21/03/06
30年以上老後資金が底をつかない、資産の引き出し4%ルールとは
お金を使っても残高が無くならない口座があれば、どんなにいいことでしょうか。
そんな口座に近い口座は、資産の引き出しルールを守ることで作ることができます。最近注目されているFIRE(経済的自立と早期リタイア)では「4%ルール」を守ることを説いています。
4%ルールとは、どのようなルールなのでしょうか。
4%ルールはトリニティ大学の論文
経済的自立して早期リタイアし、労働に縛られることなく生きるFIRE。このFIREを実現するためのルールとして、「4%ルール」が注目されています。
4%ルールは、アメリカのトリニティ大学でなされた研究をもとに1998年に発表された、「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable(=リタイア後の貯蓄:持続可能な引き出し率の選択)」という論文を根拠にして導かれたルールです。
研究では、一定額の貯蓄を持っている退職者が資産運用をしつつ、毎年一定割合のお金を引き出していった場合、資金が底を付かないでいられる割合を調べています。
●資産が底を付かない可能性は?
「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」より抜粋
表は1926年から1995年の期間で、株式(Stocks)と債券(Bonds)に投資しながら資産を取り崩していった場合、資産が底を付かない割合を表しています。表の縦軸は運用方法と期間、横軸は資産の引き出し率を示しています(インフレ調整済み)。
表のとおり、資産の3%を毎年引き出した場合は、おおむね30年後もお金が底を付きません。しかし、4%の場合は、資産運用の方法で結果に差が出ます。株式100%で運用している場合や、株式と債券を50%ずつで運用している場合は、95%の確率でお金が底をつかない計算になっています。また、株式75%・債券25%の場合は98%の確率でお金が底をつかない、としているのです。
一方、資産の5%以上を引き出すと、30年後に資産が残っている確率が減ってしまいます。ですから、FIREでは資産運用しつつ4%ずつ資産を引き出すルールを守るようにしているのです。
口座残高が無くなるのは困りますが、使うお金は多いほうが楽しみも増えます。そのちょうどいいラインが、4%だというわけです。
リタイアできる最大の要因は、貯蓄がいくらできるか
では、FIREをするためには、元本はいくら貯めたらいいのでしょうか。
これは、4%から逆算できます。資産の4%にあたる金額が1年間に使ってよいお金です。つまり、1年間に使うお金の25倍が資産として必要になる金額です。
1年で500万円使いたいなら、リタイア時に1億2500万円の資産が必要です。
500万円×25=1億2500万円
1年300万円使いたいなら、リタイア時に7500万円です。
300万円×25=7500万円
もし、1年200万円でよいなら、リタイア時に5000万円あればよい計算です。
200万円×25=5000万円
年間の支出が少なければ、資産が小さくても十分生活していくことができます。
そこで始めたいのが、生活費を減らして貯蓄にまわすお金を増やすこと。生活費が少なくなれば年間支出が抑えられると同時に、貯蓄の目標金額を下げられます。
こうすることで、リタイアが可能になるまでの期間を短くすることができます。
4%ルールの問題点は?
このような4%ルールですが、問題点も2つあります。
ひとつは、資産運用している市場が下落する可能性があることです。
株式投資をしていると、資産価値が下がっていく局面ですので、もっと下がっては大変と思って、売ってしまいたくなるかもしれません。
しかし、そんな時に慌てて売るのは禁物です。市場は下落しても時期がくれば回復します。個別銘柄は企業の倒産などによって価値がなくなる場合もありますが、市場そのものはなくなりませんので、インデックスファンドなどで運用することでリスクを避けるといいでしょう。
また、下落の局面で資産を引き出すのは禁物ですから、市場が回復するまでの生活費のために2~3年分程度の生活費は貯蓄で準備しておくと安心です。
あるいは、生活費を抑える方法として旅行に出るという手段もあります。
レジャーとしての旅行に慣れ親しんでいると、旅行=お金がたくさんかかる、というイメージがありますが、宿泊費や食費を抑え、お土産を買わなければ安くすませられます。
東南アジアなど生活コストが安い地域を選んで、旅行を楽しみながら生活費を節約するのも楽しそうです。
ただし、保険には必ず加入しましょう。
そして、リタイア後でも無理のない範囲で働くことも選択肢に入れておきたいですね。
収入源が複数あると、気持ちに余裕ができます。
たとえ月10万円の収入でも、年間120万円です。収入分は、引き出す資産の4%から差し引けますので、さらにリタイアまでの期間が短縮できます。
もうひとつ、考えておきたいのが医療費や介護費の備えです。FIREでは、医療費や介護費への備えが述べられていません。
老後の生活を考えると、お金だけではなく健康面も心配になります。治療や介護には公的な社会保障もありますが、それを補う費用があると安心です。
社会保障は申請してからお金を受け取るまでに時間がかかったり、対象ではない医療や介護があったりすることも珍しくありません。いざと言う時すぐに使えるお金も準備しておく必要があるでしょう。
まとめ
リタイア後、4%ルールで資産を引き出せば30年以上資金が底をつくことはないと考えられます。残念ながら、「いくらお金を使っても絶対に残高が無くならない口座」ではありませんが、支出をコントロールすることで、老後資金の安心が増します。
まずは資産の元本を貯めるべく、貯蓄額のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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