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23/02/01

相続・税金・年金

「やらないと数万円の損」年末調整していても確定申告で取り戻せるお金

「やらないと数万円の損」年末調整していても確定申告で取り戻せるお金

毎年2月16日から3月15日までは確定申告の期間。2022年分の確定申告は、2023年2月16日(木)から3月15日(水)までに行うこととなっています。「会社が年末調整してくれるから、確定申告は関係ない」などと思っていたら大間違い!確定申告をやらないでいると、数万円損していることもありえるのです。今回は、確定申告でしか取り戻せないお金を解説します。

年末調整では手続きできない所得控除がある

確定申告とは、前年の所得税を確定するために、1年間の所得を計算して申告することです。フリーランスや個人事業主の方は、毎年欠かさず行います。一方、会社員の場合は年末に会社で「年末調整」を行うことで、基本的には確定申告をする必要はなくなります。

ただ、会社員でも確定申告をした方がいい場合もあります。それは、年末調整では手続きできない「所得控除」が利用できる場合です。

所得控除は、個々の事情に合わせて税金の計算のもとになる所得を減らすことのできるしくみのこと。所得が2500万円以下なら誰でも適用できる基礎控除、家族を養っている人が適用できる配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除、生命保険料を払っている人が適用できる生命保険料控除など、全部で15種類あります。

このうち、
・医療費控除(自分や家族の医療費を支払った場合の控除)
・寄附金控除(特定の団体に寄付した場合の控除)
※ふるさと納税も対象(ワンストップ特例を利用しない場合)
・雑損控除(災害・盗難などに遭った場合の控除)
の3種類の所得控除については、年末調整では手続きができません。

つまり、これらの所得控除を利用するには、確定申告をする必要があるというわけです。確定申告をすることで所得が減り、納めるべき税額が減ります。そうして、払い過ぎとなった税金を取り戻すことができます。

医療費を支払った場合に使える医療費控除

上の3種類の控除のうち、もっとも多くの方が該当しそうなのは医療費控除です。医療費控除では、自分や家族の医療費を支払った場合に、確定申告をすることで所得控除が受けられます。

医療費控除で控除できる金額は、次の計算式で計算できます。

【医療費控除の計算式】
(実際に支払った医療費の合計額−保険金などで補てんされる金額)−10万円※
※所得が200万円未満の人は所得の5%

たとえば、医療費の合計額が30万円(保険金などで補てんされる金額なし)、所得が300万円(所得税率10%)の人が医療費控除を行なった場合、医療費控除によって所得が20万円減り、所得税が2万円還付されます。また確定申告をすることで住民税(税率10%)も2万円安くなります。

医療費控除の対象となる医療費には、医療機関で支払った自己負担分の医療費、薬局で支払った薬代、通院に要した交通費などがあります。薬代は、医師による処方せんだけでなく市販薬も対象。歯の矯正も医療上必要であれば対象になります。交通費は、タクシーは原則不可ですが、どうしてもタクシーでないと行けないといった事情があれば対象になります。
ただ、健康診断や予防接種といった予防のための費用、美容整形などの病気の治療以外の手術、入院中の差額ベッド代などは対象外。疲労回復のための栄養ドリンクやサプリメント、マッサージ代なども対象外になります。

とはいえ、医療費控除は自分だけでなく、同一生計の家族の医療費と合算して利用できるので、所得が多い人(税率が高い人)がまとめて手続きすると、控除の効果が高まります。

●「保険金などで補てんされる金額」に要注意

注意したいのは医療費控除の計算式のなかにある「保険金などで補てんされる金額」です。保険金などで補てんされる金額は、具体的には、
・生命保険や損害保険の保険金
・医療費の支払いによって受け取る給付金(療養費、出産育児一時金、高額療養費など)
・損害賠償金(事故の際に相手から受け取る損害賠償金など)
・その他の給付金(会社の見舞金など)
といったお金が該当します。簡単にいうと「医療費控除の対象になるのは、実際に自分の負担になった金額だけ」というわけです。

ただ、これらのお金を受け取った際に、実際に支払った医療費から差し引く必要のある金額は、あくまでかかった医療費の分だけです。いいかえれば、保険金・賠償金・給付金がかかった医療費よりもたくさんもらえたとしても、実際にかかった医療費の分だけ差し引けばいいのです。

たとえば上と同じく、1年間の医療費の合計額が30万円の人がいるとします。そして、あるケガで15万円の医療費がかかり、そのケガの保険金として25万円を受け取ったとします。このとき、医療費控除の計算で差し引く「保険金などで補てんされる金額」は、25万円ではなく15万円となります。もし「25万円」で計算してしまうと、医療費控除の金額は0円((30万円−25万円)−10万円)になってしまいます。しかし、正しくは「15万円」ですので、医療費控除の金額は5万円((30万円−15万円)−10万円)となります。

