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25/01/04

相続・税金・年金

所得税・住民税が一切かからない年金6選

所得税・住民税が一切かからない年金6選

収入があれば、通常は所得税や住民税といった税金が発生します。老後の生活を支える老齢年金も例外ではなく、一定額以上の年金収入には税金がかかります。しかし、中には税金が一切かからない年金も存在します。また、老齢年金でも所得税・住民税が非課税になる収入基準が設けられています。そこで今回は、所得税・住民税が一切かからない年金にはどんなものがあるか、所得税や住民税が非課税になる収入基準はいくらかを解説します。

遺族年金には税金がかからない

遺族年金は、公的年金の被保険者が亡くなったときに、その被保険者が生計を維持していた遺族が受け取る年金のことをいいます。
遺族年金は、法律で「公課を課することができない」(国民年金法25条・厚生年金保険法41条2項)とされているため、非課税です。そのため、どれだけ多くの額を受け取っても税金はかかりません。

遺族年金には、遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金があります。それぞれについて、詳しく解説します。

●非課税の年金①遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等であった人が亡くなったときに、その被保険者の遺族に対して支払われる年金です。

遺族基礎年金が支払われるには、被保険者等であった人が亡くなった時点で、国民年金保険料の納付済み、または免除期間および合算対象期間が25年以上という要件などを満たす必要があります。

遺族基礎年金を受け取れる対象は、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が対象となります。もし配偶者に子供がいなければ、遺族基礎年金は全く支給されません。そのため、遺族の範囲が限定的な年金といえます。

実際に支給される遺族年金は、2024年(令和6)年4月分から以下のとおりです。

【子のある配偶者】

・昭和31年4月2日以後生まれの方:81万6000円+子の加算額
・昭和31年4月1日以前生まれの方:81万3700円+子の加算額
子の加算額は、第1子・第2子は、1人につき23万4800円、第3子以降は、1人につき7万8300円になります。

●非課税の年金②遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者等であった人が亡くなったときに、その被保険者の遺族に対して支払われる年金です。

遺族厚生年金が支払われるには、遺族厚生年金の受給権者であった方が亡くなった時点で、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方などの要件が必要です。また、厚生年金保険の被保険者である方、障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給権者などは、一定期間の保険料が未納でないなどの要件を満たす必要があります。

遺族厚生年金を受給できる遺族は、遺族基礎年金よりも範囲が広く、優先順位があります。

1:子のある配偶者
2:子(18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子)
3:子のない配偶者(30歳未満の妻は5年間のみ、夫は原則55歳以上(受給開始は60歳から)
4:父母(55歳以上(受給開始は60歳から)
5:孫(子と同じ条件)
6:祖父母(55歳以上(受給開始は60歳から)

以上のうち、もっとも優先順位の高い方が受け取れます。いずれの場合も、亡くなった人に、生計を維持されていることが前提です。

遺族厚生年金の受給額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。報酬比例のため、個々の給与によって受け取る額に違いがあります。

●非課税の年金③寡婦年金

寡婦年金は、夫を亡くした妻に対して支給される遺族年金の一種です。国民年金から支給されます。

遺族基礎年金は、子供のいる配偶者または子供に対して支給されるものです。しかし、夫が死亡した当時に子供がいなければ、遺族基礎年金は支給されません。亡くなった夫が、国民年金保険料を10年以上にわたり納付していたとしても、自分の老齢基礎年金も受け取らず、子供がいないことで妻も受け取れないとなると、今まで払った国民年金保険料が掛け捨てになってしまいます。この掛け捨てを防止するため、一定の要件を満たした妻に対して支払われるのが寡婦年金なのです。

寡婦年金を受け取るためには、以下の5つの要件を満たす必要があります。

① 夫の死亡日の前日において、国民年金保険料を支払った期間と保険料免除期間を合算した期間が10年以上あること。
② 妻は、夫の死亡当時、夫に生計維持されていたこと。
③ 妻は、夫の死亡当時、夫との婚姻関係(事実婚含む)が10年以上あること。
④ 妻の年齢が65歳未満であること。
⑤ 夫に生前、老齢基礎年金や障害基礎年金が支給されていないこと。

妻が上記の要件を満たした場合、60~65歳になるまでの期間、寡婦年金が支給されます。もし、夫が死亡した際、妻の年齢が55歳であれば、60歳になるまでの5年間は支給されず、60歳になるまで待つことになります。

また、夫が死亡した際、妻の年齢が62歳であれば、65歳までの3年間だけの支給となり、5年間よりも少なくなります。なお、支給される寡婦年金の受給額の目安は「夫が納めた国民保険料期間に応じて計算した老齢基礎年金額の4分の3」です。

●非課税の年金④死亡一時金

死亡一時金は、寡婦年金と同じく、国民年金から支給される遺族年金の一種です。

死亡一時金は、国民年金保険料を一定の期間納めた被保険者が死亡した際、遺族に対して遺族基礎年金を支給できないときに支給されます。この場合も、寡婦年金と同様に、国民年金保険料が掛け捨てにならないための防止するための給付です。

死亡一時金を支給されるには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

① 被保険者は、死亡日の前日までに、国民年金保険料を支払った期間などが3年以上あること。
② 被保険者の生前、老齢基礎年金や障害基礎年金を支給されていないこと。
③ 被保険者の遺族に遺族基礎年金が支給されていないこと。

死亡一時金が支給される遺族となるのは、死亡した被保険者と生計を同じくしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹の中で優先順位の高い方に支給されます。
支給される死亡一時金は、被保険者が納付した国民年金保険料の月数に応じて、12~32万円ほどになります。もし、寡婦年金も受けることができる場合であれば、どちらか一方を選択することになります。

