18/12/21
お金を手に入れる方法は6つある!『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』
お金について、説明できますか?
あなたはお金について、どれだけのことを知っていますか?「おおよそわかる」という人でも、子供にわかりやすく説明できるでしょうか?
私は、うまく教えられそうにありません。お金とはこういうものだとなんとなく知っているに過ぎないからです。
物々交換をしていた昔。代わりとなる貨幣の登場後しばらくは、お金といえば現金を意味していましたが、現代では現金に加え、クレジットカード、電子マネー、仮想通貨と種類が増え、お金の形態は複雑になっています。
お金をベースとする経済や金融がどんなものか、人に伝えるのは簡単なことではありません。
この本は、小説を読むように楽しめる学園ドラマ仕立ての解説書です。舞台はとある中学校の「そろばん勘定クラブ」。平凡な中2男子のサッチョウさんと、町で一番お金持ちの家の中2女子ビャッコさんが、顧問を務めるカイシュウ先生とお金について議論し、学んでいくストーリーで、お金の基本や仕事、市場の仕組みを理解できるようになっています。
主人公たちと一緒に考えながら読んでいく
最初のクラブ時間に先生が「この世には、おカネを手に入れる方法が6つありますが、なんでしょう」と質問しました。
『かせぐ』『ぬすむ』『もらう』『かりる』『ふやす』と、5つはすぐにでてきます。
生徒2人は、さらに残り一つの答えを探します。
先生はほかにも、
「物の値段はどうやって決めているか?その仕組みは?」
「目に見えないものにも値段はあるのか?」
「値段がつけられないものとは?」
「世の中の役に立つ・立たない、はどう決めるのか?」
といった答えに詰まる質問をたくさん投げかけて、2人に考えさせます。
クラブでは、経済成長の仕組みやリーマンショック、資本主義と社会主義、ピケティの学説、株式投資と神の見えざる手、そして生活保護や貧富の格差、ビットコインといった時事的問題を幅広く扱います。
難しい宿題を解くために、2人はお金について考え、調べ、体験して、ものごとの見極め方を学びます。わかりやすく解説してもらえるとはいえ、中学生にはかなり難度の高い内容となっており、私たちも彼らと一緒になって、頭をひねって考えます。
楽しく学びたい大人にオススメ
海外の先進諸国では、中学、高校の授業カリキュラムに経済や金融が含まれますが、日本の学校ではお金の授業はありません。親も教わっていないため、両親から教わることもなく、つまり誰もがお金についてよくわからないまま、社会に出てお金と直面している現状です。子供の頃に金融の仕組みについて学び、理解できていれば、経済の話を敬遠せずにもっと前向きに向き合えたことでしょう。
著者は、20年以上のキャリアを持つ経済・金融専門の現役新聞記者。本書は著者が3人の娘さんに読ませるために家庭内で7年間連載したお金の教科書で、Kindle版が昨年1万ダウンロードされ、今年書籍化されました。
娘さんたちが興味を持てるようにティーンズが主人公のわかりやすい物語仕立てになっており、苦手意識を持つ私でもすんなり頭に入りました。
ここ数年で、金融の世界は大きく変わっています。2017年の法改正で仮想通貨が法的に認められてから、法定通貨やビットコインなど、お金について考える必要性が増えてきました。
ストーリーを追いながら経済のからくりがわかるこの本は、なかなか骨太の内容。社会の仕組みを知りたい子供のほかにも、楽しく経済を学びたい学生や金融の全体像をつかみたい社会人、子どもに考える機会を与えたい親など、知的好奇心と学ぶ意識を持つ大人の願いに応えてくれる内容となっています。
お金について「知る」だけでなく「考える」ことができる1冊です。
本編第1章がWeb上で無料公開されています。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょう。
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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