21/07/19
年金保険料を直近1年しか払っていない人でも、亡くなったときの遺族への保障は手厚い
公的年金には、一家を支える働き手が亡くなった際、配偶者や子供に支給される遺族年金があることをご存知でしょうか。一家の大黒柱が亡くなるアクシデントは、いつ起こるかわかりません。そんなとき、年金未納となる期間があれば、無事に受け取れるかどうかが気になります。今回は、年金未納があっても、直近1年だけ年金保険を支払っていれば、受け取れる特例措置について紹介します。
遺族年金も2階建て構造
公的年金は、1階が国民年金(基礎年金)、2階が厚生年金の2階建て構造になっています。高齢になったときの老齢年金はもちろん、障害を負ったときの障害年金、亡くなったときに遺族が受け取る遺族年金も、ここから支払われます。
会社員や公務員など厚生年金に加入している人の遺族年金には、1階の遺族基礎年金と2階の遺族厚生年金があります。個人事業主や自営業などであれば、1階の遺族基礎年金のみとなります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれについて、詳しく紹介します。
遺族基礎年金の支給を受けるには
遺族基礎年金を受け取るための保険料納付要件は、原則として、被保険者期間のうちの、保険料納付済期間や免除期間などの合計が3分の2以上であることです。
支給対象となるのは、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族である、子のいる配偶者、または子です。配偶者には、子のある妻に限らず、子のある夫も含まれます。子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までが対象となり、かつ、婚姻していないことが要件です。
遺族基礎年金額は、定額の78万900円になります。さらに、該当する第1子、第2子については、1人あたり22万4700円が加算されます。また、第3子からであれば、1人あたり7万4900円が加算されることになります(以上、金額はすべて2021年度のもの)。
遺族厚生年金の支給を受けるには
遺族厚生年金を受け取るための保険料納付要件の原則は、上述の遺族基礎年金と同様です。支給対象は、亡くなった方によって生計維持関係があった遺族となりますが、基礎年金よりも範囲が広がります。具体的には、次のような優先順位があります。
●遺族厚生年金の優先順位
第1順位:配偶者または子
第2順位:父母
第3順位:孫
第4順位:祖父母
配偶者は、夫・妻ともに含まれており、遺族基礎年金のように、子供の有無は問われません。ただし、夫の場合、妻の死亡時に55歳以上であることが要件となります。また、子、孫は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までで、かつ、婚姻していないことが必要です。そして、父母、祖父母が受給する場合は、夫と同じく年齢が55歳以上であることが必要です。
遺族厚生の年金額は、亡くなった方の厚生年金の被保険者期間を基に、給与額の平均となる報酬比例部分の4分の3です。このように、遺族厚生年金は、納めた期間や受け取った給与の平均によって決まるため、個々に支給額が異なります。
遺族年金は、一家の大黒柱が亡くなった後、残された遺族の生活を支えることを目的にしています。そのため、保険料納付要件を満たせば、保障内容は、とても充実しているといえます。
2026年3月末日までなら「特例」がある
注意したいのが、個人事業主や自営業などの年金保険料の未払いです。厚生年金の被保険者である会社員や公務員は、給与から年金保険料を差引かれるため、未払いとなる可能性は低いでしょう。しかし、個人事業主や自営業などの場合は、自分で年金保険料を支払うため、うっかり未払いとなる可能性があります。もし、保険料の未納期間などがあり、その際、免除の手続きなどしていない場合であれば、原則を満たせない場合があります。
しかし、そのような場合でも、2026年3月末日までであれば、特例があります。亡くなった方が65歳未満の場合、直近1年間保険料を納めていれば、遺族基礎年金も遺族厚生年金も受け取ることができるのです(死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの1年間が対象となります)。
しかも、遺族厚生年金の金額は「300ヶ月(25年)加入した」ものとして計算されます。遺族厚生年金は、被保険者期間の長さが受け取る額に影響するため、25年とみなされるのは有利な条件といえます。厚生年金の被保険者期間が短い場合でも、ある程度まとまった金額になる可能性があり安心できます。
年金はもしもの時の備えではない
遺族年金は、もしものとき、残された家族にお金を用意できます。遺族への保障は手厚いといえるでしょう。しかし、公的年金には、遺族年金以外に老齢年金や障害年金などもあります。老後の生活の基礎となる老齢年金には、上述した特例などはありません。
もしもがなく(ないほうがいいですが)、老後にまとまった年金を受け取りたいと考えるのであれば、しっかり年金保険を納める必要があります。もし、保険料の納付月数が少ないままであれば、受け取る年金も必然的に少なくなってしまいます。いろんな事情で支払えないのであれば、保険料の免除を申請するなどの手続きをすることも必要です。遺族年金にはたまたま特例がありますが、特例だけに頼るのではなく、豊かな老後を支える年金を備えようという意識で、年金保険を納めることが大切です。
まとめ
一家を支える大黒柱に、もしものことがあっても、直近1年間の年金保険を納めておけば、遺族年金を受け取ることができます。しかし、公的年金は、遺族年金だけではなく、老齢年金、障害年金などもあります。すべての年金に備えるには、毎月しっかり納めておくことがポイントになります。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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