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24/02/17

相続・税金・年金

年金受給者でも確定申告で還付金がもらえる事例7選

年金受給者でも確定申告で還付金がもらえる事例7選

公的年金は、原則として65歳になるともらえます。働かなくても生涯にわたってお金がもらえるのはありがたいですが、年金は「雑所得」ですので、所得税・住民税の課税対象になります。今回は、年金受給者の確定申告について説明します。確定申告をすれば税金を還付してもらえるケースがあることも知っておきましょう。

年金受給者の所得税は源泉徴収されている

公的年金にかかる所得税は、年金をもらう時に源泉徴収されています。源泉徴収が行われている人は、65歳未満では108万円超、65歳以上では158万円超の年金をもらっている人です。年金受給額が少ない場合には税金はかからないため、源泉徴収もありません。

給料にも源泉徴収の仕組みがあることからわかると思いますが、その年の収入は1年終わらないと確定しません。源泉徴収される所得税は仮の金額なので、給料については会社で年末に過不足を調整する年末調整が行われます。

一方、年金については年末調整の仕組みはありません。所得税の過不足を調整するためには、確定申告をする必要があります。しかし、高齢の年金受給者が毎年確定申告をするのは負担になり、現実的ではありません。そのため、公的年金には「確定申告不要制度」が設けられています。

確定申告不要制度とは?

公的年金の確定申告不要制度とは、一定の条件をみたす年金受給者について、確定申告をしなくてもよいとする制度です。

●確定申告不要制度の対象者

確定申告不要制度が利用できるのは、次の(1)(2)のいずれにも該当する人です。

(1) 公的年金等(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金など)の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となっている

(2) 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(給与所得、民間の個人年金など)が20万円以下である

●年金受給者で確定申告しなければならない人は?

年金受給者のうち確定申告義務があるのは、年間400万円を超える年金をもらっている人や年金以外の所得が年間20万円を超える人です。これらの人が確定申告を怠ると、ペナルティを受けることになります。

●住民税の申告は必要な場合がある

源泉徴収で納めているのは所得税ですが、年金には住民税もかかります。公的年金以外の所得がある人は、所得税の確定申告が不要であっても、住民税の申告は必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市町村の役所に確認してください。

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確定申告すれば還付金がもらえる人も!

確定申告不要制度の対象者に該当しても、税金を納め過ぎになっている場合には、確定申告により税金の還付を受けられます。税金が納め過ぎになる理由は、本来受けられる控除が適用されていないことが理由です。

税金を計算する際の控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。所得控除は税率をかける前の所得から控除できるものですが、税額控除は税率をかけた後の税額から控除できるものです。

所得控除には全部で15種類あり、人的控除と物的控除に分かれます。

<人的控除と物的控除>

筆者作成

年金受給者の場合、基礎控除と社会保険料控除については、自動的に適用されます。基礎控除以外の人的控除については、毎年提出する「扶養親族等申告書」で控除の適用を申告する必要があります。扶養親族等申告書で申告した控除については、源泉徴収に反映されます。

一方、社会保険料控除以外の物的控除については、扶養親族等申告書では申告できず、源泉徴収の段階では反映されていません。適用を受けるためには、確定申告が必要になります。

税額控除を受ける場合にも、確定申告しなければなりません。住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)、配当控除などは、税額控除に該当します。

以下、年金受給者が確定申告をすることにより還付金が受けられる7つの事例を紹介しますので参考にしてください。

●確定申告したら得する例1:医療費を多く払った

1年間に負担した医療費が一定額を超えると、医療費控除が受けられます。医療費を多く払っていれば、確定申告で医療費控除を適用することにより、還付金がもらえます。

医療費控除の金額の計算式は次のとおりです。

医療費控除額
=(年間に支払った医療費の総額)-(保険金などで補てんされる金額)-10万円*
*所得の合計額が200万円未満の人は所得の合計額の5%

上の計算式より、医療費控除を受けられるのは、もらった保険金等を除いた年間の医療費負担額が次のいずれかを超えた場合です。

(ア) 10万円
(イ) 所得の合計額の5%(※所得の合計額200万円未満の場合)

医療費控除が受けられるのは、かかった医療費が年間10万円以上と認識している人が多いでしょう。しかし、年金受給者の場合には、年間10万円未満の医療費でも医療費控除が受けられる可能性があります。老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた年金受給額(年額)の平均は175万円程度。収入が年金のみの人は(イ)に該当するケースが多いからです。

たとえば、65歳以上で収入が公的年金180万円のみの人のケースで考えてみましょう。所得金額を計算するとき、年金収入からは公的年金等控除を差し引きできます。年金収入180万円の公的年金控除は110万円なので、所得は70万円です。この場合、上の(イ)に該当し、年間の医療費負担が70万円の5%である3万5000円を超えると医療費控除が受けられます。

この例で、仮に年間の医療費負担が8万円だったとすると、

8万円(医療費負担額)-3万5000円(所得金額の5%)=4万5000円

となり、4万5000円の医療費控除が受けられます。

●確定申告したら得する例2:生命保険や地震保険の保険料を払っている

生命保険、介護保険、医療保険、個人年金保険に加入して保険料を負担している場合、生命保険料控除が受けられます。また、地震保険の保険料を払っている場合には、地震保険料控除の対象となります。いずれも控除額に上限はありますが、年間に払った保険料を所得から差し引きできます。

