18/10/19
幸福感が長続きする買い物、しない買い物(地位財と非地位財)
幸福感が長持ちをするお金の使い方と、幸福感が長持ちしないお金の使い方があるのを知っていますか?
では、幸せが長続きする消費とはいったいどんなお金の使い方なのでしょうか?それについて説明をしていきましょう。
幸福感が長続きしない「地位財」とは
サザエさんに登場するキャラクターを例えに、考えてみましょう。
フグ田家では、念願のプリウスを新車で購入、マスオさんは、自宅の車庫から出して洗車をしながら眺めるのが楽しみで、幸福感を味わっていました。ところが3ヵ月後のある日、隣の花輪家も新車を購入、なんとフォルクスワーゲンGolfです。その日から、プリウスを眺める幸福感は、すっかり消えて、マスオさんの気持ちは、敗北感に変わってしまいました。Golfがプリウスをマウンティングしてしまったのです。
所得とか役職などもそうですね。
自分の給料が上がったということで、その時は幸福感を味わえるのですが、同僚の給料の額が自分より多いというのを知ったとたん、その幸福感は失望に変わってしまいます。
こういった、幸福感が長持ちしないお金の使い方は「地位財」です。
「地位財」と「非地位財」の違い
私たちが使っているお金は、大きく分けて「地位財」と「非地位財」の2つに分けることができると提唱したのは、経済学者のロバート・フランクです。
この「地位財」と「非地位財」の大きな違いは、「幸せが長続きする消費」と、「幸せが長続きしない消費」であるといっています。
「地位財」とは、クルマとか時計、住宅、所得、貯蓄、役職などの社会的名誉です。つまり他者との比較により満足を得るものです。
「非地位財」とは、健康、愛、自主性、良質な環境などです。こちらは、他者との比較とは関係なく満足を得られるものです。
「地位財」は、手に入れるとその時は幸福感を得られるのですが、長続きしません。
ところが「非地位財」は、幸福感が長続きすることが多いと言っています。
「地位財」は他者との比較でその価値が決まってくる
なぜかというと「地位財」とは、つねに他者との比較で幸福感を得られるので、その瞬間は幸福感を得ることができるのですが、長続きはしません。そのため次の「地位財」の幸福感を得ようとして頑張ります。
その結果、仕事においては、所得は増えていくかも知れませんが、忙しい毎日を送ることになり、自分の自主性、自分の時間などを失ってしまう人もいるのです。
一方、「非地位財」は、健康とか自主性ですから、他者との比較をする必要がありません。
他者との優位を考えることがなく、誰かの指示でもありません。自分の自主性で決めます。つまり幸福感も長続きするのです。
同じものでも見方が変わると「地位財」「非地位財」になる
筆者が実際に行った家のリフォームを例にとりながら、「地位財」と「非地位財」を考えてみましょう。
リフォームをしたのは、キッチンの交換と全室の壁紙の貼り替えなどです。
その壁紙選びや、キッチンなどは、インテリアデザイナーの意見を伺いながら決めていきました。ただ、妻はブックデザインの仕事をしているので、デザインへのこだわり、色へのこだわりが細部まで半端ではありません。
同じ消費でも、とらえかたで「地位財」もしくは「非地位財」になる
こだわりが強い分、それは資材などの値段に跳ね返ってきます。当然、全体の予算も膨らんでいきました。
この膨らんだ支出というのは、妻にとっては仕事場兼自宅の環境を整えて、気持ちよく暮らしていくための必要経費だと考えます。つまり、それは、妻の「非地位財」なのです。
「非地位財」の支出の場合は、幸福感が長続きするということですから、最低10年は幸福感が長続きして欲しいものです。
ところで、筆者は、より上質なメーカーのキッチンを入れ、より上質な壁紙を貼ることで、他者との比較をしてしまいます。そこで、ホームパーティーを企画して、みんなに見てもらいたいと考えております。つまり今回のリフォームを「地位財」としてみているのです。
同じリフォームをしても、妻と筆者ではその視点によって「非地位財」と「地位財」に変わってきます。夫の方は、ついリフォーム工事費に「いくらかかった」という話をしてしまうのですが(これはまさに「地位財」の典型です)、この表現を妻は嫌います。
それは、妻にとっては「非地位財」であるので、金額の問題ではありません(といってもさすがに青天井ではありませんが)。
まとめ
人が、常に「地位財」を追求してしまうのは、DNAに刻み込まれた、進化の賜物なのでしょうか。
つい手近な満足に手を出してしまいます。長期的な幸福感を得られる「非地位財」に目がいかないときもあります。しかし、できれば短期的な幸福を得られる「地位財」よりも、長期的な幸福を得られる「非地位財」にお金を使うように心がけていきたいものです。
長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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