19/09/01
約半数が親の財産を把握していない…どんな問題・結末が待っているのか
夏休みを利用して帰省し、久しぶりにご両親に会った方もいらっしゃるでしょう。元気にはしているものの、これからいつまで自立した生活が続けられるのか不安を感じたかもしれません。もしこの先、親の財産のことを把握していないとしたら、想像以上にたいへんなことが起こる可能性があります。
親の財産のことは聞き出しにくい…資産管理・支援のきっかけは?
日本人の高齢化がますます進んでいます。厚生労働省の発表によれば、2018年の日本人の平均寿命が女性87.32歳、男性81.25歳と記録を更新しました。それとともに認知症や判断能力の低下が進んできた人も目立つようになり、親自身が自分の財産管理を十分に行なえなくなった場合の対応をどうするのかが問題になってきました。
こうした状況をふまえて、55~79歳のシニア世代の男女5225人に親の財産管理について、先ごろ明治安田総合研究所が「2019年 親の財産管理と金融リテラシーに関するシニア世代の意識と実態」の調査を行いました。
一般的に親に子どもから財産のことを直接聞くことは、財産をねらっているようで切り出すのが難しいと思われます。実際に親の財産の管理や支援をすることになった人も、その理由としてATMの操作・利用に支障が出てきたことや入院・介護施設に入所したことをあげています。
何かしら問題が表面化しないと人間はなかなか動かないものです。
親の財産の状況、どれくらい把握できていますか?
前出の明治安田総合研究所の調査では、預貯金、有価証券、保険に分けて親の財産の把握ができているかを尋ねています。
まず、預貯金については、子どもが50代の場合には把握している割合が低いのですが、年齢層が高くなるにつれて把握している(すべて把握している・おおよそ把握している)割合が高くなっています。60代後半では、女性のほうが男性にくらべ13.2ポイント低くなっています。
次に有価証券の状況ですが、預貯金にくらべてポイントが下がっています。50代後半では男女ともに3割強、60代後半では女性の約5割、男性の6割となっています。
最後に保険の状況では、50代後半では男女ともに約3割、60代後半では5割前後と、預貯金や有価証券ほど男女差はみられません。
この預貯金、有価証券、保険の状況をみてみると、有価証券や保険は預貯金にくらべると把握できている割合が低くなっています。金融機関の入出金のように外部から履歴がわかりにくいので、契約や取引がされていることに子ども世代が気づきにくいのでしょう。
親の財産の状況を知らないとどんな問題が起こりうるのか
親の財産の状況を知らないことが招くデメリットは計り知れないものがあります。
仮に離れて暮らしていて親の身体の状況変化に気づかないままで、親が認知症と診断されたとしましょう。認知症の程度にもよりますが、残念なことに会話がかみ合わないかもしれません。
子どもが親の資産の状況を何も知らなければ、親がどの金融機関のどこの支店と取引があるのかから調べなくてはなりません。最悪のケースでは、預貯金が引き出せないということになるかもしれません。いくら親子であっても、代理権がなければ、金融機関は定期預金の解約ですら応じてくれません。あてにしていたお金で入院費や入所費用が支払えないとなると、子どもが自らの費用を捻出することになります。
また、親が亡くなった場合はどうでしょう。亡くなった人の口座は、財産を確定するために凍結されます。その口座の凍結を解くためには、基本的に相続人全員の同意が必要です。
民法が改正され葬儀費用など一定の金額の引き出しができるようになるなど、条件は緩和されましたが、生活資金の口座は毎月の引き落としにも支障が出るので、迅速な対応が必要です。そうした場合に兄弟が協力せずに争う、残された親の判断能力が低下しているなどの事情があれば、話し合いそのものができません。
親の財産のどんなことを把握しておけばいいのか
親の財産の把握はまず、どんな資産と負債をもっているのかを知ることから始めます。
預貯金、不動産、保険、有価証券などに分けてどういう状況になっているのかを確認します。特にネット銀行やネット証券などは、本人でなければパスワードもあり、外部にわかりにくいものです。不動産は名義が共有や相続登記がされないままになっていないかなどにも注意してください。
保険に関しては、保険金の受取人が変更されておらず、困るケースをよく耳にします。また代理請求人の登録がされているのか、本人以外の連絡先の登録も確認しましょう。
その上で見直しが必要であれば、親子で話し合い、休眠口座の解約や有価証券や不動産の売却など現金化も検討します。
また判断能力が低下したときに備えて、どんな制度があるのか理解を深めておくとよいでしょう。財産を管理してもらう人をあらかじめ決めておく「任意後見」の契約や家族信託契約をしておくのも対策の一つです。こうした契約も本人の十分な判断能力があってこそできることです。契約内容の理解や契約書に署名できるかは特に重要なポイントです。
まとめ
親のお金のことを聞き出すきっかけがつかめない方は、もし入院することになったら保険の契約はあるのか、知り合いが親のことで大変だったということを話すことから始めるといいでしょう。親のことを心配している気持ちが伝われば、きっと心を開いてくれるはずです。
早めの対応で、「あの時聞いておけばよかった」と後悔することがないようにしたいものです。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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