23/04/11
失業中にもらえる「失業手当」と「高年齢求職者給付金」の違いは?多くもらえるのはどちらなのか
失業中にもらえる手当といえば、失業手当(雇用保険の基本手当)をイメージする方が多いでしょう。しかし、失業手当がもらえるのは64歳まで。65歳以上の方が退職した場合、失業手当の代わりに「高年齢求職者給付金」がもらえるようになります。今回は、高年齢求職者給付金のしくみともらえる金額、失業手当との違いについて、解説します。
高年齢求職者給付金は「65歳以降の失業手当」
雇用保険に加入している人が離職すると、一定期間、失業手当(雇用保険の基本手当)がもらえます。これと同じように、65歳以上で雇用保険に加入している人(高年齢被保険者)が離職し、「失業の状態」となった場合にもらえる給付金が高年齢求職者給付金です。いわば、65歳以降の失業手当のようなものです。
「失業の状態」と認められるには、
①就業したいという意思がある
②いつでも就職できる能力・環境がある
③就職できていない
④積極的に求職活動をしている
という4つの条件を満たす必要があります。ですから、たとえば
・家事や家業をするため就職できない
・再就職が決まっている
・病気などで今すぐ働けない
・定年退職後、しばらく休養する
といった場合には、もらえません。
また、高年齢求職者給付金をもらうには、離職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上必要です。
高年齢求職者給付金はいくらもらえる?
高年齢求職者給付金の金額は、退職前6か月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に、所定の給付率をかけた金額(基本手当日額)です。この金額が後で紹介する給付日数分もらえます。計算方法自体は、失業手当と同じです。
●基本手当日額の計算方法(2022年8月1日〜)
厚生労働省の資料より
この表は失業手当のものですが、65歳以上の人が高年齢求職者給付金を受給する場合には、「離職時の年齢が29歳以下」のところを参照します。
基本手当日額は賃金日額によって異なり、2125円〜6835円。たとえば、毎月の賃金が18万円(賃金日額6000円)で計算すると、基本手当日額は4562円になります。
高年齢求職者給付金の給付日数は、雇用保険の被保険者期間が1年未満の場合30日分、1年以上の場合50日分です。したがって、基本手当日額4562円の場合の高年齢求職者給付金の金額は、30日分ならば4562円×30日=13万6860円、50日分ならば4562円×50日=22万8100円となります。
高年齢求職者給付金は失業手当とどう違う?
高年齢求職者給付金をもらうための条件や金額は、一見失業手当とよく似ています。しかし、失業手当と違う点もあります。
●高年齢求職者給付金より失業手当のほう長い期間もらえる
高年齢求職者給付金の給付日数は最大50日です。それに対して、定年退職した人が失業手当をもらう場合の給付日数は最大150日。給付日数が単純に3倍違います。当然、もらえる金額も失業手当のほうが多くなります。
なお、失業手当をたくさんもらうために、あえて65歳になる前に退職する方法もあります。仮に毎月の賃金が18万円(賃金日額6000円)の方が64歳で退職した場合、基本手当日額は4465円、もらえる失業手当の金額は150日分の場合53万5800円ですから、失業手当のほうがずっと多くなります。ただ、65歳より前に退職することで、会社によっては退職金や賞与が少なくなるなど、デメリットも生じます。よく確認した上で退職日を決めましょう。
●高年齢求職者給付金は失業の認定が1回で済む
失業手当をもらう場合は、4週間に1度ハローワークに行き、失業の状態であることを認定してもらう必要があります。しかし、高年齢求職者給付金は一時金なので、失業の認定も1回で済みます。
●高年齢求職者給付金はまとめてもらえる
高年齢求職者給付金は、30日または50日分を一時金でまとめてもらえます。それに対して、失業手当は28日(4週間)分ずつもらえます。
●高年齢求職者給付金は年金と一緒にもらえる
高年齢求職者給付金は年金と一緒にもらうことができます。一方、失業手当は年金と一緒にもらうことができません。失業手当をもらうと、繰り上げ受給した老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金など、65歳までの間にもらえる年金は支給停止になります。
高年齢求職者給付金は、失業手当に比べて給付日数が少ないことは少々残念かもしれません。しかし、一時金でまとまった額がもらえる、年金と一緒にもらえるなど、求職中の収入を補うのに役立つ制度といえます。
高年齢求職者給付金は何度でももらえる
高年齢求職者給付金の手続きは、最寄りのハローワークで行います。求職の申込みを行い、離職票を提出します。その後、ハローワークが指定した日に出向き、失業の状態が確認された場合に、高年齢求職者給付金がもらえます。
高年齢求職者給付金には年齢の上限や受給回数の制限がありません。条件を満たせば、離職するたびに何度でももらえます。65歳以降に退職し、次の仕事を探すならば、忘れずに手続きして、高年齢求職者給付金をもらいましょう。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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