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23/12/03

相続・税金・年金

年金「月15万円」の人が70歳まで繰り下げ受給すると手取りはどう変わる?

年金「月15万円」の人が70歳まで繰り下げ受給すると手取りはどう変わる?

年金は「繰り下げ受給」をすると最大84%も金額を増やすことができます。しかし、年金を繰り下げ受給して金額が増えると、毎月天引きされる税金や社会保険料も増えます。
今回は年金「月15万円」の人が70歳まで年金を繰り下げ受給した場合に天引きされる税金・社会保険料の計算を紹介します。繰り下げ受給をせずに月15万円もらった場合と手取りの金額はどう変わるでしょうか。

年金を70歳まで繰り下げると42%増える

国民年金・厚生年金は原則65歳からもらうことができます。しかし、希望すれば60~75歳の間でもらい始めることができます。60~64歳からもらい始めることを繰り上げ受給、66~75歳からもらい始めることを繰り下げ受給といいます。繰り上げ受給・繰り下げ受給は1か月単位で選ぶことができます。

繰り上げ受給では、1カ月早めるごとに年金の受給率が0.4%ずつ減ります。60歳まで早めると、年金額は24%減額(受給率76%)となります。対する繰り下げ受給では、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ受給率が増えます。75歳まで遅らせると、年金額は84%増額(受給率184%)となります。

●年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給の受給率

(株)Money&You作成

仮に、65歳から年金を月15万円もらえる人が70歳まで繰り下げ受給すると、年金額の額面は42%増額(受給率142%)となります。したがって、毎月の年金額は15万円×142%=21.3万円になります。

しかし、年金からは、税金・社会保険料が引かれます。税金・社会保険料は、年金額が多いほど増えるため、繰り下げ受給をしなかった場合よりも金額が増えてしまいます。

年金からはどんな税金・社会保険料が天引きされる?

年金から天引きされる税金・社会保険料には、
・国民健康保険料(75歳未満)または後期高齢者医療保険料(75歳以上)
・介護保険料
・所得税
・住民税
があります。

●年金の「額面」と「手取り」のイメージ

(株)Money&You作成

年金の額面から、これらの税金・社会保険料が天引きされた金額が、2か月に1度、2か月分まとめて銀行口座に振り込まれます。

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」(2022年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の毎月の平均支出26万8508円のうち、3万1812円が税金や社会保険料といった「非消費支出」になっています。

●65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」(2022年)より

支出に占める税金と社会保険料の割合は、約12%に達します。

では、年金から天引きされるお金と、年金を70歳まで繰り下げて月21.3万円もらえる人が天引きされる税金・社会保険料の金額を確認してみましょう。

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年金から天引きされるお金1:国民健康保険料

国民健康保険は75歳未満の、退職者や自営業者などが加入する公的な健康保険で、お住まいの地域の自治体が保険者として運営しています。保険料は市区町村で異なります。国民健康保険では、世帯主だけではなく、妻や子どもも被保険者になるので、それぞれ計算したものを世帯単位で合算し、世帯主が納付します。

世帯主の公的年金の受給額が年額18万円以上で、国民健康保険の加入者全員が65歳以上75歳未満の世帯では、原則世帯主に支給される公的年金から国民健康保険料が天引きされます。ただし、介護保険料と国民健康保険料の合算額が、天引きの対象となる年金受給額の2分の1を超えない場合に限ります。

●年金が月21.3万円の場合、国民健康保険料はいくら引かれる?

