21/11/23
iDeCoは2022年5月から65歳まで加入可能に! でもその前に60歳になった人は加入できないのか
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は自分で掛金を出して運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度です。
2022年5月、iDeCoの制度が改正され、現状60歳までとなっている加入可能年齢が65歳に引き上げられます。では、法改正前に60歳になる人は、もうiDeCoに加入することはできないのでしょうか。
2022年のiDeCoの3つの改正点とともに、国民年金基金連合会に取材・確認した内容と合わせて解説します。
iDeCo法改正で2022年以降どう変わる?
iDeCoは2001年にスタートした制度です。スタート当初は加入できる人が限られていたのですが、2017年からは加入できる人の範囲が拡大。現役世代はほぼ誰でも加入できるようになりました。
iDeCoでは、「掛金が全額所得控除される(所得税・住民税を安くできる)」「運用益が非課税」「受け取るときの税負担が減る」という3つの税制優遇を活用可能。不足する公的年金の上乗せ部分を堅実に作れることも手伝って、近年加入者が増加しています。2021年9月時点の加入者数は約217万人となっています。
そんなiDeCoの制度が2022年、相次いで変更される予定です。大きな改正点は次の3つです。
●iDeCoの改正点1:老齢給付金の受給開始年齢が5年延長(2022年4月から)
iDeCoで積み立て、運用してきた資産(老齢給付金)は、これまで60歳から70歳までの間に受給を開始する仕組みになっていました。
2022年4月からは、60歳から75歳までの間に受給を開始する仕組みに。受給開始年齢が5年延長されます。同じく2022年4月から、公的年金(国民年金・厚生年金)の受給開始年齢も75歳まで繰り下げることができるようになります。iDeCoの資産も、これに合わせて受給できるようになるというわけです。
●iDeCoの改正点2:iDeCoの加入年齢が5年延長(2022年5月から)
これまで、iDeCoに加入して掛金を出せるのは、60歳未満の方となっていました。60歳になると「運用指図者」となり、それまでに積み立てた資産を非課税で運用することはできました。しかし、新たに掛金を出して運用することはできなかったのです。
2022年5月からは、iDeCoの加入年齢が5年延長され、65歳まで掛金を出すことが可能になります。加入期間が5年間長くなれば、その分iDeCoの資産を積み増すことができますし、税制優遇も長く受けられます。
●iDeCoの改正点3:企業型DC加入者もiDeCoに加入しやすくなる(2022年10月から)
iDeCoは2017年の改正で「現役世代ならほぼ誰でも加入できるようになった」のですが、会社で加入する企業型DC(企業型確定拠出年金)を利用している方の多くは、実際にはiDeCoに加入できませんでした。なぜなら、労使合意のもとで「企業型DCとiDeCoの併用を認める」といった規約を定める必要があったからです。この規約がない会社がたくさんあるのです。
2022年10月からは、そうした規約がなくてもiDeCoに加入できるようになります。企業型DCの加入者は約750万人(2021年3月末時点)いますので、今後加入者の増大が見込まれています。
2022年5月までに60歳になる人は加入できない?
ではタイトルにある「2022年5月までに60歳になる人は加入できないのか」について答えていきます。
結論から申し上げると、2022年5月までに60歳になった方でも、iDeCoに加入し、65歳まで掛金を出すことができます。
2022年5月までに60歳になる人は、いったん運用指図者になります。しかし、iDeCoの制度が変わる2022年5月以降に再加入の手続きをすれば、再びiDeCoに加入し、65歳になるまでは掛金を出して運用を続けることができるのです。
以下の条件を満たせば2022年5月時点で64歳の方までiDeCoに再加入できます。
●国民年金に加入していること
iDeCoへの加入は「国民年金に加入していること」が条件です。60歳になったあとも会社員・公務員として勤め、厚生年金に加入している場合(第2号被保険者)は、国民年金にも同時に加入していますので、iDeCoにも加入できます。
しかし、個人事業主などの「第1号被保険者」や、専業主婦(夫)などの「第3号被保険者」の場合は、60歳になると国民年金の加入資格を失うため、iDeCoに再加入できません。
例外として、60歳以降も国民年金の任意加入(国民年金の受給資格を得たり金額を増やしたりするために、国民年金保険料を自分で払って国民年金に加入すること)をしている間は、iDeCoにも加入できます。なお、すでに40年間国民年金保険料を支払っている場合は任意加入ができませんので、その場合はiDeCoに加入できません。
●公的年金の繰上げ受給やiDeCoの資産の受給をしていないこと
国民年金・厚生年金といった公的年金を繰上げ受給したり、iDeCoの資産を受け取ったりしていると、iDeCoには加入できません。ですから、iDeCoの再加入を希望するならば、これらの受給の手続きをしないことが重要です。
ただし、特別支給の老齢厚生年金(男性1961年4月1日以前生まれ・女性1966年4月1日以前生まれの方が60代前半に受け取れる厚生年金)を本来の支給開始年齢から受け取る分にはiDeCoの再加入ができます(繰上げは不可)。また、企業型DCなどの会社の年金制度のお金を受け取っている場合でも、iDeCoの再加入は問題なくできます。
●2022年5月以降に金融機関に加入の手続きをすること
iDeCoに再加入するには、2022年5月以降に金融機関に改めて加入の手続きをする必要があります。加入するときと同じく「個人型年金加入申込書」「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」に必要事項を記載し、金融機関に提出します。なお、「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」には会社の記入欄もあるので、総務部や経理部など所管部署の担当者に書いてもらいましょう。
なお、2022年5月以降に60歳になる方は、この手続きは不要です。60歳以降も自動的に運用が続けられます。
65歳まで加入するメリットは大きい
iDeCoに65歳まで加入することで、老後資産の積立額を単純に増やすことができますし、掛金の全額所得控除・運用益非課税といった税制優遇をより長く受けることができます。さらに、iDeCoの加入期間が長くなれば、iDeCoの資産を一時金として受け取るときの控除(退職所得控除)の金額も増やせます。
したがって、60歳以降も会社員・公務員として働き、厚生年金に加入しているならば、制度改正前に60歳を迎える方はもちろん、制度改正後に60歳になる方でも、65歳までのiDeCo活用を積極的に検討するのがいいでしょう。また、60歳で定年起業し、会社を立ち上げた場合も、厚生年金に加入するので、iDeCoを継続することができます。
一方で、個人事業主の方は、任意加入しない限りはiDeCoを続けられません。よって、年金の上乗せをしたい場合は、小規模企業共済を活用するといいでしょう。小規模企業共済は、個人事業主や小企業の役員などがお金を積み立てて退職金や年金を積み立てる制度。iDeCoと同様、掛金を全額所得控除できます。そのうえ、仕事を続けていれば年齢制限なく利用できます。
まとめ
2022年のiDeCoの制度改正のポイントに加えて、制度改正になる前に60歳を迎える方がiDeCoに再加入できるかについて、解説しました。iDeCoは老後資金を堅実に用意するのに適した制度ですので、できるだけ長くたくさん活用するのがおすすめ。法改正でこれまでよりも長くたくさん活用できるようになりますので、条件を満たす方はぜひ活用していきましょう。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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