また、がん保険の診断給付金にも注意が必要。がん保険の診断給付金は、がんと診断されたことで支給されるもので、そもそも「医療費の補てん」で支払われるものではありません。ですから、保険金などで補てんされる金額として差し引く必要はありません。

保険金などで補てんされる金額が少ないほど、医療費控除の金額が多くなり、税金をたくさん減らせることになります。計算を間違えて、医療費控除の金額を減らすことのないよう注意しましょう。

●医療費が10万円未満でも医療費控除できるケースも

上で紹介した医療費控除の計算式に「※所得が200万円未満の人は所得5%」とあります。これは、所得が200万円未満の人の場合、年間の医療費が「10万円以上」ではなく「所得の5%以上」であれば、医療費控除が利用できるという意味です。たとえば所得が160万円ならば、医療費控除は160万円×5%=8万円以上の医療費を支払っていれば適用できる、ということになります。

たとえば「収入が年金だけ」といった方の場合、所得が200万円以上になるケースは少ないでしょう。こうした方でも、医療費控除で税金が安くできるかもしれませんので、年間の所得と医療費を確認してみましょう。

●マイナ保険証で医療費控除がスムーズに

2021年10月から、マイナンバーカードが健康保険証「マイナ保険証」として利用できるようになっています。マイナンバーカードを取得し、健康保険証として利用登録すると、マイナンバーカード保有者が利用できる「マイナポータル」のサイト上で医療費の通知情報が確認できます。

このデータを国税庁「確定申告書等作成コーナー」に連携させると、1年間の医療費を自動的に連携できます。データ連携後、指示に従って確定申告を行えば、医療費控除も一緒に手続きできます。

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医療費控除の特例、セルフメディケーション税制

医療費控除を使うほどに医療費がかかっていない場合もあるでしょう。そうしたときに利用を検討したいのが、医療費控除の特例、セルフメディケーション税制です。

セルフメディケーション税制を利用できる人は、次の条件をすべて満たす人です。
・所得税や住民税を納めている人
・対象となるOTC医薬品の年間購入金額が、自分と扶養家族の分を合わせて1万2000円を超えた人
・特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診など、ふだんから検診や予防接種のいずれかを行なっており、病気の予防や健康増進に取り組んでいる人

セルフメディケーション税制の医療費控除額は、次の計算式で計算できます。

●セルフメディケーション税制の計算式

実際に支払ったスイッチOTC医薬品の購入費用-保険金などで補てんされる金額-1万2000円(最高8万8000円)

たとえば、1年間に購入したスイッチOTC医薬品の金額が10万円だった場合、10万円-1万2000円=8万8000円所得控除できます。所得税率が10%の場合、所得税が8800円還付され、住民税が8800円安くなります。

医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか片方しか使えませんが、自分だけでなく、同一生計の家族の分もまとめて利用できます。日頃から、医療機関にかかったときの領収書や明細書をためておき、控除額が大きくなるほうを利用すればいいでしょう。

年末調整した後にも確定申告が有効

会社の年末調整が終わった後に、次のようなことがあったら確定申告しましょう。

・保険料の控除証明書が出てきた(生命保険料控除)
・新たな保険を契約し、保険料を支払った(生命保険料控除)
・結婚した(配偶者控除・配偶者特別控除)
・親族を扶養しはじめた(扶養控除)

所得は、1月1日から12月31日までの1年間で計算します。「年末調整が終わったからもう無理」ではありません。確定申告によって、税額が安くなる場合があります。

また、年の途中で退職した場合、そもそも会社で年末調整を受けていないことがあります。再就職した場合には、新たな勤め先で年末調整をするので問題ないのですが、そうでない場合は、確定申告をすることで納めすぎた税金が戻ってくる場合があります。

住宅ローンを借りて住宅を購入し、はじめて住宅ローン控除を受ける場合にも確定申告が必要です(2年目以降は年末調整で手続き可能)。

もしもこれらの控除を忘れていた場合も、「還付申告」により、納めすぎた税金を取り戻すことができます。還付申告は確定申告の期間とは関係なく、該当年度の翌年1月1日から5年間にわたって手続きが可能です。

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確定申告「しなければならない」場合もある

ここまで、確定申告をしたほうがいい場合をお話ししてきましたが、中には確定申告をしなければならない場合もあります。具体的には、

・給与の年間収入金額が2000万円を超える人
・給与以外の所得(副業など)の合計が20万円を超える人
・2か所以上から給与を受け取っている人

などが該当します。
これらの方は、そもそも年末調整では手続きができませんので、確定申告をしなければなりません。

まとめ

会社員には年末調整がありますが、年末調整があるからといって確定申告をしないでいると、実は損をしていることもあるかもしれません。特に詳しく紹介した医療費控除・セルフメディケーション税制は、該当する人が多いと思われます。ぜひ正しく確定申告して、税金を取り戻すようにしましょう。

畠山 憲一 Mocha編集長

1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。

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