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23/03/13

家計・ライフ

65歳以降夫婦世帯に本当に必要な貯蓄はいくらなのか

65歳以降夫婦世帯に本当に必要な貯蓄はいくらなのか

65歳以降、夫婦2人の生活費はどれくらいかかるのか、そして今からどれくらいの貯蓄を準備すればいいのか気になりますね。将来の生活は予測できないので正確な金額はわかりませんが、65歳以上の平均的な生活費や年金額を知ることで、貯蓄のイメージが湧いてくるかもしれません。そこで今回は、65歳以上の収入と支出、年金額の平均月額をご紹介するとともに、必要な貯蓄額の目安を試算する方法と今からやっておきたいことをお伝えします。

65歳以上の収入と支出はどれくらい?

会社を定年退職した後、夫婦2人の生活に必要な生活費がどれくらいになるのか、その目安を知っておくと、心構えと事前の準備ができます。そこで65歳以上の夫婦は実際にどれくらいの生活費をかけているのか調べてみました。

●65歳以上で無職の夫婦世帯における収入と支出の平均(2022年)

総務省統計局「家計調査(家計収支編)」二人以上の世帯のうち無職世帯の「世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(2022年)」より筆者作成

このデータの詳細によると、実収入24万8858円のうち年金収入は20万2058円でした。パートやアルバイトなどで働いたり、家賃収入など収入を得る手段を持っていたりする人もいますが、多くの人にとって65歳以降の収入源は国からもらえる年金です。

ここで注目したいのは支出と可処分所得です。可処分所得とは、収入から税金や社会保険料を引いた所得のことで、いわゆる手取りになります。税金や社会保険料などの非消費支出の3万2606円は年金から天引きされて(年金が年額18万円未満の人は納付書による徴収となります)、手取り額は可処分所得の21万6253円となります。

気づいた方もいると思いますが、年金の手取りは21万6253円なのに、食費や光熱費などの消費支出は23万8919円です。この差額2万2666円は貯蓄などの取り崩しをしなければいけないことになります。つまり、老後資金は生活費の不足分を補う重要な財源になるのです。

もらえる年金の平均月額は?

上で紹介したとおり、総務省が公表する家計調査では、2022年の実収入は平均が24万8858円で、このうち年金収入は20万2058円との結果が出ています。しかし、すべての人が同じくらいの年金をもらえるわけではありません。働き方や国民年金保険料を納めた月数などによって年金額は変わります。

ここで年金の平均月額のデータを見てみましょう。こちらは厚生労働省が公表している2021年度のデータです。

●年金月額の平均

○老齢厚生年金
 ・65歳以上男性の平均月額:16万9006円
 ・65歳以上女性の平均月額:10万9261円
○老齢基礎年金:5万6368円
厚生労働省「2021年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より

たとえば、共働き世帯なら、妻が働いた期間にもよりますが、男女別の平均月額で試算すると、夫婦2人の年金額は以下のようになります。
16万9006円+10万9261円=27万8267円

また、専業主婦世帯の場合は以下の通りです。(妻の老齢厚生年金は無いと仮定)
 16万9006円+5万6368円=22万5374円

自営業者の場合、夫婦の年金は以下のようになります。
 5万6368円+5万6368円=11万2736円

上記はあくまでも2021年度の老齢厚生年金、老齢基礎年金の平均月額から算出したものなので、ご家庭によっては増減があるかもしれません。でも、夫婦の働き方によってもらえる年金額は大きく変わることがわかりますね。

ちなみに、2021年の家計調査(家計収支編)によると、65歳以上無職の夫婦世帯の消費支出は22万7585円でした。この数値と比較すると、共働き夫婦は年金額に余裕があるので、年金収入で生活費は賄えそうですが、専業主婦世帯や自営業者の場合は老後資金の準備を進める必要がありますね。

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老後も安定した生活をするために必要な貯蓄額はどれくらい?

