24/02/09
年収1000万円あっても苦しい…稼ぐほど追い詰める「子育て支援策」の欠陥
「年収1000万円」と聞くと、一般的にはお金持ちの部類に入るように感じる方が多いのではないでしょうか。しかし、子育てをする上では、年収1000万円世帯でも決して余裕があるわけではありません。なぜなら、国が行っているさまざまな子育て支援制度には所得制限があり、年収1000万円前後で対象外となってしまうことが多いためです。
本記事では、年収1000万円の世帯が、子育てにおいてどのような負担を強いられるのか解説します。
認可保育園の保育料負担が増える
2019年に始まった「幼児教育・保育の無償化」制度により、認可保育園に通う3歳児から5歳児クラスまでの保育料が無料になりました。ただし、0歳児から2歳児までは制度対象外で、世帯年収に応じて保育料がかかります。
国が定める基準によると、住民税所得割額が39万7000円以上、つまり年収がおよそ1000万円~1200万円になると、保育料の金額を決める区分が最上位となってしまいます。このとき、第1子の保育料は月10万4000円(保育時間最大11時間の場合)となります。住民税非課税世帯の保育料が無料、所得割額4万8600円未満の世帯の保育料が月1万9500円なのに比べて、かなりの保育料負担を強いられることがわかるでしょう。
ただし、上記はあくまで国が定めた基準で、地域によってはそこまで保育料がかからない場合もあります。詳しくは、お住まいの自治体の制度を確認してください。
児童手当の受給額が減額される
中学を卒業するまでの子どもを育てる保護者には、児童手当が支給されます。
支給額は、3歳未満の子どもは一人あたり月額1万5000円、3歳から中学卒業までの子どもは一人あたり月額1万円です。なお、子どもが3人以上いる場合、3歳から小学6年生までの第3子以降の支給額は1万5000円となります。
ただ、この児童手当には所得制限があります。片働きで子ども2人の場合、年収が約960万円を超えると、支給額が月5000円に減額されてしまいます。さらに、年収が約1200万円を超えると、支給額が0円となってしまうのです。
もっとも、児童手当の所得制限は2024年10月から撤廃される予定。また、支給期間を延長し、高校生も支給対象に加えること、第3子以降は3万円にすることが予定されています。
しかし、一方で高校生に児童手当を支給する代わりに、高校生の保護者の扶養控除の金額を減らす検討もなされています。扶養控除が減ると、その分税金が増えてしまいます。
仮に扶養控除が減っても、どの世帯でも児童手当の恩恵は受けられるのですが、年収が高いほど児童手当から増加する税額を差し引いた「児童手当の手取り」が減ってしまうことになります。今後の動向に注目する必要があるでしょう。
高校の授業料が無償にならない
高校の授業料は「高等学校等就学支援金制度」によって実質無償化されています。具体的には、年収が910万円未満の世帯に公立高校の授業料分が支給されるようになっています。さらに、年収が590万円以下であれば、私立高校の授業料相当額までが支援されます(高校生の子1人、中学生の子1人の場合)。
ただし、年収910万円以上の世帯は、この制度の対象外です。私立高校の場合、年収590万円以下の世帯は授業料が無料なのに、年収が910万円以上だと3年間で100万円以上の授業料を支払わねばならないのです。
なお、東京都では2024年度からこの所得制限を撤廃し、すべての世帯の高校授業料を無償化する方針が示されています。
年収1000万円でも子育てに余裕はない
年収1000万円でも子育て世帯は生活が厳しい理由を挙げてきました。
高校生までの子どもに関する制度について述べてきましたが、子どもを大学に行かせるとなると、さらにお金がかかります。国立大学でも4年間で250万円程度、私立の理系学部だと4年間で500万円以上かかり、医学部や歯学部だと2000万円以上かかる場合も。
「年収が1000万円あるから大丈夫」と決めつけるのではなく、子育てにおいていつどんなことにお金がかかるのか、使える支援制度はあるのかなどを調べ、賢く資金計画を立てる必要があるでしょう。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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