22/02/10
夫が亡くなったら妻は年金をいくらもらえる?もらえる年金の種類は意外と多い
もしも夫が亡くなったとき、妻が受け取れる年金がどうなるのか気になりますね。特に、自分が65歳になって老齢年金を受け取れるようになった際、遺族年金はどうなるのでしょうか?そこで今回は、夫に先立たれ残された妻が受け取れる年金がどうなるのか、「共働き世帯」「専業主婦世帯」「自営業世帯」の3つのケースについて見ていきます。
夫が亡くなったときに受け取れる遺族年金
夫が先に亡くなったとき、残された妻が受け取れる年金は遺族年金です。この遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
●遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金や厚生年金の加入者が亡くなったとき、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上であることなどの要件を満たしている場合に、配偶者あるいは子が受け取れる年金です。子の定義は、18歳になった年度の3月31日までの子となっています。また、遺族基礎年金は20歳未満の障害等級が1級または2級の状態にある子がいる場合も同様に受け取ることができます。ただ、配偶者には年収850万円未満という所得制限があるので留意しておきましょう。
遺族基礎年金の年金額は、2021年4月からは「78万900円+子の加算額」となります。子の加算額は、1人目、2人目の子どもは22万4700円、3人目以降は7万4900円です。年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しが行なわれます。
●遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者であること、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上であることなどの要件を満たす場合に、配偶者や子など遺族が受け取れる年金です。受給には次のような優先順位があり、より順位の高い人が受給します。
1位 子のある妻・子のある55歳以上の夫
2位 子
3位 子のない妻、子のない55歳以上の夫
4位 55歳以上の父母
5位 孫
6位 55歳以上の祖父母
夫、父母、祖父母は55歳以上という年齢制限があり、かつ受給できるのは60歳からとなります。
遺族厚生年金の年金額は、次のように計算します。
・遺族厚生年金の年金額=(A+B)×3/4
A:2003年(平成15年)3月31日以前の加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月31日までの加入期間の月数
B:2003年4月1日以降の加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月1日以降の加入期間の月数
このとき、厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして年金額を計算します。
夫に先立たれた妻は、子がいれば遺族基礎年金を、夫が会社員であれば遺族厚生年金を受け取れることがわかりました。では、妻が65歳になり自身の老齢年金を受け取れるようになったとき、どれくらいの遺族年金を受給できるのか気になりますね。
そこで「共働き世帯」「専業主婦世帯」「自営業世帯」の3つのケースにおいて、妻自身の年金と遺族年金がどうなるか見ていきます。
共働き世帯の妻が受け取れる遺族厚生年金は減額になる?
亡くなった人が会社員の場合、遺族厚生年金は次の(1)(2)による計算で求めた額のうち、高いほうに決まります。
(1)(A+B)×3/4で求める年金額
A: 平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月31日までの加入期間の月数
B: 平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月1日以降の加入期間の月数
(2)(A+B)×3/4で求めた額の3分の2と、妻の老齢厚生年金の2分の1を合計した額
共働きの夫が亡くなったとき、遺された妻が受け取れる年金は、自身の老齢厚生年金は全額を受給できますが、遺族厚生年金は年金額が調整されます。どのように調整されるのかというと、遺族厚生年金のうち、妻の老齢厚生年金に相当する額が支給停止になるのです。
支給停止について、次の事例で見てみましょう。
・夫の遺族厚生年金:80万円
・妻の老齢厚生年金:100万円
このように妻の老齢厚生年金のほうが高額になるときは、夫の遺族厚生年金は支給停止となります。
この場合、妻が受け取れる年金は、「妻の老齢基礎年金+妻の老齢厚生年金100万円」です。
・夫の遺族厚生年金:120万円
・妻の老齢厚生年金:100万円
この場合、遺族厚生年金から妻の老齢厚生年金に相当する額が支給停止となります。
120万円-100万円=20万円
妻が受け取れる年金は、「妻の老齢基礎年金+老齢厚生年金100万円+遺族厚生年金20万円」となります。
会社員の夫が亡き後、専業主婦の妻が受け取れる年金は?
夫が会社員で先に亡くなった場合、専業主婦の妻は次の年金を受け取ることができます。
●中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、夫の死亡時に妻が40歳~65歳未満の場合、
・子のない妻
・子が18歳になった年度の3月31日に達し、遺族基礎年金の受給がなくなった妻
が受け取れるものです。
中高齢寡婦加算の額は、58万5700円(2021年度の場合)で、65歳になるまで加算されます。この額は毎年改定となります。
●老齢基礎年金+遺族厚生年金
専業主婦の場合、65歳からは自身の老齢基礎年金と夫の遺族厚生年金を全額受給できます。
自営業の夫が亡くなったときに受け取れる妻の年金は?
会社員の夫が亡くなれば遺族厚生年金が受け取れますが、自営業の夫が亡くなったときは、妻は自身の老齢基礎年金のみとなります。ただ、次の2つの年金のうち、どちらか一方を受け取ることができます。
●寡婦年金
寡婦年金は、国民年金に加入していた夫の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上のとき、婚姻期間が10年以上の妻が60歳~65歳になるまで受け取ることができる年金です。
受給できる年金額は、夫の加入期間のみで計算した老齢基礎年金の4分の3となります。
ただし、夫が老齢基礎年金もしくは障害基礎年金を受給したことがある場合、妻が老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は、寡婦年金を受給できません。
●死亡一時金
夫の死亡時、保険料納付済期間が36月以上(3年以上)あるときは、保険料の納付月数に応じて12万円~32万円の死亡一時金を受け取ることができます。また、夫が付加保険料も36月以上納めていたときは、死亡一時金に8,500円が加算されます。
ただし、夫が老齢基礎年金もしくは障害基礎年金を受給したことがある場合は、死亡一時金を受給できません。
また、死亡一時金は死亡した日の翌日から2年以内に請求しないと受給できなくなるので注意しましょう。
まとめ
夫に先立たれた妻は、夫の働き方や、妻自身の年齢・働き方により受給できる年金が変わってきます。共働きの妻は、遺族厚生年金が減額となる場合がありますが、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れるため、生活には大きな影響はないでしょう。
専業主婦の妻は、会社勤めをしたことがない場合は老齢基礎年金のみとなります。けれども、夫の遺族厚生年金や中高齢寡婦加算を受け取ることができるので、生活費と受給額のバランスを確認していくとよいでしょう。
夫が自営業の妻は、会社員の場合に比べると受給できる年金は少なくなります。そこで、付加保険料や国民年金基金などを活用して年金の積み増しを検討されることをおすすめします。
【関連記事もチェック】
・60歳以上で厚生年金に加入すると、国民年金が満額にできないって本当?
・国民年金保険料の「追納」がお得になるタイミング
・年6万円の「年金生活者支援給付金」が受け取れなくなるのはどんなときか
・年金受給者が確定申告で還付金がもらえて得する5つのケース
・年金受給者でも確定申告でお金が戻る! 1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」3つのチェックポイント
前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう