26/07/29
会社都合と自己都合で退職金は1000万円の差!?定年退職との差はいくらなのか

会社を退職すると退職金がもらえると思っている人はたくさんいます。しかし、退職金制度がない会社も多々あるうえに、退職金制度があっても退職の理由によって金額に差が出てくるのが実情です。特に、会社都合退職の場合、自己都合退職の場合と比べ1000万円近く差がつくこともあります。今回は、退職金制度の現状と差が生じる理由について詳しく解説します。
退職金の額は「定年>会社都合>自己都合」
中央労働委員会 賃金事情等総合調査「令和7年退職金、年金及び定年制事情調査」によれば、定年退職した場合の退職金平均額は1936万8000円でした。一方、会社都合で退職した場合は1503万1000円、自己都合で退職した場合は501万2000円です。退職金の金額は、会社都合退職と自己都合退職では約1000万円、定年退職と自己都合退職では約1430万円もの大きな差が開いています。
このように差が開く原因の一つと考えられるのが、退職に至る理由です。
定年退職の場合、長年継続して働いたことへの慰労金かつ退職後の生活保障の一部としての役割があるため、比較的金額は高めです。
会社都合退職の原因は解雇・整理解雇・倒産など従業員の意思・責任以外の部分にあります。意図せずに失業する従業員への補償の意味合いがあるため、その他の条件が同じであれば自己都合退職の場合と比べ退職金額が高くなるのが一般的です。また、人件費の削減として解雇・整理解雇を行う場合、比較的給与が高い勤続年数の高いベテラン社員を対象にしていることが多く、その意味でも退職金は高くなる傾向にあります。
一方、自己都合退職はあくまで転職など自分の意思で会社を辞める人が中心です。会社都合ではない以上、就業規則によって退職金を減額する、もしくは退職金自体を支給しないとしている会社も散見されます。比較的求人も多く、子どもがいないなどの理由で家庭環境の制約を受けづらい若手や中堅層社員のほうが転職活動をしやすいのも実情です。そのため、ベテラン社員が主な対象になる定年退職や自己都合退職の場合に比べ、退職金の額は低くなる傾向にあります。
もちろん、これは「資本金5億円以上かつ労働者1000人以上」など、所定の条件を満たす198社のデータから割り出したものに過ぎず、あくまで一つの傾向に過ぎません。
また、厚生労働省はかつて就業規則のテンプレートである「モデル就業規則」の中で退職金について、受け取れる条件の一つに勤続年数を設けていました。しかし、この条件は現行の「モデル就業規則」では削除されています。そのため、今後は勤続年数が短い状態から転職をするために自己都合退職をする場合であっても、退職金を受け取れる人が増えてくるかもしれません。
そもそも退職金制度がない会社もある
会社と雇用契約を結んで働いた場合、会社は賃金を毎月1回以上、一定の期日を決めて払わなくてはいけない決まりになっています(労働基準法第24条)。働く以上、労働の対価として会社には賃金を支払う義務があるためです。
一方、退職金制度に関しては法律上儲ける義務がなく、あくまで会社の裁量に委ねられています。そのため、就労規則や労働契約で退職金を支給すると定められていれば、その内容に従って退職金を受け取れる仕組みです。
このような法的位置づけであるため、実際のところすべての会社が退職金制度を設けているとは限りません。内閣官房「令和6年度 民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書」によれば、調査対象となった1014社のうち、退職給付制度を導入しているのは88%とのことでした。そのうち、51%が退職一時金のみで、37%は企業年金も併せて導入しています。
また、企業規模別では、従業員数が50~99人の会社(443社)の場合、退職給付制度導入率は85%(退職一時金のみ56%、企業年金あり30%)だったのに対し、1000人以上の会社(45社)では、98%(退職一時金のみ29%、企業年金あり69%)に達していました。
さらに、同調査においては退職金制度未導入の会社が退職金制度を設けない理由についても調査していました。大きな理由として挙げられていたのは「従業員の流動性が高く、在職期間が短い」「月額賃金・賞与等に上乗せしている」の2点です。
前述したように、従業員数が多い、つまり規模の大きい企業ほど退職金制度が設けられている割合が高くなりますが、設けていない会社も一定数あります。そして、労働市場の流動性が高い、つまり転職する人が多くなってくれば、あえて退職金制度を設けず、給与や賞与の額を引き上げる形で対応する会社も増えてくるかもしれません。
退職金制度の有無は要確認!
退職金制度がない会社には問題があるとまでは言い切れませんが、転職する際は退職金制度の有無や設けられていない理由について調べてみると良いでしょう。そして、退職金制度がない会社に転職する場合、老後の生活費を確保するために自分で備える必要も出てきます。NISAのつみたて投資枠を活用するなど、毎月少額でも良いのでできることから始めてみましょう。
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荒井美亜 金融ライター/ファイナンシャル・プランナー
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融・マネー系の記事を主に手掛けるライターとして活動中。ゲームを通じて全国の高校生・大学生に金融教育を行うプロジェクト「Gトレ」の認定ファシリテーター(講師)として教壇にも立つ。取得資格はAFP(日本FP協会認定)、貸金業務取扱主任者(試験合格)、宅地建物取引士(試験合格)
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