24/09/03
「60歳以上男女に聞いた「やっておけばよかった」ベスト3 運動・貯蓄を抑えて1位になったのは?
これまでの人生を振り返ると「もっとあの時、こうしていれば…」と感じる瞬間は誰にでもあります。しかし、60歳という節目を迎えるとその後悔が強くなると言います。そこで今回は、60代が「やっておけばよかった」と思うことをご紹介。ベスト3の内容と、60代になって後悔しないための具体的な行動を紹介します。
人生全般で後悔していることとは?
生命保険文化センターでは、高年齢層の考え方や生活の実態・意向などを把握するために「ライフマネジメントに関する高年齢層の意識調査」という調査を実施し、結果を公表しています。
2023年度の同調査では人生全般における後悔について質問しています。さまざまな事柄について「そう思う」から「そう思わない」まで4段階で評価したものをまとめた結果が、次のグラフです。
<人生全般に関する後悔>
生命保険文化センター「2023年度ライフマネジメントに関する高年齢層の意識調査」より
後悔している人の多いもの(そう思う・まあそう思う)の多い項目ベスト3は、次のようになっています。
●3位:運動
3位は「もっと運動しておけばよかった」で、回答した人は43.6%でした。確かに、運動不足は健康に多大な影響を及ぼします。特に60代以降は、運動不足が引き起こすリスクが増大し、心血管疾患や糖尿病などの病気にかかりやすくなります。
しかし、60歳からでも運動を始めることはできます。軽い運動でも体力の維持や増強に役立ち、生活の質を向上させることができます。例えば、ウォーキングやストレッチ、軽い筋力トレーニングは、初心者でも取り入れやすい運動です。運動を習慣にすることで、健康寿命を延ばし、充実した生活を送るための基盤を築くことができます。
●2位:貯蓄
2位は「もっと貯蓄を行えばよかった」で、54.3%の人が挙げています。しかし、60代からでも資産形成を始めることは決して遅くありません。むしろ、老後の生活費を見据えた適切なプランニングが、安心した生活を支える重要な鍵となります。
まず、定期的な貯金を習慣化することが大切です。少額でも毎月の収入から一定額を積み立てることで、資産を着実に増やすことができます。また、NISAなどの税制優遇制度を活用することで、効率的に資産を運用することが可能です。年金だけに頼るのではなく、貯金や資産運用することで、より安心して生活することができます。
●1位:学び
そして1位は「もっと学べばよかった」。57.1%の人が「学びが足りなかった」と感じているようです。若い頃には、仕事や家事、育児に追われて学ぶ時間がなかったという方も多いでしょう。しかし、人生を振り返ると、もう少し勉強しておけば、もっと豊かな人生を送れたかもしれないという後悔が芽生えるのかもしれません。
しかし、60代からでも学びを再開することは十分可能です。例えば、オンライン講座なら、自宅で好きな時間に学べる環境が整っています。また、地域のカルチャーセンターでも、趣味や実用的なスキルを学ぶための多様な講座が提供されています。興味を持った分野に挑戦することで、新たな趣味やスキルを獲得することができます。
さらに、学びは人とのつながりを生み出し、新たなコミュニティに参加するきっかけにもなるかもしれません。今からでも遅くはありません。学びの価値を再発見し、新しい人生の扉を開いてみましょう。
今からでも間に合う、後悔しないための行動を始めよう
人生における後悔はつきものですが、後悔しただけでは未来は変わりません。後悔したあとの未来への行動が大切なのです。60代からでも始められることは多くあります。しかし、60代になる前にやっておけばそもそも後悔をすることもありません。これらのデータは私たちの未来への行動を教えてくれています。
なかでも、貯蓄・資産運用については、時間という味方を最大限活用したいところです。時間を味方にすることで大きな差が生まれるのが資産運用の特徴です。毎月1万円を20年間積み立てれば240万円ですが、10年しか積み立てられなければ120万円しか貯められません。少しでも早く始めることが大切なのです。
●時間だけじゃない、複利も味方に
時間は遡ることはできません。資産運用も遡って始めるとはできません。では時間がない人にとっては資産運用を始めるメリットがないかというと、そういうわけではありません。
時間があっても、普通預金や定期預金だけの人よりも複利の力を味方につけて資産運用することで将来の資産を増やすことができます。さらに、投資信託のように、プロが運用して様々な資産に分散投資してくれる金融商品を使えば、少額から始められ、手間をかけずに投資を始められます。
●iDeCo、NISAを優先的に活用しよう
これから資産運用を始めるのであれば、iDeCoやNISAの制度は積極的に活用しましょう。どちらも少額から始めることができ、時間と複利を味方にすることができます。さらに税制面でも優遇があります。
iDeCoは、自分で毎月積み立てた掛金を定期預金・保険・投資信託で運用し、その成果を原則60歳以降に一時金または年金の形で受け取る制度です。「自分年金」を作る制度として知られています。
iDeCoでは、掛金の「拠出時」「運用時」「給付時」の3つのタイミングで税制優遇が受けられます。
・拠出時:毎月の掛金が全額所得控除できるため、所得税や住民税を軽くできる
・運用時:積立期間中に得られた利益にかかる税金(20.315%)が非課税
・受取時:一時金で受け取ると「退職所得控除」、年金で受け取ると「公的年金等控除」の税優遇が受けられる
iDeCoの資産は原則として60歳まで引き出しができませんが、確実に老後資金を貯める意味ではむしろメリットといえるしくみになっています。
また、NISAもiDeCoと同様、投資で得られた利益にかかる20.315%の税金が非課税にできる制度です。iDeCoと違って所得税や住民税を軽くする効果はないのですが、運用益は一生涯にわたって非課税にでき、いつでも引き出すことができます。
NISAは2024年に制度が改正されたことで「新NISA」と呼ばれています。
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの投資枠が利用できます。
つみたて投資枠は積立投資専用で、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ ETF(上場投資信託)に投資ができます。成長投資枠は、積立投資だけでなく一括投資もでき、上場株式・ETF・REIT(不動産投資信託)・投資信託に投資できます。つみたて投資枠では年120万円、成長投資枠では年240万円まで投資ができます。
●預金と投資のバランスが大事
毎月の貯金額を決めるときには、預金と投資の配分が非常に重要です。どちらにどれだけの金額を割り当てるかは、自分のリスク許容度と将来の目的によって大きく変わります。
リスクを取ることに不安がある場合は、預金などの割合を高め、リスクの低い投資商品を選ぶと良いでしょう。反対に、長期的な資産形成を重視し、リスクを取ることに前向きな場合は、投資の割合を増やすといいでしょう。
適切な預金と投資の配分を決定することで、より確実な計画を立てることができます。
今すぐ一歩を踏み出すことが大切
後悔は誰でもするものですが、初めからわかっていたら回避することもできます。調査結果の「学び」「貯蓄」「健康」についても、今すぐできることはあるはずです。大切なのは、今この瞬間から、一歩を踏み出すことです。自分の人生を主体的に生き、やりたいことを実現していく。それが、本当に豊かな老後を送る秘訣なのです。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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