国民健康保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。

【条件】
・東京都文京区在住、70歳〜75歳未満、扶養親族無し
・年金は年間255.6万円、公的年金等の雑所得は145.6万円
・基礎控除額は43万円
・算定基礎額は145.6万円−43万円=102.6万円

年金収入は雑所得です。公的年金等をもらった場合、収入金額から公的年金等控除を差し引いて雑所得を計算します。65歳以上で、年金等の収入の合計が255.6万円の場合、公的年金等控除は110万円です(なお、年金額が110万円超330万円未満の場合に110万円になります)。つまり、年金255.6万円−公的年金等控除110万円=公的年金等の雑所得145.6万円となります。

国民年金保険料を算出する際には、雑所得145.6万円から基礎控除額43万円を引いた102.6万円を算定基礎額として使用します。

国民健康保険料には、基礎分保険料と支援金分保険料があります。それぞれ、所得に応じて負担する「所得割」と、加入者全員が一律で負担する「均等割」があります。なお、所得割にかける料率(所得割率)は、お住まいの自治体により異なります。

上の条件で示した東京都文京区の例で計算すると、
・基礎分保険料(所得割):102.6万円×7.17%=7万3564円
・基礎分保険料(均等割):4万5000円×被保険者数1人=4万5000円
・支援金分保険料(所得割):102.6万円×2.42%=2万4829円
・支援金分保険料(均等割):1万5100円×被保険者数1人=1万5100円
以上合計:15万8493円

国民健康保険料は15万8493円となります。

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年金から天引きされるお金2:後期高齢者医療保険料

後期高齢者医療制度は、75歳以上のすべての後期高齢者が対象の公的医療制度です。後期高齢者医療制度の保険料は、都道府県ごとに条例によって定められています。保険料の計算は個人単位でされます。

後期高齢者医療制度の保険料は、年間の年金支給額が18万円以上の場合原則として年金から天引きされます。ただし、年度の途中で75歳になった場合には、条件が整い次第、年金天引きになります。誕生日に応じて年2回、天引きの開始月を設けている自治体もあります。

●年金が月21.3万円の場合、後期高齢者医療保険料はいくら引かれる?

後期高齢者医療保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。

【条件】
・東京都文京区在住、75歳以上、扶養親族無し
・年金は年間255.6万円、公的年金等の雑所得は145.6万円
・基礎控除額は43万円
・算定基礎額は145.6万円−43万円=102.6万円

今回は「70歳まで繰り下げた場合」の税金・社会保険料を計算しているので、70歳時点では後期高齢者医療保険料はかかりません。ここでは、同じ年金額で75歳以上になった場合と仮定して後期高齢者医療保険料を算出してみました。

後期高齢者医療保険料にも、所得割と均等割があります。上の条件で計算すると、
・所得割:102.6万円×9.49%=9万7367円
・均等割:4万6400円×被保険者数1人=4万6400円
以上合計:14万3767円

国民健康保険料とは数式の数字が多少異なります。とはいえそれほど大きな違いではありません。試算の結果、後期高齢者医療保険料は14万3767円と、国民健康保険料より少し安くなります。

年金から天引きされるお金3:介護保険料

公的な介護保険は、原則40歳以上のすべての人が被保険者となり、市区町村が保険者となって運営します。会社員などの場合、介護保険料は労使折半ですが、退職後は全額自己負担になります。

●年金が月21.3万円の場合、介護保険料はいくら引かれる?

介護保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。

【条件】
・東京都文京区在住、70歳以上、扶養親族無し
・年金は年間255.6万円、公的年金等の雑所得は145.6万円

介護保険料を算出する際には、雑所得145.6万円を使用します。介護保険料は本人・世帯の住民税の課税状況や所得金額に応じて段階的に変わります。東京都文京区の場合、介護保険料は15段階に分けられています(自治体により、段階の区分は異なります)。

【介護保険料はいくら?】

文京区のウェブサイトより(株)Money&You作成

表より、介護保険料は第7段階、9万300円とわかります。

年金から天引きされるお金4:所得税

年金から天引きされる所得税は、65歳未満と65歳以上で取り扱いが異なります。公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合、
・65歳未満:108万円(公的年金控除60万円+基礎控除48万円)を超える人
・65歳以上:158万円(公的年金控除110万円+基礎控除48万円)を超える人
の場合、所得税や復興特別所得税が年金から天引きされます。

●年金が月21.3万円の場合、所得税はいくら引かれる?

所得税を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。

【条件】
・東京都文京区在住、70歳〜75歳未満、扶養親族無し
・年金は年間255.6万円、公的年金等の雑所得は145.6万円
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・社会保険料=国民健康保険料+介護保険料=24万8793円

計算の条件に、新たに「所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ」を追加しています。所得税の基礎控除は48万円、社会保険料控除はここまで計算してきた国民健康保険料と介護保険料の合計額、24万8793円です。

上の条件で所得税を計算すると、
145.6万円-48万円−24万8793円=72万7000円(課税所得※千円未満切り捨て)
72万7000円×5%(所得税率※課税所得195万円までは5%)=3万6350円

所得税の金額は3万6350円となります。

年金から天引きされるお金5:住民税

4月1日時点で65歳以上、年額18万円以上の老齢年金が支給されていて、前年中の公的年金等所得に住民税が課税されている場合、年金から住民税が天引きされます。控除対象配偶者や扶養親族がいない場合、公的年金の収入が155万円以下ならば住民税はかかりません。控除対象配偶者や扶養親族がいる場合は、155万円を超えても非課税になることもあります。住民税については、国民健康保険料のように年金をもらっている人の意思で、公的年金からの天引きを中止することはできません。

●年金が月21.3万円の場合、住民税はいくら引かれる?

住民税を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。

【条件】
・東京都文京区在住、70歳〜75歳未満、扶養親族無し
・年金は年間255.6万円、公的年金等の雑所得は145.6万円
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・社会保険料=国民健康保険料+介護保険料=24万8793円

住民税の基礎控除は43万円と、所得税より5万円少なくなります。住民税は課税所得の10%(所得割)+5000円(均等割)となります。

上の条件で住民税を計算すると、
145.6万円-43万円−24万8793円=77万7000円(課税所得※千円未満切り捨て)
77万7000円×10%(所得割)+5000円(均等割)=8万2700円

住民税の金額は8万2700円となります。

以上から、年金の手取りを計算してみましょう。

●70歳〜75歳未満の場合

手取り=額面−所得税・住民税・社会保険料
   =255.6万円−36万7843円
   =218万8157円(年金の手取り年額)
となります。月換算すると年金の手取り金額は18万2346円、年金額面に占める手取りの割合はおよそ85.6%です。年金の額面からおおよそ14%引かれてしまいます。

●75歳以上の場合

手取り=額面−所得税・住民税・社会保険料
   =255.6万円−35万3117円
   =220万2883円(年金の手取り年額)
となります。月換算すると年金の手取り金額は18万3573円、年金額面に占める手取りの割合はおよそ86.1%です。後期高齢者医療制度に加入した分、社会保険料の負担が減っています。

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【結論】税金や社会保険料が約14%引かれる

今回の条件で、年金を70歳まで繰り下げて月21.3万円もらえる場合の手取りの年金額を計算すると
・70〜75歳未満:年218万8157円(月18万2346円)
・75歳以上:年220万2883円(月18万3573円)
となることがわかりました。

今回のケースでは、年金の額面から税金や社会保険料が約14%引かれている計算です。年金の額面がもっと増えてくると20%近くになることもあります。

年金月15万円の場合と、今回の年金月21.3万円の場合で、毎月の年金額面・税金・社会保険料・手取りの金額を比較したのが次の表です。

●年金額の比較表

(株)Money&You作成

繰り下げ受給によって額面の年金は月6.3万円増えましたが、手取りになると増加額は月4.8万円ほどになってしまうことがわかりました。繰り下げ受給をすることで確かに手取りは増えるのですが、額面ほどには増えません。老後の年金額は、手取りで考えるようにしましょう。

なお、税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わります。ご自身の正確な情報は年金事務所・年金相談センターなどでご確認ください。

今回の内容は動画でも紹介しています。

動画では、年金が月20万円の場合で計算しています。ぜひご覧ください。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍90冊、累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki

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