25/05/10
「手取り月給30万円」となる毎月の給料はいくらか

初めて給料をもらったときに「思ったより少ない」と感じた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。そう感じる理由は、給与額面から税金や社会保険料などを差し引いたものが手取り収入になるからです。もらった給料の仕組みが理解できると、節税や資産形成といった場面でも役立ちます。
今回は、税金や社会保険料などに焦点をあて、給料の手取りの内容を確認していきます。
給与額面から差し引かれるものは?
自分で計算をして税金を納める機会少ない会社員は、納めるべき税金や社会保険料への意識が薄くなりがちです。それもそのはず、会社の経理の部署が毎月もらう給料から税金や社会保険料を差し引いて計算してくれるからです。
給与額面金額からは、所得税、住民税(社会人2年目以降)、健康保険料、介護保険料(40歳以上)、厚生年金保険料、雇用保険料のほか、財形貯蓄や社宅費といった控除金額が差し引かれます。
月収とは、税金や社会保険料を差し引く前の基本給、各種手当などを含む総支給額のことをいいます。また、手取り収入とは、所得税や住民税とすべての保険料を差し引いたものをいいます。大まかには、総支給額の7割から8割程度が手取り収入になるといわれています。
「手取り月給30万円」とするには、毎月の給与額面が約38万円、年収ベース(賞与なし)で約450万円必要です。具体的にみてみましょう。
社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)
健康保険料は標準報酬月額に健康保険料率を掛けた金額になります。標準報酬月額とは、4月~6月の3か月間に支払われた報酬の平均支払額(1000円未満を切り捨て)をもとに計算され、健康保険は50等級、厚生年金は32等級に分かれています。
厚生年金保険料と介護保険料は全国一律ですが、健康保険料率は、加入している組合や都道府県によって多少料率(金額)が異なります。たとえば協会けんぽ東京では、40歳未満の健康保険料だけの場合は標準報酬月額に9.91%、介護保険料を納める40歳以上の場合には11.5%を掛けた金額を労使折半して保険料を納めます。
厚生年金保険料は、標準報酬月額に18.3%掛けた金額の半分が労働者の納める保険料です。
<健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)>

協会けんぽのウェブサイトより
給料の標準報酬月額が40歳未満で38万円の場合、健康保険料は26等級、厚生年金保険料は23等級です。実際に支払う金額は「標準報酬月額×保険料率÷2」ですので、
【健康保険料】
38万円×9.91%÷2=1万8829円
【厚生年金保険料】
38万円×18.3%÷2=3万4770円
健康保険料と厚生年金保険料の金額は、あわせて5万3599円になります。
雇用保険料
雇用保険は労働者の生活や雇用の安定を保障する制度で、事業主と従業員で負担し、給料や賞与から保険料が差し引かれます。労働者が失業して再就職を目指す際に必要な支援が受けられるように、雇用保険料を積み立てています。
2025年度(令和7年度)の雇用保険料は、一般の事業の労働者負担が1000分の5.5になっています。雇用保険料は「給与額×雇用保険料率(端数が50銭以下は切捨て)」で計算しますので、
【雇用保険料】
38万円×0.55%=2090円
給料額面が38万円の場合、雇用保険料は2090円になります。
所得税
所得税は国に納める税金で、所得金額が高くなればなるほど税率が高くなる累進課税になっており、税率は5%から45%の7段階に区分されています。所得税は、総支給額から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除などの控除を差し引いた残りの金額(所得税課税対象額)に対して税額をかけます。たとえば、課税される所得金額が195万円から329万9000円までの場合税率は10%で、控除額が9万7500円になります。
ただし、所得税は、毎月の給料や報酬の受取り時に一定額を差し引いて納税される制度が採用されています。毎月の所得税の計算は「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて行います。たとえば、40歳未満で額面給料38万円の場合には、額面から健康保険料1万8829円、厚生年金保険料3万4770円、雇用保険料2090円を控除した後の金額と扶養親族の数が交わるところで税額が決まります。
今回の例では、扶養親族がいない場合、源泉徴収税額は、1万380円になります。最終的には、他の所得控除も含めて年末調整によって所得税が再計算されます。
住民税
住民税は、お住まいの自治体に納める地方税で、市県民税と呼ばれることもあります。住民税の税率は10%ですが、一部異なる税率を用いて課税しているところがあります。住民税は、前年の所得に対して賦課されるため、新卒で就職した場合の1年目などは給料から住民税は差し引かれません。
前年の収入が月額38万円(年額456万円)で、40歳未満単身の場合の住民税の所得控除金額は、基礎控除33万円、社会保険料控除が約67万円、給与所得控除が約135万円なので合計235万円になります。住民税対象額が221万円なので、税額の10%の所得割と均等割の5000円を合わせたものが住民税になります。月額にすると約1万8800円になります。
住民税課税対象額=年収456万円-控除額235万円=221万円
住民税=所得割221万円×10%+均等割5000円=22万6000円
月額住民税の目安 22万6000円÷12か月=約1万8800円
給料の手取りの計算すると
手取り30万円を目指して月額38万円の給料をもらった場合を計算してみましょう。
月額収入…38万円
−健康保険料 1万8829円
−厚生年金保険料 3万4770円
−雇用保険料 2090円
−所得税 1万380円
−住民税 1万8800円
以上合計:29万5131円
月額収入38万円から税金や社会保険料を差し引くと、29万5131円で約30万円の手取りになりました。毎月かなりの税金や社会保険料を納めていることに改めて気づくと思います。ちなみに、国税庁の令和5年分民間給与実態統計調査によれば、給与所得者の平均給与は460万円でした。月額38万円の給料の合計額とほぼ同じ金額です。
どちらかというと会社員は、給料の額面より振り込まれた手取りの金額に目を奪われてしまいがちです。会社員が手取り収入を増やすには、副業をするか、所得控除や税額控除を利用して税金を減らすなどの方法があります。
手取りは生活費の目安になります。給料から差し引かれる税金や社会保険料の内容を知り、生活設計に役立てていきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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