24/08/08
収入が「年金のみ」の割合は何割?上乗せを作る4つの方法
公的年金は生きている限り受け取れる保障。老後の生活の基盤となるお金ですが、豊かな老後生活を送りたいならば、他の収入による上乗せを狙いたいところです。しかし、実際は年金だけで生活する高齢世帯が少なくないようです。厚生労働省のデータを確認し、老後の不安を解消するための対策を紹介します。
収入が年金のみの高齢者世帯はどのくらいある?
厚生労働省の「国民生活基礎調査」は、国民全体の所得や年金、健康、介護などの実態を調査したものです。
2023(令和5)年の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の平均所得は304万9000円です。
高齢者世帯というのは、65歳以上の夫婦だけで生活している世帯、または、65歳以上の夫婦と18歳未満の未婚の子どもが一緒にくらしている世帯をいいます。
高齢者世帯の所得の304万9000円は、高齢者世帯以外の世帯(65歳未満の世帯)の平均所得651万1000円と比較すると、所得自体が46.8%であり、大きく減少しています。また、高齢者世帯の平均所得304万9000円のうち、62.9%にあたる191万9000円が年金での収入。残りはパートやアルバイトなどで得ている人が多いようです。
若いうちは、老後になれば年金で生活するのが当たり前と思っていますが、実際に年金だけでは、豊かな生活を送るには十分とはいえません。年金だけでどの程度の生活を確保できるのかしっかり理解しておくことが大切です。
同調査では、高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合が紹介されています。その結果によれば、老後生活の収入が公的年金のみ(公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯)の世帯は41.7%と一番多くなっています。
<高齢者世帯の総所得に占める年金の割合>
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2023年)より
確かに、公的年金は生きている限り受け取れる保障です。老後の生活の基盤としてはとても頼りになる制度といえます。しかし、豊かな老後生活を思い描くのであれば、老後に受け取る年金に少しでも上乗せとなるよう制度を活用するのが良いでしょう。そのための4つの方法を紹介します。
年金を上乗せする方法1:年金をしっかり納める
老後の年金の基礎部分となる国民年金の年額は、満額81万6000円です(2024年度)。国民年金を満額受け取るには、原則20歳~60歳までの40年間(480ヶ月)、保険料を全額納める必要があります。
現状が会社員や公務員であれば、国民年金が含まれた厚生年金に加入しているため、20歳~60歳まで勤務すれば満額受け取れます。しかし、転職などでブランクができたり、会社員から自営業へと働き方を変えたりして、年金の手続きが遅れることで、年金保険料を未納のままになってしまうことがあります。万が一、放置したままであれば、保険料納付期間が少なくなり、国民年金を満額受け取ることはできなくなります。
もし、転職、働き方の変更などがあるようなら、年金保険の支払い忘れがないか注意をしましょう。また、資金の余裕がなく、年金保険料の支払いができないなど困ったことがあれば、保険料が軽減されたり、免除、猶予されたりする免除制度を活用することもできます。種類によっては、保険料を支払わなくても全額~半分を支払ったものとして反映されるものもあります。お住いの市区町村役所の国民年金窓口や最寄りの年金事務所などへ相談してみましょう。くれぐれも、年金保険を未納のまま放置しないよう気をつけましょう。
年金を上乗せする方法2:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用する
年金の上乗せで代表的なのはiDeCoです。60歳未満であれば誰でも幅広く対象となる、老後資金を運用する制度です(職業によって、加入資格や掛金の金額など条件が異なります)。ただし、60歳以降国民年金に加入する場合(会社員・公務員・国民年金の任意加入者)は65歳未満まで掛金を出すことができます(その他の方は60歳まで)。
iDeCoは、定期預金や投資信託などの金融商品から、自分に合ったものを選び運用するしくみ。運用した資産は、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。
iDeCoの特徴は、年金を準備から60歳以降実際に年金を受け取るまで、3つの段階で税制メリットを受けながら、効率的な老後資金準備ができます。
① 積み立てるとき
iDeCoの掛金はすべて所得税から控除できます。そのため、毎年の所得税や住民税の負担が軽くなります。iDeCoは、将来受け取る年金を準備しながら、現在の税金の支払いも安くなります。
② 運用するとき
一般的に、投資で得られた運用益や定期預金の利息には、20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoを活用して得た運用益には税金がかかりません。そのため、投資信託を運用して得た利益をそのまま次の運用に活用できます。
③ 受け取るとき
iDeCoを受け取るときは、一時金、分割どちらでも大丈夫です。一時金で受け取るときは退職所得控除を受けることができます。また分割で受け取るときは、公的年金等控除を受けることができます。どちらの控除も大幅に税金を軽減する効果があります。
なお、iDeCoの掛金を出すことができる期間を70歳未満までに引き上げたり、毎月の掛金額をアップさせたりする改正も議論されています。実現すれば、さらに老後のお金を用意しやすくなるでしょう。
年金を上乗せする方法3:国民年金基金を利用する
国民年金基金は、フリーランスや自営業者などの方々が、年金を上乗せするための制度です。公的年金と同じく、終身にわたり年金を受け取れます。
国民年金基金の掛金は、iDeCoのように全額所得から控除できるため、所得税や住民税を安くできます。月額掛金の上限は6万8,000円までとなっています(iDeCoと併用する場合は、iDeCoと国民年金基金の合計で6万8,000円まで)。
税制メリットがあり効率的に老後資金を準備できる制度を活用することで、老後のお金の不安を解消できます。
年金を上乗せする方法4:新NISAを活用する
2024年から改正となった新NISAでは成長投資枠は年間240万円、つみたて投資枠は年間120万円、合計すると1年間で360万円が投資でき、トータルで1800万円まで非課税限度額が拡大しています(そのうち、成長投資枠は1200万円まで)。
また、非課税期間は無期限なので、一生涯にわたって投資できます。さらに、売却した分は翌年以降に再利用が可能になり、成長投資枠とつみたて投資枠は併用が可能です。
仮に、50~55歳から、1か月あたり10万円ずつを年利3%で5~10年間運用することができれば、5年間では約650万円、10年間では約1400万円も貯めることができます。
年金額を増やすことを考えよう
公的年金は終身にわたり受け取ることができます。金額を増やすことは、老後の安心につながります。もしも年金保険料の未納があれば、速やかに支払いましょう。また、早いうちからiDeCoや国民年金基金、新NISAなどを利用して効率的に老後資金の準備をはじめましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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