生命保険料控除には旧制度と新制度があり、契約日によって適用される制度が異なります。2012年(平成24年)1月1日以降の契約を対象とする新制度の場合、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料のそれぞれで4万円まで控除可能なので、最大12万円の控除が受けられます。また、地震保険料控除が受けられる場合には、控除額は最大5万円です。

●確定申告したら得する例3:無職の子供の国民年金保険料を払っている

社会保険料を払った場合、社会保険料控除が受けられます。自分の社会保険料だけでなく、生計同一の家族の社会保険料を負担した場合にも社会保険料控除の対象となります。社会保険料控除については、控除額の上限はなく、支払った社会保険料の全額が対象となります。

年金受給者も社会保険料として国民健康保険料や介護保険料を負担しており、これらの保険料は年金から特別徴収(天引き)されています。特別徴収されている年金受給者自身の社会保険料については、源泉徴収の際に社会保険料控除が適用されています。一方、年金受給者が家族の社会保険料を負担した場合には、確定申告しなければ社会保険料控除が適用されません。

たとえば、大学生の子供がいる場合、親が子供の国民年金保険料を立て替えて払うケースも少なくないでしょう。国民年金保険料は1か月あたり1万6520万円(令和5年度)なので、子供1人の国民年金保険料1年分を払うと約20万円を所得から控除できます。

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●確定申告したら得する例4:マイホームの購入やリフォームをした

自宅を新築・取得・増改築等して住宅ローンを払っている場合、要件をみたせば住宅ローン控除が受けられます。住宅ローン控除は税額控除の一つで、控除額を所得税額から(控除しきれない分は一部住民税額から)そのまま控除できます。2022年度(令和4年度)以降の入居なら年末時点の借入残高の0.7%を控除できるので、仮に借入残高を500万円とすると税金が3万5000円還付されることになります。

なお、省エネ工事やバリアフリー改修工事などを施した場合には、住宅ローンを組んでいなくても、要件をみたせば住宅特定改修特別税額控除が受けられます。この場合にも、確定申告すれば還付金がもらえます。

●確定申告したら得する例5:扶養親族等申告書を提出し忘れた

年金受給者に配偶者や扶養している親族がいる場合、配偶者控除や扶養控除を受けるには、扶養親族等申告書の提出が必要です。扶養親族等申告書は毎年9月頃郵送で届きますが、提出し忘れると控除の適用をしてもらえません。たとえば、配偶者控除の金額は38万円(配偶者が70歳以上の場合には48万円)ですが、その分が所得から差し引きされずに税金が計算されてしまいます。

扶養親族等申告書を出し忘れると、配偶者控除や扶養控除を適用せずに源泉徴収が行われてしまいます。確定申告書を提出すれば、控除を適用して税金を再計算できるため、還付金を受け取れます。

●確定申告したら得する例6:ふるさと納税をした

ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体に寄付ができる制度です。多くの自治体からは、寄付のお礼として、地域の特産品などの返礼品をもらえます。ふるさと納税をすれば寄附金控除の対象となり、寄付額のうち2000円を超える部分が、所得税・住民税から控除されます。つまり、実質2000円の負担で返礼品をもらえる仕組みになっています。

所得税・住民税の課税対象になっている年金受給者がふるさと納税をした場合、寄附金控除が受けられます。この場合、確定申告をすれば、還付金を受け取れます。

なお、ふるさと納税で寄付した自治体の数が5以下の場合には、確定申告する以外に、ワンストップ特例を利用する方法もあります。ワンストップ特例とは、寄付先の自治体に必要書類を送るだけで、住民税からふるさと納税の控除が受けられる制度です。

ワンストップ特例が利用できるのは、確定申告義務がない人です。確定申告義務がある人(年金収入が年間400万円を超える人や年金以外の所得が20万円を超える人)は、寄附金控除も確定申告で適用を受けることになります。

ふるさと納税で寄付した自治体が6以上になった場合にも、ワンストップ特例は利用できないため、還付金をもらうには確定申告が必要です。

●確定申告したら得する例7:年の途中で退職して年末調整を受けていない

定年退職後、年金受給者となってからも、再雇用やアルバイトで働くケースは多いでしょう。給与所得に関しては、12月末まで勤務していれば、勤務先が年末調整を行って税金の過不足を精算してくれます。

一方、年の途中で退職した場合には、年末調整を受ける機会がありません。そのままでは、毎月の給与から源泉徴収された所得税が納め過ぎになってしまうケースがほとんどです。税金を還付してもらうためには、確定申告が必要です。

確定申告で税金はどれくらい戻ってくる?

年金収入のみの人の場合、所得税率は通常は5%です。仮に確定申告で30万円分の控除を追加したとすると、30万円の5%である1万5000円程度の還付が受けられます。 なお、住宅ローン控除などの税額控除については、控除額がそのまま還付されます。

●5年以内なら還付を請求できる

払い過ぎている税金を還付してもらうための確定申告(還付申告)は、対象となる年の翌年1月1日から5年間可能です。過去5年以内に還付金が発生する年がないか確認してみましょう。

収入が公的年金だけでも税金が安くならないか確認を

収入が公的年金だけの人はほとんど確定申告不要制度の対象なので、確定申告の手間は発生しません。ただし、確定申告すれば還付金がもらえるケースもありますので、税金が安くならないか確認してみるのがおすすめです。

森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー

Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。

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