老後資金の役割で最も重要なのは、不足する生活費の補てんです。他にも介護費用など見ておきたい費用はありますが、今回は生活費の補てんとしてどれくらいのお金が必要になるのか見ていきます。

生命保険文化センターが実施した「2022年度生活保障に関する調査《速報版》」では、次のような調査結果が出ています。

・老後の最低日常生活費の平均月額:23.2万円
・老後のゆとりのための上乗せ額の平均月額:14.8万円⇒日常生活費に換算すると、38万円

ここで年金の手取りを22万円として、生活費の不足分を試算してみましょう。

●最低日常生活費の月額が23.2万円の場合

 手取り22万円-生活費23.2万円=▲1.2万円
65歳から95歳まで30年間の不足分を試算
 不足分1.2万円×12ヶ月×30年=432万円

95歳まで生きると仮定すると、生活費の不足分を補うためには432万円の貯蓄が必要になります。

次に、ゆとりのある老後を送る場合も見てみましょう。

●ゆとりある老後のために必要な生活費の月額が38万円の場合

 手取り22万円-生活費38万円=▲16万円
65歳から95歳まで30年間の不足分を試算
 不足分16万円×12ヶ月×30年=5,760万円

ゆとりある老後を送りながら95歳まで生きると仮定すると、生活費の不足分を補うのに5,760万円もの貯蓄が必要になるのです。

老後も安定した生活を送るために必要な貯蓄額は、年金収入とライフプランによって大きく変わってきます。老後の生活費として目安となる金額を決めて、「ねんきん定期便」で年金見込額を確認します。生活費の目安と年金見込額の差額を求めて65歳から生きる年数(平均寿命を参考にするとよいです)を掛けると、生活費の補てんに必要な貯蓄額を割り出すことができます。

生活費の不足分を補うためにやっておきたいこと

これまで年金収入だけでは生活費が不足することをお伝えしてきました。では、不足する生活費を補うために何をすればいいのでしょうか?ここでは今からやっておきたいことをご紹介します。

●生活費の見直しをする

年金が収入源になる老後に向けて、できるだけ無駄な出費をなくしておきたいです。一番に見直しておきたいのは固定費です。特に保険料の見直しは必須です。加入している保険全般を見直しておきましょう。不要な保障の解約や減額、特約の見直しなどできることがあるかもしれません。
また、年を重ねるにつれ生活パターンや興味のあるものが変わることもあります。そこで不要なサブスクを解約したり、通信費のプランを見直したりして、支出を抑えられる方法を探してみましょう。

●NISAやiDeCoを活用する

老後資金の貯蓄では預貯金に頼るだけでなく、お金を増やすために資産運用も取り入れましょう。その際、税制優遇があるNISAやiDeCoを活用することをおすすめします。つみたてNISA(2024年以降はNISAのつみたて投資枠)やiDeCoで毎月少額ずつ運用すればリスクを軽減できるでしょう。iDeCoなら掛金全額が所得控除にもなります。

●生活習慣を見直す

私たちは、健康な期間が長くなればなるほど節約になります。健康なら医療費を使わずに済むし、介護が必要になる時期を遅らせることができるからです。健康を維持するには、日々の暮らし方が重要になります。栄養バランスの取れた食事、適度な運動、質のいい睡眠が健康づくりの基本となります。また、毎年健康診断を受けて身体の状態をチェックしておきたいですね。

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まとめ

今回は、65歳以降の収入と支出、年金の平均月額をご紹介しました。また、生活費の目安を決めて、ねんきん定期便で年金見込額を確認し、その差額を割り出すことで老後に必要な貯蓄額の目安が試算できるとお伝えしました。老後も安定した生活を送るためには、NISAやiDeCoを活用した資産運用で老後資金を準備することと、生活費や生活習慣の見直しが大事になります。いつまでも安心して暮らしていけるように、今からできることをできる範囲で進めていきましょうね。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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