26/06/16
【知らないと損】医療費負担が増える「年金200万円の壁」

75歳以上になると加入することになる後期高齢者医療制度では、多くの人の医療費自己負担割合は1割です。しかし、一定以上の所得があると自己負担割合が2割になり、病院やかかりつけ医の受診で支払う金額が増えることになります。
その境界線として話題になっているのが「年金200万円の壁」です。
「年金収入が200万円を超えると本当に損なのか」「医療費はどれくらい増えるのか」「そもそもどのくらいの年収の人が年金200万円以上もらえるのか」を確認してみましょう。
「年金200万円の壁」とは何か
2022年10月から後期高齢者医療制度では、一定以上の所得がある人の窓口負担割合が1割から2割へ引き上げられました。
単身世帯の場合、次の2つの条件を満たすと2割負担になります。
(1)課税所得が28万円以上
(2)年金収入とその他所得の合計が200万円以上
ここに該当する年金収入には老齢年金が含まれますが、遺族年金や障害年金は含まれません。そのため、「年金収入200万円」が一つの目安となり、「年金200万円の壁」と呼ばれています。
年金200万円、所得税は支払っていないのになぜ医療費の負担が増えるの?
年金200万円は月額にすると約16万7000円です。
計算式は次のとおりです。
200万円÷12カ月=約16万7000円(月額)
65歳以上の場合、公的年金等控除は年110万円です。また、所得税の基礎控除は2025年(令和7年)以後95万円となっています。これを合わせると205万円で年金収入よりも多くなります。つまり、年金収入200万円だと、所得税は支払っていないケースも多いのです。
●医療費負担判定は「課税所得28万円以上」が基準
後期高齢者医療制度の窓口負担が2割となる判定基準には、次の2つがあります。
(1)住民税課税所得が28万円以上145万円未満
(2)年金収入+その他所得が単身世帯200万円以上、二人以上世帯320万円以上
ここでいう「課税所得」は所得税の課税所得ではなく、住民税の課税所得です。
年金収入200万円の場合、公的年金等控除110万円を差し引くと残り(雑所得)は90万円です。ここから住民税の基礎控除43万円を差し引くと47万円となり、「課税所得28万円以上」の条件に該当します。そのため、医療費の窓口負担が2割となるのです。
年金200万円以上もらえるのはどのくらい稼いでいた人なの?
公的年金を年間200万円以上もらえるのは、どのくらいの年収があった人なのでしょうか?
簡単に試算すると、月収45万円(年収540万円)となります。
45万円(標準報酬月額)×5.481/1000×480ヶ月(40年)=118万3896円
老齢基礎年金(2026年度満額)84万7300円
118万3896円(報酬比例部分)+84万7300円(老齢基礎年金)=203万1196円(年額)
報酬比例部分には、月収だけでなく賞与も加算されますが、賞与がなかった場合でも、月収45万円で40年働き年金を納めた場合で、公的年金だけで200万円を超える計算です。そのため、年収500万円台の会社員でも該当する可能性があります。それほど高年収だった人だけが該当するわけではないことに注意が必要です。
「年金200万円の壁」は一部の高所得者だけの問題ではなく、比較的多くの高齢者に関係する制度といえるかもしれません。
夫婦世帯で「年金200万円の壁」はどうなるの?
夫婦世帯の場合は、「年金200万円の壁」だけでは判定されません。
年金収入+その他所得が「世帯で320万円以上」の条件があります。
夫婦世帯の場合、それぞれが公的年金等控除(65歳以上の場合110万円)を使えます。
まず、どちらかの年金とその他の収入が181万円以上で他に控除などがない場合、第1の条件である「課税所得28万円以上」に該当する可能性があります。
181万円(年金収入)-110万円(公的年金等控除)-43万円(住民税の基礎控除)=28万円
つまり、どちらか一方が、住民税の基礎控除以外の所得控除がなく、年金収入+その他所得で181万円以上、更に夫婦二人の年金収入+その他所得が320万円以上となった場合に「2割負担」となります。
実際の医療費負担はどれくらい増えるの?
窓口で支払う医療費が1万円だった場合、医療費が1割負担なら1000円、2割負担なら2000円となります。この場合、差額は1000円です。
しかし、持病などの慢性疾患で定期的に通院している人や、複数の医療機関を定期的に利用している人にとっては負担の増加を実感しやすくなります。
仮に、月3万円の医療費がかかった場合、1割負担なら3000円、2割負担なら6000円となり、支払額は月3000円増加します。年間では3.6万円の差になるのです。
2023年(令和4年)10月1日から3年間、1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担増加額を3000円までに抑える配慮措置がありましたが、2025年(令和7年)9月30日で終了となっています。
しかし、配慮措置が終了となったあとも窓口負担1割または2割の場合、一定の条件を満たせば、高額療養費制度により外来の自己負担の上限額は月1万8000円(年間14万4000円)までとなります。さらに「多数回該当」として過去12ヶ月以内に3回以上上限に達した場合、4回目からはさらに上限額が引き下げられます。
本当に注意した方が良いのは「3割負担の壁」かもしれない
実は2割負担以上に家計へ影響するのが3割負担です。
現役並み所得者と判定されると、現役世代と同じ3割負担になります。
単身世帯の場合は、「課税所得145万円以上」「年収383万円以上」などの条件を満たすと対象になります。10万円の医療費がかかった場合には、3割負担だと3万円です。高額な治療を受ける場合や、毎月定期的にいくつかの病院受診が必要な人ほど負担は大きくなります。
自分の負担区分を確認しておこう
75歳以上の後期高齢者医療制度では、「年金200万円の壁」を超えると医療費の自己負担割合が1割から2割になる可能性があります。
ただし、実際には所得控除後の課税所得といった複数の条件で判定されるため、年金収入が200万円を超えたら必ず2割負担になるわけではありません。
2022年には後期高齢者医療制度の見直しが行われました。今後も社会保障制度の改正が続く可能性があります。75歳以上になった場合は医療機関を利用する機会が増えるため、自分や家族がどの負担区分に該当するのか、一度確認しておくとよいでしょう。
【関連記事もチェック】
・結局、個人年金保険は一時金と年金どちらで受け取るのがお得なのか
・【知らないと損】60歳・65歳ですべき6つの年金の手続き
・申請を忘れると大損…定年前後の手取りが増える「絶対やるべき」6つの手続き
・亡くなった人の銀行口座はいつ凍結される?解除する方法は?
・国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえる?
藤田寛子 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員二種資格保有。投資歴23年
「金融はより良い暮らしのためのもの」をモットーに、難しい金融テーマを生活者目線でわかりやすく伝えることを心がけている。
自身でも長年にわたり資産運用を継続しており、シニア世代の出口戦略を見据えた資産形成や、生活防衛資金を含めた現実的な資産設計を得意とする。
現在は、暮らしに影響を与える社会保障制度・投資・資産形成に関する制度(NISA・iDeCo)・老後資産形成など、金融分野を中心に執筆活動を行っている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
























