25/05/11
幸せになるためにお金を使おう〜『50代から考える お金の減らし方』

老後の生活のために貯金をする人は多いですが、定年後は資産が減るのが怖くて実際にはお金がなかなか使えないと聞きます。誰も自分の寿命がわからないため、貯金を使って途中で無くならないかと心配する気持ちはよくわかります。私もその時になったらとても不安になるでしょう。
そんな中、「貯金ゼロで死ぬ」をテーマにした書籍『DIE WITH ZERO』が大きな話題を呼びました。自分のお金をしっかり使ってハッピーな老後を送ろうという内容です。アメリカ人向けに書かれた同書を参考に、日本の年金、税金、社会保険制度に合わせた資産運用や取り崩し戦略を考案し、日本人に合う実践方法として紹介したのが今回ご紹介する本です。
お金持ちが幸せとは限らない
お金がある人は幸せだというイメージがありますが、持っているだけでは意味がありません。1億円残して死んだ人は、その1億円を使って得られた経験を手にできなかったことになります。億万長者でもお金を使わずに貯めこんだまま死んだら、幸せな人生を送ったとはいえないのです。
ところが実際には、高齢者は貯金の1~2割しか使わないという調査結果が出ています。年金収入のみの生活で貯蓄を崩していくのは不安ですが、大きな買い物や入院といった不測事態への備えの分を差し引いても、老後資金に極力手を付けようとしない高齢者が多いのです。
たしかに貯金があると安心ですが、お金は使ってこそ価値が出るもの。お金を使う方が満足のいく幸せな人生を送ることができます。引退後の高齢者はみんな、なるべくお金を使わないように我慢して質素に暮らしていますが、昔からの夢を叶えたり、旅行で視野を広げたり、豊かな経験をするためにはお金が必要です。
老後のために貯めてきたお金なのですから、使わないのはもったいないこと。自分のお金なのですから、使っても何の問題もありません。
お金を増やすからお金を減らすへ
ただお金をかけたぜいたくな生活をしても幸せになれるわけではありません。マイホームや高級車、宝石やブランド品、社会的地位などは持っていると幸せになれそうですが、いずれも他人と比べることで価値が出るモノです。こうしたモノの幸せは満足感が続かずに、またすぐに別のモノが欲しくなってしまいます。周りよりも抜きんでたいために持つ高級品は人との競争の道具でしかなく、お金をかけて手に入れても長く続く幸福感は得られません。
長い間ずっと幸せでいたいのならば、健康、自由、愛情、やりがいや趣味といった、それ自体に価値があるものにお金を使いましょう。人と比較することなく幸福感を得られるものは、生涯を通じて自分に高い満足感を与えてくれます。
健康で幸せな生活を送るには、人間関係を保ち続けることも大切です。家族や友人、仕事仲間といった人とのつながりは、たくさんの幸福をもたらしてくれるかけがえのないもの。自分を大切に思ってくれる人との付き合いはお金をかける価値があるものです。心地よい範囲で人と交流を続けることで、人生の幸福度が高まります。
経験にも惜しみなくお金を使いましょう。若いうちに体験したことはずっと鮮烈に印象に残ります。自分の可能性を広がるきっかけとなり、人との交流も増えるでしょう。いい思い出は思い返すたびに幸せな感動を再体験できます。「記憶の配当」は「幸せの配当」でもあるのです。
若者は血気盛んと言われるように活力がみなぎっており、気力体力ともに充実していますが、年齢が上がるにつれて感動したり経験を楽しんだりする力は少しずつ下がってしまいます。高齢になるにつれて健康は崩れやすくなるもの。若いうちにお金を使う方が、有効的な価値は高いことを覚えておきましょう。
若者は資産が少ないため、お金がかかる体験はなかなかしにくいものですが、それから先の人生のためにもなるべく経験を積むようにしましょう。未来への自分への投資になるため、長い目で見ると無駄にはなりません。
もちろん、健康に気を使うことも大切です。心の充足が一生涯にわたる大切な宝物となるように、健康な身体も快適に生きるためになくてはならないもの。心身ともに良好なウェルビーイングであり続けることが重要です。健康だとよい経験を得られる上に、重い病気にかかって入院医療費が発生することもないため、いいことづくしです。
人生の幸福度を高めるのは、人間関係・健康・経験・思い出。それらを得て幸せに生きるためにはお金も必要です。必要なときにお金を使って、その時々を有意義に楽しみましょう。
幸せになるための投資戦略・人生の計画をたてよう
幸せになりたくても貯金が底を尽かないか心配な人は、50代のうちから資産を運用するといいでしょう。資産の一部を株や投資信託などキャッシュフローを生むCF資産にすると、途中で資金切れしません。不労所得があるため収入がゼロになる心配がないと安心できます。運用資産は、コア(長期運用)とサテライト(積極運用)に分け、定年後は国債、新NISAやiDeCoといったコア資産を主体に運用し、値動きの大きいサテライト資産から取り崩していくのがいいでしょう。はじめは資産を一定の割合で取り崩し、資産が減ってきたら一定の金額で取り崩すようにすると、使い切ることが可能になります。
また、後悔しない人生を送るためには「タイムバケット」ツールがおすすめです。「死ぬまでにやりたいことリスト」を年齢別にしたもので、現在をスタート地点、人生の終盤をゴールにした表に、5年か10年区切りでやりたいことを書いていきます。自分の人生計画を時系列で考え、可視化できるため、今しかできないことに集中して取り組めるようになります。
この本は、最高に幸福になれるためのお金との向き合い方を、マンガと図解で説明しています。どのページをめくってもオールカラーで退屈しません。いつまでも続く幸せを手に入れるために、持っているお金を上手に使っていきましょう。
【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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・日本経済の停滞は官僚が原因~「官僚生態図鑑――ズレまくるスーパーエリートへの処方箋」
・幸せな人生のためにお金を使い切れ! 『DIE WITH ZERO』
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・幸せになるためにお金を使おう〜『50代から考える お金の減らし方』
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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