26/07/30
有給休暇の買取は基本的に違法!認められるケースはどんなとき?

「使い切れなかった有給休暇、お金に換えてもらえないかな」——そう考えたことがある人は多いのではないでしょうか。結論からいうと、有給休暇の買取は労働基準法上、原則として認められていません。会社にお願いしても、基本的には断られてしまいます。ただし、いくつかの例外にあたる場合には買取が認められることがあります。今回は、有給休暇の買取が原則できない理由と、例外的に認められる3つのケース、そして実際に買取をお願いする際に知っておきたい注意点について解説します。
なぜ有給休暇の買取は原則できないのか
年次有給休暇は、働く人の心身の疲労を回復し、健康的に働き続けられるようにするために労働基準法で保障されている権利です。会社には、従業員が希望する時季に有給休暇を取得させる義務があり、これを金銭の支払いで代わりに済ませることは認められていません。
もし有給休暇の買取を自由に認めてしまうと、「休むよりもお金をもらったほうが得だ」と考える人が増え、有給休暇本来の目的である休養の機会が失われかねません。行政解釈でも、有給休暇の買取をあらかじめ約束し、本来取得できるはずの日数を減らしたり、請求した日数を与えなかったりすることは労働基準法違反にあたるとされています。つまり、「毎年〇日分は買い取るので、その分は休まなくていい」といった取り決めは、たとえ会社と従業員が合意していたとしても違法です。
買取が認められる3つの例外ケース
有給休暇の買取が原則違法とされるのは、会社に「休暇を与える義務」がある日数を金銭で処理してしまうためです。裏を返せば、その義務がすでに消滅している、あるいはそもそも及ばない日数については、買い取ってもらっても法律違反にはなりません。具体的には、次の3つのケースが該当します。
●(1)時効により消滅する有給休暇
有給休暇には、付与された日から2年間という消滅時効があります。忙しくて取得しきれないまま2年が経ってしまうと、その分の権利は消滅してしまいますが、この「消滅する分」については、会社が福利厚生として買い取ってくれる場合があります。本来なら失われるはずだった休暇が金銭という形で戻ってくるので、対象になっていないか確認してみる価値はあるでしょう。
●(2)退職時に未消化のまま残っている有給休暇
退職する際、退職日までに使いきれなかった有給休暇についても買取が認められています。退職すれば雇用契約自体が終了し、それ以降は休暇を取得する機会そのものがなくなるためです。実務上、退職時の買取は比較的広く行われている慣行でもあります。とはいえ、これも会社の義務ではなく、就業規則に規定がない場合は個別に相談してみる必要があります。転職や独立を控えている人は、引き継ぎの都合で有給を消化しきれないケースも多いので、退職が決まったら早めに残日数と会社の方針を確認しておくと安心です。
●(3)法定日数を超えて付与されている有給休暇
労働基準法が定める法定付与日数(勤続年数に応じて年10~20日)を超えて、会社が独自に上乗せして付与している有給休暇や特別休暇については、その超過分に限り買取が認められます。会社によっては、リフレッシュ休暇や誕生日休暇のような形で法定日数以上の休暇を用意しているケースもあり、こうした上乗せ分は法律の規制対象外だからです。自分の会社にこうした制度があるかどうかは、就業規則を確認するとわかります。
有給休暇の買取を相談する際に知っておきたい注意点
3つの例外ケースに当てはまりそうな場合でも、実際に買取を相談する前に知っておきたいポイントがあります。
●買取は会社の義務ではない
有給休暇の買取が認められるケースに該当していても、会社に買取を行う義務が生じるわけではありません。有給休暇の買取をしてほしいと相談しても、断られることは十分にあり得ます。まずは就業規則や社内規程に買取に関する定めがあるかどうかを確認し、なければ人事担当者に相談してみるとよいでしょう。
●「事前に買い取ってもらう約束」はできない
「来年発生する有給のうち何日かは、あらかじめ買い取ってもらう」というように、将来発生する有給休暇の買取を事前に約束することは、有給を取得する権利を実質的に制限するものとして違法です。買取はあくまで、時効で消滅した分や退職時など、事後的な状況に対して行われるものだと理解しておきましょう。
●取得義務のある「年5日分」は買取では済ませられない
2019年の法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される人には、年5日以上を実際に取得することが会社に義務づけられています。この5日分は買取で済ませることができず、会社が取得させなかった場合は会社側に罰則が科される可能性もあります。裏を返せば、「まず5日はしっかり休んだうえで、それを超える分について買取を相談する」という順番になる、と考えておくとよいでしょう。
●有給休暇の買取金額に決まったルールはない
有給休暇の買取金額について法律上の定めはなく、会社と従業員の話し合いで決まります。一般的には、通常の賃金や平均賃金、標準報酬月額などを基準に計算されることが多いですが、会社によって計算方法は異なります。実際にいくらになるのか気になる場合は、就業規則や給与規程に計算方法が明記されていないか確認し、不明な点は人事担当者に確認しておくと安心です。
●受け取った買取分は課税・保険の対象になる
有給休暇の買取分は、通常の給与ではなく賞与として支払われることが一般的です。賞与として扱われる場合は、所得税や社会保険料の計算対象になります。退職に伴って支払われる場合は退職所得として扱われることもあり、給与所得か退職所得かによって税金や保険料の扱いが変わってきます。思ったより手取りが少なかった、とならないよう、事前に会社へ確認しておくとよいでしょう。
ルールを確認して相談しよう
有給休暇の買取は、働く人の休息の権利を守るという本来の趣旨から、原則として認められていません。しかし、「時効で消滅する有給休暇」「退職時に残っている有給休暇」「法定日数を超えて付与された有給休暇」の3つのケースに限っては、例外的に買取が認められることがあります。
とはいえ、有給休暇の買取は会社の義務ではなく、事前の約束もできず、年5日の取得義務の代わりにもなりません。自分の会社にこうした制度があるかどうかは就業規則で確認できるので、有給休暇の消化に悩んだときは、まず社内規程を見てみる、あるいは人事担当者に相談してみることをおすすめします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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