障害年金にも税金がかからない

障害年金は、病気やケガで障害認定を受けた際に支給される年金です。この障害年金も、遺族年金と同じく非課税です。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。

●非課税の年金⑤障害基礎年金

障害年金とは、病気やケガなどで障害が残ってしまった時に、障害の程度ごとに支払われる年金です。

障害基礎年金が支払われるには、ケガや病気になり初めて医師などの診察を受けた日(初診日)が属する月の前々月までの国民年金保険料を支払う期間において、3分の2以上支払われることなどが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。
受給要件を満たしたうえで、初診日から起算して1年6ヶ月が過ぎたときなどに、障害の程度が1級または2級に該当していれば、障害基礎年金が支払われます。

障害基礎年金の支給額は、2024年(令和6)年4月分から以下のとおりです。

【1級】

・昭和31年4月2日以後生まれの方:102万円+子の加算額
・昭和31年4月1日以前生まれの方:101万7125円+子の加算額

【2級】

・昭和31年4月2日以後生まれの方:81万6000円+子の加算額
・昭和31年4月1日以前生まれの方:81万3700円+子の加算額

子の加算額は、加算の要件に該当する子供1~2人目には23万4800円、3人目以降には、一人あたり7万8300円となります。
子の加算額は、障害基礎年金を受け取る人に生計を維持されている子(18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子)がいるときに加算されます。

●非課税の年金⑥障害厚生年金

障害厚生年金は、厚生年金の被保険者等であった人が、病気やケガで障害の状態になった時に、障害の程度に応じて支払われる年金です。障害厚生年金の保険料納付要件は、前述の国民年金による障害基礎年金の場合と同じになります。さらに、初診日から起算し、1年6ヶ月が過ぎたときなどに、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当している必要があります。
障害厚生年金で支給される金額は以下のとおり計算されます。

【1級】

・(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(23万4800円)〕

【2級】

・(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(23万4800円)〕

【3級】

・報酬比例の年金額

3級の最低保証額は以下のとおり決まっています。
・昭和31年4月2日以後生まれの方:61万2000 円
・昭和31年4月1日以前生まれの方:61万300 円

毎月の給料やボーナスの金額や厚生年金の加入期間などが基準(報酬比例)となるため、個々に違いがあります。3級と2級は報酬比例の年金額、1級は報酬比例の年金額の1.25倍です。さらに、1級・2級においては、生計を維持している配偶者の年齢が65歳未満であれば、加給年金額も加算されます。

また、障害厚生年金の基準より軽い障害が残った場合には、障害手当金が受け取れる場合もあります。障害手当金は、報酬比例の年金の2年分が一時金として支払われます。障害手当金の最低保障額は122万4000円(昭和31年4月1日以前に生まれた方は122万600円)です。

通常の老齢年金で所得税・住民税が非課税になる金額

公的年金のうち、遺族年金や障害年金は非課税ですが、老齢年金は雑所得として所得税や住民税の課税対象になります。しかし、受給する年金収入が一定以下であれば非課税となります。

●所得税が非課税となる基準

収入が老齢年金だけの人は、一定額を超えると所得税がかかります。しかし、所得税は「基礎控除」と「公的年金等控除」を差し引いた後の金額で計算されるため、以下の条件を満たせば所得税はかかりません。

【65歳未満の場合】

・基礎控除48万円+公的年金等控除60万円=年金収入108万円以下で非課税

【65歳以上の場合】

・基礎控除48万円+公的年金等控除110万円=年金収入158万円以下で非課税

公的年金控除は、65歳以上になれば、控除額が大きくなるため非課税となる年金収入の基準額も高くなります。
さらに、所得控除には、扶養控除や社会保険料控除なども利用できれば、非課税となる年金収入の上限の範囲が広がります。

●住民税が非課税となる基準

住民税については単身世帯、夫婦世帯それぞれの場合で金額が異なります。今回は、横浜市を例に収入金額を確認しましょう。

【単身者の場合】

65歳以上:年金収入が年間155万円以下
65歳未満:年金収入が年間105万円以下

【配偶者がいる方の場合】

65歳以上:年金収入が年間211万円以下
65歳未満:年金収入が年間171万3333円以下

これらの基準が、年金収入に対する市民税・県民税が非課税となる目安です。なお、上記の目安は年金収入のみの場合として計算したものです。また、配偶者がいる方については、 配偶者に収入が無いことを前提にした計算です。

住民税が非課税になる目安は、自治体ごとに多少の違いがあります。お住まいの自治体のHPなどで詳しい計算方法を確認するようにしてください。

iDeCoや企業年金で税金が安くできることも

iDeCoや企業年金(企業型確定拠出年金・確定給付企業年金など)を受け取るときには、退職金のようにまとめて一時金で受け取るか、年金として分割で受け取るかを選ぶことができます(併用できる場合もあります)。このとき、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、分割で受け取る場合は「公的年金等控除」という控除が受けられます。この枠内で受け取る分には非課税になりますし、仮に枠をオーバーしてしまったとしても、課税されるのはその超過分に対してだけですので、税金が安くできます。

税金を減らす工夫を

公的年金のうち、遺族年金・障害年金には、どんな場合も税金はかかりません。また、老齢年金も、一定額以下であれば税金はかかりません。さらに、退職所得控除や公的年金等控除は、税金の負担を軽くする優遇制度です。年金に限らず、税金は手取りの金額を少なくする要因ですので、できるだけ減らす工夫をしていきましょう。

舟本美子 ファイナンシャルプランナー

「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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