22/02/14
働きながらもらう年金、減らされずに済む月収はどのくらい?
60歳以降も働く場合、収入額に応じて受け取れる年金が減らされるのをご存知でしょうか?一定以上の収入があると、本来受け取れる年金を全額もらうことができなくなるのです。今回は働きながらもらえる「在職老齢年金」のしくみを確認しながら、年金を減らされずに済む月収はどのくらいかを解説します。
「在職老齢年金」ではどのくらいの年金が減らされるのか
会社員がもらえる厚生年金には、60歳以上で一定以上の収入がある場合に年金額の一部または全額が減額される「在職老齢年金」という制度があります。あくまで厚生年金にかかわる制度なので、国民年金(老齢基礎年金)には影響ありません。
年金額が減額される基準は60代前半と60代後半で異なります。
●60代前半(65歳未満)の在職老齢年金
65歳未満で老齢厚生年金(特別支給の厚生年金)をもらっている場合、老齢厚生年金額と月収に応じて年金の一部が減額されます。
減額となる金額の計算方法は下表のとおりです。
・60代前半の在職老齢年金の計算方法
日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」を参考に筆者作成
基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以下なら年金は減らされずに済みます。一方、それを超える場合は超えた分の2分の1が減額されます。さらに総報酬月額相当額が47万円を超える場合には、その超えた分だけ年金が減額されます。
●60代後半(65歳以降)の在職老齢年金
60代後半の計算方法は、基本月額と総報酬月額相当額の合計で年金が減額されるかどうか決まります。具体的な計算方法は以下のとおりです。
・60代後半の在職老齢年金の計算方法
日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」を参考に筆者作成
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下なら全額支給、47万円を超えたら超えた分の2分の1が減額されます。65歳未満の計算方法よりシンプルですね。
以上より、働きながらもらう年金が減らされずに済む月収は、いくら年金を受け取るかによって変わることがわかります。
年金が減らされずに済む月収を計算してみよう!
ここでは例をあげて、どのくらいの月収(総報酬月額相当額)なら年金が減らされなくて済むのか、65歳未満と65歳以上のケースでざっくり計算してみましょう。
●65歳未満のケース
【計算の前提条件】
年齢:63歳
老齢厚生年金額:180万円(月額15万円)
【年金が減らされない月収】
28万円-(180万円÷12)
= 28万円-15万円
= 13万円
このケースだと老齢厚生年金の月額が15万円なので、月収13万円(ボーナスの月割り額含む)までなら年金は減らされなくて済みます。もらっている老齢厚生年金が月28万円以下であれば、28万円から老齢厚生年金額の月額を引いた金額が「年金が減らされない月収」となるのです。
いいかえれば、月収13万円を超えた場合は年金が減らされてしまうということです。人によっては、年金を減らされないようにするために、働き方をセーブするということもあるかもしれません。
●65歳以降のケース
【計算の前提条件】
年齢:65歳
老齢厚生年金額:240万円 (月額20万円)
【年金が減らされない月収】
47万円-(240万円÷12)
= 47万円-20万円
= 27万円
このケースでは老齢厚生年金の月額が20万円なので、47万円から20万円を引いた27万円が年金を減らされない月収の上限額です。65歳未満のケースより年金が減額される基準となる金額が19万円も多いため、より多くの月収をもらっても年金が減らされないことがわかります。
なお、上記の計算例はあくまでおおよその金額なので、詳しい金額を知りたい場合は年金事務所や街角の年金相談センターで相談してみましょう。
2022年4月以降は65歳未満の条件が緩和される
ご紹介したように、現在の在職老齢年金は65歳未満と65歳以上で老齢厚生年金が減らされる基準が異なります。しかし2022年4月以降は在職老齢年金の制度が改正され、65歳未満の年金が減額される基準が、65歳以上と同じ47万円に引き上げられる予定です。
つまり老齢厚生年金と月収の合計が47万円以下であれば、65歳未満でも働きながら年金を全額もらうことができるのです。この改正により、年金を減らされることを気にして働き方を抑えていた人がより積極的に働けるようになるでしょう。月収が増えればその分を資産形成にまわせるので、老後資金の不安解消にもつながります。
まとめ
高齢化社会に伴い、60歳以降の労働環境が整いつつある昨今。しかし会社員の人が60歳以降も働く場合、どの程度働くかによってもらえる年金額に大きく影響します。
2022年4月の法改正によって65歳未満の人の年金が減らされない月収が大幅に上がるので、働き方の選択肢が増えるでしょう。在職老齢年金のしくみを理解したうえで、60歳以降の働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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