22/03/17
企業型確定拠出年金で大損する「放置」が100万人以上…損を防ぐにはどうすべきか
企業が掛金を拠出し、従業員が自分で運用する制度として多くの会社が導入している企業型確定拠出年金。受取り開始年齢の60歳前に退職をした場合、転職先の企業型年金やiDeCoに資産を移換する手続きが必要なのですが、それをせずに「自動移換」されている人がすでに100万人以上います。
今回は自動移換されてしまった場合、どのようなデメリットがあるのか、自動移換されないためにはどのような手続きが必要になるのか紹介します。
100万人以上が自動移換されている
企業型確定拠出年金に加入している人が勤めている会社を退職した場合、退職から6カ月以内に自身で移換手続きが必要になります。転職先に企業型の年金制度があればそちらに資産を移し、フリーランスや専業主婦(夫)のように再就職しない場合や転職先に企業型の制度がない場合はiDeCo に資産を移します。
しかし、この手続きを行わないと、積み立ててきた資産が国民年金基金連合会に自動的に移されてしまいます。これが「自動移換」です。
国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況」(令和4年1月時点)によると、資産が自動移換されてしまっている人は約106.9万人にのぼっています。
自動移換によるデメリット
自動移換されてしまうことで発生するデメリットは大きく3つあります。
●運用することができない
国民年金基金連合会に自動移換されてしまうと、現金で管理されたままになってしまうので、一切の運用ができなくなってしまいます。現金として管理されるため、普通預金でつくようなわずかな利息でさえもらうことができません。
●増えることがなく減っていくばかり
自動移換後は運用できないのにもかかわらず、様々な手数料が発生します。まず、自動移換の際に4,348円、そして、それ以降も管理手数料として毎月52円かかります。また、移換されてしまった資産を企業型確定拠出年金に戻す際には1,100円、iDeCoに戻す際は3,929円の手数料がかかってしまいます(以上金額はすべて税込)。運用ができないのにも関わらず、手数料だけが引かれる状態となり、せっかく積み立ててきた資産がどんどん減っていってしまいます。
●加入期間にカウントされない
企業型確定拠出年金は原則として10年加入しないと60歳からお金がもらえません。60歳になった時点での通算の加入者期間が10年に満たない場合、受給可能年齢が最大で65歳まで延期されてしまいます。自動移換された後の期間は加入者期間とみなされないため、受取の開始時期が遅くなってしまうというデメリットがあります。
具体的な移換の手続きはどのようにすればいいのか?
では自動移換されないためには、退職6カ月以内にどのような手続きを行わなければならないのでしょうか。
退職後の状況によって手続きは違ってきますので、ケース別に紹介します。
●転職先に企業型確定拠出年金がある場合
転職先の企業型確定拠出年金への移換手続きができます。
転職先の企業から「個人別管理資産移換依頼書」をもらい、提出する必要があります。約1~2カ月程度で資産の移換が完了します。移換された資産は、一旦すべて現金化されるので、新たな運用商品を購入するようにしましょう。
●新しい会社に企業型確定給付年金がある場合
企業型確定拠出年金で運用していた資産を転職先の企業型確定給付年金へ移換できる場合があります。ただし、規約などで、確定拠出年金の資産を受入れることが可能と定められている必要がある等、一定の条件を満たす必要があります。移換できるかどうか転職先の企業に確認しましょう。
●新しい会社に企業型の制度がない場合、又は退職後再就職をしない場合
iDeCoへの移換手続きが必要です。iDeCoを取扱う金融機関を自分で1社選び「個人別管理資産移換依頼書」を提出します。
移換手続きと同時に加入の申出を行えば、企業型確定拠出年金で運用していた資産を引き継いだうえで、掛金を拠出することも可能です。
退職したら移換手続きを忘れずに!
退職後・再就職後などはやらなくてはいけないことが沢山あり、わからないことをついつい後回しにしがちです。
しかし、退職後6カ月を過ぎて自動移換されてしまうとデメリットばかりで大損してしまいます。企業型確定拠出年金は老後のために会社が積み立ててくれた自身の大切な資産であることを忘れずに。退職後は早めに移換手続きをしましょう。
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渡部ナオコ ファイナンシャルプランナー
大学卒業後から現在まで金融業界一筋のアラサーワーママ。結婚・出産・子育て・マイホーム購入などの自身の経験から、一人でも多くの女性の悩みを解決したいと思い執筆を開始。
プライベートでは一人娘の育児に奮闘中。
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