24/03/25
年金生活者支援給付金「誰が」「いくら」もらえる?
物価高が続き、生活が苦しくなってきたと感じる方も多いでしょう。特に年金生活になると、収入が限られてしまいます。そんな年金生活者の方が条件を満たすと、年金とは別の上乗せの給付金「年金生活者支援給付金」がもらえるのはご存知でしょうか。手続きをしないともらえないお金なので、制度を知らないままだと大損になります。
今回は、年金生活者支援金の種類と対象者、手続き等を確認していきましょう。
年金生活者支援給付金はどんな給付金か
年金生活者支援給付金は、消費税率10%の引き上げに合わせて、公的年金や所得が一定基準以下の年金受給者の生活を支援するために、2019(令和元年)年10月から支給されているものです。基礎年金に上乗せして支給される給付金で、手続きをすると年金振込口座に年金とは別の記載がされて2か月に1度振り込まれます。
年金生活者支援給付金には大きく分けて
・老齢年金生活者支援給付金
・障害年金生活者支援給付金
・遺族年金生活者支援給付金
の3つがあります。そして、それぞれの年金において支給要件が異なります。
●老齢年金生活者支援給付金の支給要件
以下の要件をすべて満たしている方が対象になります。
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
(3)前年の公的年金等の収入金額*とその他の所得との合計額が87万8900円以下である。
*公的年金等の収入額には、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
老齢年金生活者支援給付金は2種類あり、収入額等に応じて支給額が変わります。
前年の所得額等が77万8900円以下となった場合には「老齢年金生活者支援金」が、前年収入額等が77万8900円超、87万8900円以下となった場合には「補足的老齢年金生活者支援金」に変更になります。
少し収入が多いために老齢年金生活者支援給付金の対象にならない場合には、生活者支援給付金を受け取っている方の所得が多くなってしまいます。その所得の逆転をなくすため、補足的老齢年金生活者支援給付金があります。
●障害年金生活者支援金の支給要件
以下の要件をすべて満たしている方が対象になります。
(1) 障害基礎年金の受給者である。
(2) 前年の所得が「472万1000円+扶養親族の数×38万円」以下である。
前年の所得には障害年金等の非課税の収入は所得には含まれません。
また扶養親族の増額部分は、「38万円」とありますが、同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の親族の場合は63万円となります。
●遺族年金生活者支援金の支給要件
以下の要件をすべて満たしている方が対象になります。
(1) 遺族基礎年金を受けている。
(2) 前年の所得額が「472万1000円+扶養親族の数×38万円」以下である。
前年の所得には、遺族年金等の非課税収入は含まれません。また障害年金生活者支援給付金と同様に、前年の所得基準には扶養親族数や区分に応じて増額があります。
2024年度の年金生活者支援給付金の額は増える?
2024年度の年金額は改定され、前年度から2.7%引き上げられることが決まりました。これに合わせて、年金生活者支援給付金の金額も増えます。
●老齢年金生活者支援給付金の給付額
2024年度は月額5310円(前年度+170円)を基準に給付されます。実際の給付額は、保険料納付済み期間などに応じて算出されます。
●障害年金生活者支援給付金の給付額
障害等級が2級:月額5310円(+170円)
障害等級が1級:月額6638円(+213円)
●遺族年金生活者支援給付金
月額5310円(+170円)
ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5310円を子の数で割った金額がそれぞれに支払われます。
<年金生活者支援給付金の金額>
筆者作成
年金額等が増えるのはうれしいことですが、残念なことに2023年の平均物価変動率(総合指数)は3.2%アップ(天候に左右される生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合指数」は3.1%)なので、年金額の引き上げ分よりも物価変動上昇率の方が高いという結果になりました。
年金生活者支援給付金を受け取るための手続き
年金生活者支援給付金が受け取れると見込まれる該当者には、年金生活者支援給付金請求書が届きます。世帯構成や所得額が変わるなどして、新たに年金生活者支援給付金の対象になる人には、毎年9月ごろから請求書が送られてきます。
しかし、請求書が届いていても申請ができていないこともあるので、家族などが確認して、年金生活者支援給付金の申請手続きが済んでいるか気を配っておきましょう。本人が自筆で書くことが難しい場合には、代理人が代筆で記入して請求手続きができます。
年金生活者支援給付金の請求の手続きは、一度行うと翌年以降の手続きは原則不要になります。しかし、いったん支給要件を満たさなくなり、年金生活者支援給付金を受け取れなくなった後に再度支給要件を満たした場合には、改めて請求の手続きが必要になります。年金生活者支援給付金の支給判定は、1年ごとに前年の所得(10月分から翌年9月分まで)に基づき行われます。
また、これから老齢・障害・遺族基礎年金の受給を始める方は、年金の裁定手続きを行う際に、年金生活者支援給付金の認定請求書を提出しておきましょう。請求をすると、原則、手続きをした翌月分から支給対象になります。
ただし、新たに基礎年金の受給権を得た方は、受給権を得た日から3か月以内に年金生活者支援給付金の認定手続きをすると、年金受給権を得た日に手続きを行ったものとみなして、遡って支給されます。しかし、受給権を得た日から3か月を過ぎると手続きをした翌月分からの支給となるので、早めに手続きをしておくことをおすすめします。
年6万円以上の給付金を忘れずに受け取ろう
年金生活者支援給付金は月額5000円程度ですが、年間で考えれば6万円以上の額の給付ですから、とても大きいですよね。物価高の折、こうした給付金は請求を忘れずに利用したいものです。
年金生活者支援給付金の請求で困ったことがあれば、給付金専用ダイヤルもあります。耳や発声が不自由な方は、ファクシミリでの問い合わせもできます。難しそうだからとわからないままにせず、必ず確認しましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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