、受け取れる年金が減って行く、というわけです。
筆者はそれほど心配する事は無いと思います。厚生労働省が様々なケースについて年金額を予測していますが、最も慎重なケースでも「年金だけで暮らしている人の生活水準は、今の高齢者に比べて40年後は2割低い」といった程度だからです。
おそらく実際には、40年後には、皆が70歳まで働いて70歳から年金を受け取る時代が来るでしょう(現在は原則65歳から受け取り)。そうなれば、70歳以降の生活水準は今の高齢者と大差ないものとなっているはずです。
最後は政府が年金制度だけは守る
仮に、厚生労働省や筆者の予想が外れて年金が破綻しそうになったら、政府が助けるはずです。政府としては、他の全ての歳出を削っても、年金だけは守るはずです。
一つには、「選挙に来る投票者の多くは年金受給者だから年金を守らないと選挙に通らないから(笑)」ですが、今ひとつには、年金を払わないと、生活保護を申請する高齢者が激増して、かえって財政の負担が増してしまうからです。したがって、道路や公園が荒れ果てる事はあっても、年金が払われない事は無いでしょう。
もっとも、筆者と異なる見通しを持つ読者もいるでしょう。年金が受け取れないと考えている人は、老後のために必死に貯金しましょう。
そして、資産はすべてドルで持ちましょう。仮に日本政府が本当に破産しそうになったら、だれも「日本銀行券」など持ちたくないので、円をドルに替える人が激増して、ドルが暴騰するはずだからです。
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塚崎 公義 経済評論家
1981年東京大学法学部卒後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関係の仕事に従事した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先とは関係なく個人として行っているため、肩書きは経済評論家と記す。
「退職金貧乏 定年後の『お金』の話」「老後破産しないためのお金の教科書」「増補改訂よくわかる日本経済入門」「世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書」「日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由」など著書多数。
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