24/11/08
【新NISA】累進配当株、増配株、高配当株って何がどう違うの?
新NISAのメリットは、生涯にわたって得られた利益に税金がかからないことです。売買差益(キャピタルゲイン)だけでなく、株を保有していると定期的に受け取れる配当金(インカムゲイン)も非課税で受け取ることができます。
売買差益を狙った投資は、売買タイミングを見極める必要があるため難しく、手間がかかります。いっぽう、配当金目的の投資であれば、株を持っているだけで定期的に収入が得られます。新NISAでは生涯にわたって配当金が非課税となるため、最近、配当金を出す株に注目が集まっています。
そこで今回は、配当金を出す株を購入する際に押さえておきたい3つの言葉「累進配当株」「増配株」「高配当株」について解説します。
累進配当株・増配株・高配当株の違いをチェック
累進配当株・増配株・高配当株はいずれも、各銘柄の配当金の特徴を示した言葉です。
●累進配当株
累進配当株とは、一定期間配当金の水準を下げない、または毎年増額することを目指している株のことをいいます。累進配当を宣言している会社は、今後も株主に一定以上の配当金を支払うことができる見込みがある会社ということですから、業績が良く安定していると考えられるでしょう。
会社の決算短信などの資料に「累進配当を実施」などとあれば、累進配当を目指している銘柄です。探しにくいようであれば、日本経済新聞社が算出している「日経累進配当株指数」の銘柄一覧を参考にするとよいでしょう。日経累進配当株指数は、累進配当を10年以上連続して続けている株のうち、予想配当利回りが高い30銘柄の株価で構成されています。
●増配株
増配当株は、前の期よりも配当金の額が増えている株のことです。累進配当株と似ていますが、連続ではなくても、一つ前の期より配当金の額が増額されていれば増配株に該当します。
増配株のなかでも、何年も連続して増配している株のことを連続増配株といいます。連続して増配できるということは、それだけ会社の業績が安定していて、年々成長していることを表します。保有しているだけでもらえる配当金の額が年々増えるのですから、うれしいですよね。
日本の連続増配株としては花王(4452)が有名。本稿執筆時点で34年連続での増配を達成しています。また、米国には60年以上も増配を続ける銘柄もあります。
増配株を株価が安いうちに購入し、長期保有していれば、自分にとっての配当利回りが上昇することもあります。たとえば、株価1000円で配当金が30円もらえる銘柄を購入・保有していたところ、増配が続いて配当金が60円になったという場合、自分にとっての配当利回りは3%→6%に上昇したことになります。
●高配当株
高配当株とは、配当利回りが高い株のことをいいます。配当利回りは「株価に対し配当金がどれくらいの割合にあたるかを示した値」で、1株あたりの配当金額を株価で割って求めます。一般的には、配当利回りが3%を超えると高配当株といわれます。
累進配当株・増配株と、高配当株は似ているように思えるかもしれません。累進配当株や増配株は配当金額そのものに着目しているのに対し、高配当株は株価と配当金額の比率に着目しているのが違いといえます。
累進配当株、増配株、高配当株の注意点は?
累進配当株、増配株、高配当株はいずれも、高い配当金を得る期待ができる投資先です。新NISAで購入して、そのまま保有を続けることで、非課税でその配当金を受け取り続けることができるでしょう。
ただ、投資には絶対はありません。以下のような点には注意しましょう。
●累進配当・増配は今後も続くとは限らない
累進配当を目指す銘柄や増配を続ける銘柄は、今後も累進配当や増配を続けようとするでしょう。しかし、業績が悪化したり何らかのショックがあったりして、経営環境が変わってしまった場合は、累進配当や連続増配が途切れてしまう可能性があります。
実際、コロナショックのときには日本エスコン(8892)が累進配当を一時撤回。日本たばこ産業(2914)もそれまで16期続いてきた連続増配が途切れました。
累進配当・増配が続かないとなれば、配当金が増えていきません。さらに、配当金を減らす「減配」や配当金をなくす「無配」となるおそれもあります。
●高配当だからといって飛びつくのは危険
高配当株は単なる配当金額の多さを示したものではなく、株価に対して配当金額がどれくらい多いかを測る指標ですから、一見すると最も良い選択肢に思えるかもしれません。たしかに、株価が同じで配当利回りが2%のA株と5%のB株ならば、B株のほうが多くの配当金を受け取れるため、有利といえるでしょう。
ただし、高配当株を選ぶ際に注意しておかねばならない点があります。それは、配当利回りが高い株には、配当金額が高いわけではなく「株価が下がったことにより相対的に配当金の比率が上がってしまった株」も含まれているということです。
株価が急落したことにより高配当株となった銘柄の会社は、業績が悪く、事業や財務状態に問題を抱えている可能性があります。業績が悪く株価が低迷している会社は、配当金の水準が維持できずのちに金額を減らすリスクがあります。
投資先の会社の業績を確認しよう
累進配当や増配が続かず、配当金を減らす「減配」・配当金をなくす「無配」となるということは、それだけ会社の経営が安定しなくなってきていることを表します。また、株価が低迷することで配当利回りが上昇している銘柄も、配当金をなくしてしまう可能性があります。こうした銘柄を避けるには、投資先の会社の業績を確認することが欠かせません。
少なくとも
・増収増益が続いているか(売上高や営業利益が増加し続けているか)
・効率よく稼げているか(営業利益率や経常利益率が同業他社より高いか)
・1株あたり利益が増えているか(会社が成長しているか)
・自己資本比率が高いか(高いほど借金が少なくて倒産のリスクが少ない)
といったところは注目しておきたいところです。
今回は、配当金目的で株を行う前に押さえておきたい「累進配当株」「増配株」「高配当株」について解説しました。
高配当株は配当利回りが高くメリットが大きいように思えますが、なぜ配当利回りが高いのか、その理由をしっかり調べて吟味しなければなりません。その点、増配株や累進配当株は比較的安定していますが、いつまでも業績がいいとは限りません。安心して配当金をもらい続けるためにも、投資先の会社をよく吟味しましょう。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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