21/12/13
ふるさと納税とiDeCoの併用で損することはない
寄付をすることでお礼の品(返礼品)がもらえてお得なふるさと納税。ただ、同じく税金を控除(差し引く)ことができるiDeCoと併用すると、ふるさと納税が自己負担2000円でできる上限額が少なくなってしまいます。
ふるさと納税とiDeCoの併用は損になりません。節税額の計算をもとに解説します。
ふるさと納税とiDeCoの制度を確認
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付をする制度です。寄付をすると多くの自治体からは食料品・雑貨・日用品といった返礼品が受け取れます。豪華な品々が話題になることもよくありますね。返礼品が楽しみという方も多いでしょう。
ふるさと納税の寄付金は、「寄附金控除」というしくみを利用することで、2000円を超える金額を所得税・住民税から控除できます。つまり、豪華な品々を自己負担2000円で受け取れるのです。ふるさと納税を使っても使わなくても、所得税や住民税は支払うのですから、ふるさと納税を使って返礼品を受け取ったほうがおとくですよね。
ふるさと納税で自己負担額が2000円になる金額には、上限額があります。ふるさと納税の上限額は、年収や家族構成により異なります。自分のふるさと納税の上限額は、ふるさと納税を扱うウェブサイトでシミュレーションできます。自分のケースを確認した上で、ふるさと納税を行いましょう。
●ふるさと納税の上限額の目安
筆者作成
一方のiDeCoは、自分で掛金を出して投資信託・定期預金・保険といった商品で運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度です。公的年金(国民年金・厚生年金)の上乗せを堅実に用意する「じぶん年金」の制度です。
iDeCo最大のメリットは、3つのタイミングで税制優遇が受けられることにあります。
・掛金が全額所得控除:毎年の所得税や住民税が減らせる
・運用益が非課税:利益から税金が引かれないので、効率よくお金を増やせる
・受け取るとき:「退職所得控除」「公的年金等控除」で税金の控除ができる
●iDeCoの概要
筆者作成
ふるさと納税・iDeCo併用で税金はどのように減る?
ふるさと納税とiDeCoを併用した場合、税金(所得税・住民税)はどのように減るのかを見てみましょう
●ふるさと納税とiDeCoを併用すると?
筆者作成
所得税・住民税は、毎年の給与収入からサラリーマンの経費のような「給与所得控除」と個人の事情を税金に反映させる「所得控除」を引いた課税所得をもとに計算します。また、計算された所得税や住民税を直接減らす「税額控除」もあります。
ふるさと納税とiDeCoを併用すると、所得控除として「ふるさと納税の寄附金額」と「iDeCoの掛金」を差し引くことができます。これによって課税所得が減りますので、所得税の金額も所得控除の分だけ減ります。また、住民税からはふるさと納税の寄附金額を税額控除することができます。
注目していただきたいのは、所得控除の部分です。上で紹介したふるさと納税の上限額は、課税所得を基準に計算されています。課税所得が高いほど、上限額も多くなる計算です。しかし、iDeCoを併用すると、iDeCoの所得控除のおかげで課税所得が減ります。そうすることで、ふるさと納税の控除額上限も減ってしまう、というわけです。
では、ふるさと納税とiDeCoを併用したら、上限額はどのくらい減ってしまうのでしょうか。
●ふるさと納税とiDeCo併用時の上限額は?
筆者作成
たとえば年収400万円の独身または共働きの方で、iDeCoを利用していなかった場合のふるさと納税の上限額は4万3000円です。このうち2000円は自己負担ですので、4万1000円分が所得控除できます。しかし、iDeCoの掛金を月2万3000円かけていた場合の上限額は3万5000円に。2000円の自己負担を除くと3万3000円ですから、上限額は8000円少なくなってしまいました。
iDeCoでも節税できていることを忘れずに!
これだけ見ると、ふるさと納税できる金額が減ってしまって損だと思われるかもしれません。しかし、iDeCoでも節税ができていることを思い出してください。iDeCoの掛金は全額所得控除でき、そのぶん税金を安くすることができます。
上の年収400万円の方の所得税率は5%です(住民税率は一律で10%です)。
iDeCoに月2万3000円(年間27万6000円)掛金を出した場合、iDeCoで節税できる金額は、27.6万円×15%=4万1400円となります。
もしも、ふるさと納税を上限まで行ったとしたら、ふるさと納税・iDeCoで節税できる金額は、
・ふるさと納税のみの場合:4万1000円
・ふるさと納税+iDeCo月2万3000円の場合:3万3000円+4万1400円=7万4400円
となります。
差額は3万3400円。ふるさと納税とiDeCoを併用した方が3万3400円分お得になるのです。
実際は、どれくらい節税金額がお得になるのかは、年収や適用される所得控除の種類・金額により異なりますので、ポータルサイトのシミュレーションを活用すると良いかと思います。
まとめ
ふるさと納税で控除できる金額の上限は、iDeCoを併用することで確かに減ります。しかし、iDeCoを併用した場合のトータルでの節税金額の合計は、ふるさと納税しか利用しない場合よりも増えます。ですから、ぜひふるさと納税とiDeCoを併用して返礼品をもらいつつ、老後資金を上手に用意していきましょう。
今回の内容は動画でも紹介しております。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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