25/02/19
平均年収「460万円」稼いでいる人は意外と少ない
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「日本の平均年収は460万円」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、この数字を実感できる人は、実はそれほど多くありません。というのも、「平均年収」というのは、収入を持つすべての人の合計額を人数で割った数値であり、必ずしも「真ん中の人の年収」を示しているわけではありません。実際には、一部の高所得者が平均値を引き上げる傾向があり、私たちの実感とはズレが生じやすいのです。では実際、平均年収460万円程度を稼いでいる人はどのくらいいるのでしょうか。平均年収の実態がどうなっているのか詳しくみてみましょう。
平均年収の実態とは?日本の平均年収は「460万円」
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は「460万円」とされています。男女別では、男性が「569万円」、女性が「316万円」です。この給与所得者の平均年齢は47.0歳、平均勤続年数は12.5年となっています。
ただし、この平均年収というのは、給与所得者全体の収入を合計して単純に割り算したものです。実態の年収分布はどうなっているのでしょうか。
●年収分布を見てみると…?
年収ごとの給与所得者数とその割合は次の通りです。
<年収ごとの給与所得者数と割合(2023年)>
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国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」より筆者作成
年収500万円以下の人は男性51.7%、女性85.0%、合計で66.1%となっています。この割合には「年収460万円〜500万円」の人も含んでいるので、それを差し引いて考えても、男性は45%程度、女性は80%程度が「平均年収460万円」に届いていないと考えられます。
「平均年収460万円」というと「みんな、意外と高い年収をもらっているな」と感じた方がいたかもしれません。ただ、平均はごく一部の高所得者が押し上げてしまいます。年収1000万円の以上の人も全体で5.5%いますし、2500万円超の人も0.3%います。こうした人たちが平均を押し上げるため、実際のところ460万円を得ている人はそれほど多くないのです。
平均年収に差が出る要因とは?
平均年収は、職業や雇用形態、勤務先の規模、働く業種などによっても大きく異なります。
●正社員 vs 非正社員の違いをみると
雇用形態の違いで平均年収をみてみると、正社員の平均年収が「530万円(男性594万円、女性413万円)」であるのに対して、非正社員の平均年収は「202万円(男性269万円、女性169万円)」。正社員と非正社員では、平均年収に300万円以上の大きな開きがあることがわかります。
●企業規模による違いをみると
企業規模で平均年収をみてみると、従業員10人未満の会社の場合の平均年収は「382万円(男性476万円、女性272万円)」です。一方、従業員5000人以上の事業所になると平均年収が「521万円(男性675万円、女性316万円)」となっています。
平均給与は、企業規模が大きい会社に勤める方が高い傾向にあることがわかります。
●業種別での違いをみると
さらに、業種別でも平均年収をみてみましょう。
<業種別の平均年収>
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国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」
高い業種を3つ挙げると、
・1位:電気・ガス・熱供給・水道業(775万円)
・2位:金融業,保険業(652万円)
・3位:情報通信業(649万円)
低い業種を3つ挙げると、
・1位:宿泊業,飲食サービス業(264万円)
・2位:農林水産・鉱業(333万円)
・3位:サービス業(378万円)
となっています。
業種別においても、平均給与は最大約500万円もの差が生まれることがわかります。
近年の平均年収はどうなっている?
日本のここ10年の平均年収についてもみてみましょう。
・2014年(平成26年):421万円
・2015年(平成27年):423万円
・2016年(平成28年):425万円
・2017年(平成29年):434万円
・2018年(平成30年):439万円
・2019年(令和元年):438万円
・2020年(令和2年):435万円
・2021年(令和3年):446万円
・2022年(令和4年):458万円
・2023年(令和5年):460万円
ここ10年間でいえば、約40万円と微増傾向にあります。
2024年12月時点の速報値によれば、一般労働者の所定内給与は33万6077円(2.6%増)、パートタイム労働者であれば、時間当たり給与が1380円(4.9%増)となり、高い伸びを記録しています。これは、人手不足による企業の賃上げ、最低賃金の引き上げ等が影響しているとみられます。嬉しい反面、家計においては物価上昇にアタマを悩ませる日々が続いています。この増加がこれからの生活にどれほど影響するのかは、引き続き注視する必要があるでしょう。
平均年収460万円の人は少ない
「平均年収460万円」と聞くと、実際にその水準にいる人が多いように感じますが、実はそうではありません。年収500万円以下の人が全体の66%を占め、年収1000万円以上の人はわずか5.5%。高所得者が平均値を押し上げているため、私たちが感じる「実感」とはズレがあるのです。
また、平均年収は働き方や会社の規模によっても大きく変わります。近年続いている賃金の上昇が今後も続くかどうかは不透明ですが、平均年収はあくまでもひとつの参考としてとらえ、自分の働き方やキャリアを考えてみるのがよいでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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