23/11/01
健康保険、有給休暇、各種手当…定年後どうなる?定年前とどう変わる?
今の時代、60歳で定年になっても、まだ引退するには早すぎるでしょう。いろいろな選択肢がありますが、再雇用でそのまま会社に残るという方も多いのではないでしょうか?
ところで、再雇用により引き続き同じ会社で働く場合でも、それまでと労働条件が変わることがあります。健康保険や有給休暇、各種手当がどうなるか、基本的な内容を知っておきましょう。
定年後の再雇用制度とは?
多くの会社では、定年年齢は60歳です。しかし、高年齢者雇用安定法により、現在は本人が希望すれば65歳まで働ける仕組みが設けられています。その1つが再雇用制度です。再雇用制度とは、定年により一旦退職した従業員を会社が再度雇用する制度です。
再雇用制度を利用する場合、会社と従業員で新たな労働契約を締結します。そのため、労働条件についても、それまでと変わることも多くなります。以下、定年後再雇用で労働条件はどう変わるかについて説明します。
再雇用で働いたら給与はどうなる?
定年後に同じ会社で再雇用された場合、一般に、再雇用後の給与は定年前に比べて下がります。再雇用後の雇用形態は、契約社員や嘱託社員などの非正規雇用になることが多いからです。
●再雇用後の給与はかなり減る
50代後半と60代前半の平均的な給与を比較してみましょう。国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、50代までは年齢が高くなるほど平均給与も高くなっていますが、60代になると平均給与が下がっています。
【年齢階層別の平均給与】
国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」より
特に、男性の場合には50代後半の平均給与は702万円ですが、60代前半では569万円と年間130万円以上の差があります。1ヶ月あたり10万円以上給与が減ると考えると、かなり大きいと感じるはずです。
●再雇用後の収入減を補う給付金がある
定年後に給与が減るダメージを少なくするために、高年齢雇用継続給付という制度が設けられています。これは、給与が定年前の75%未満に低下した場合、雇用保険から差額の一部が支給されるというものです。高年齢雇用継続給付は会社を通じて申請する必要があるため、手続きについては会社に相談しましょう。
再雇用後の社会保険や福利厚生は?
続いて、再雇用後の社会保険や有給休暇、各種手当についてみてみましょう。
●健康保険はどうなる?
再雇用後も健康保険加入の条件を満たしていれば、引き続き会社の健康保険に加入できます。扶養している家族がいる場合には、家族も扶養に入れます。
再雇用後に短時間勤務等で健康保険の加入条件をみたさない場合でも、任意継続制度により2年間は会社の健康保険に継続加入できます。会社の健康保険に入らない場合には、国民健康保険に加入する必要があります。
●厚生年金に加入する必要はある?
会社で働く場合、70歳までは厚生年金に加入しなければなりません。60歳で定年後に再雇用された場合、引き続き第2号被保険者として厚生年金に加入することになります。この場合、60歳未満の配偶者を扶養に入れて第3号被保険者にすることも可能です。
なお、65歳以降は第2号被保険者ではなくなるため、配偶者を扶養に入れることはできません。配偶者が60歳未満の場合には、配偶者は国民年金に加入して国民年金保険料を納める必要があります。
●有給休暇は引き継げる?
労働基準法により、有給休暇は勤続年数に応じた日数が付与されることになっています。再雇用の場合、新たに労働契約を締結しているため、勤続年数がリセットされるように思うかもしれません。
しかし、再雇用では実質的に労働関係が継続しているとみなされ、定年前からの勤続年数を通算して有給休暇が付与されます。既に付与された有給休暇の未消化分も繰り越しが可能です。
●各種手当はもらえる?
再雇用後、正社員に支給されている手当を合理的な理由なく支給しないのは違法とされています。住宅手当、通勤手当、住宅手当などが支給されている場合には、これらの手当は引き続き支給を受けられます。
保険や手当は変わらないが給料は変わる
再雇用制度により定年後も同じ会社に残れば、新たに就職先を探す必要もありません。慣れた環境でキャリアを活かしながら長く働けるのはメリットです。
ただし、定年後再雇用では給料が減ることが多くあります。健康保険や厚生年金には引き続き加入でき、有給休暇や各種手当ももらえますが、家計の見直しは必要です。老後のマネープランに影響しないよう、お金の使い方に注意しておきましょう。
【関連記事もチェック】
・「金持ち老後」と「貧乏老後」を分ける決定的な5つの違い
・「住民税非課税世帯」は年金生活者に多い?非課税世帯になった方がよいのか
・年金繰り上げは9人に1人…年8.4%増の繰り下げは「50人に1人」である5つの理由
・年金が78万円上乗せになる「長期加入者の特例」受けられる条件
・年金収入のみの場合、所得税がかからないのはいくらまで?
森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう