26/07/21
国民健康保険料なぜ高い?安くする方法を特別公開

会社を退職して国民健康保険に加入した人や、個人事業主として働いている人の中には、「国民健康保険料が思っていた以上に高い」と感じている人もいるのではないでしょうか。
国民健康保険料は、加入者の所得や世帯の状況などをもとに算定されるため、人によって、また住んでいる市区町村によって、負担額が大きく異なります。
今回は、国民健康保険料が高く感じられる理由や、負担を抑えるために知っておきたい制度について解説します。
国民健康保険料はなぜ高いと感じるのか
日本では少子高齢化が加速しています。
高齢者が増えると医療サービスの利用も増える傾向があり、医療保険制度全体の財政を維持するため、保険料の見直しが行われています。
制度を支える現役世代の減少も一人あたりの負担額が増える要因の1つです。
そのため、「以前より保険料が高くなった」と感じる人が増えているのです。
●国民健康保険料の上限額は引き上げられている
2016年の国民健康保険料の上限額は基礎+支援分合計73万円、介護分16万円の合計で89万円でした。
その10年後、2026年の上限額は以下の通り、合計113万円と10年で24万円も限度額が引き上げられています。
【2026年度の各上限額】
・基礎課税額(医療分):上限 67万円(前年から1万円引き上げ)
・後期高齢者支援金等課税額(支援分):上限 26万円
・介護納付金課税額(介護分):上限 17万円(40歳~64歳のみ課税)
・子ども・子育て支援納付金分(令和8年度より):上限 3万円
なお、子ども・子育て支援金制度は2026年度から新設された区分です。
今後も、社会保険料負担額は引き上げられる傾向にあります。
保険料は「所得割」「均等割」「平等割」の合計
国民健康保険料は、主に次のような要件を元に算定されます。
・所得割:前年の所得に応じて計算される部分
・均等割:加入者1人あたりにかかる部分
・平等割:1世帯ごとにかかる部分(導入していない自治体もあります)
このうち、所得割は前年の所得を元に計算されます。そのため、退職や事業収入の減少などで現在の収入が減少していても、前年の所得が高ければ保険料も高くなる場合があります。
国民健康保険料を抑えられる可能性がある制度
国民健康保険料は、減免制度や軽減制度を受けることができるケースがあります。
●所得が大幅に減少した場合は減免制度の対象になることも
前年と比べて収入が大きく減少した場合や、災害、病気などで生活が困難になった場合には、保険料の減免制度を利用できる場合があります。
減免制度の対象になるか、申請条件などは、まず市区町村の窓口へ相談してみると良いでしょう。
●所得が一定以下なら軽減制度が適用される場合がある
減免制度とは別に、所得が一定以下の世帯では「軽減制度」が適用される場合があります。
軽減制度は、均等割や平等割が一定割合軽減される制度で、所得基準を満たせば適用されます。
減免制度と名称は似ていますが、対象や仕組みは異なります。
●自治体によって制度の内容が異なる場合も
保険料率だけでなく、減免・軽減制度の内容も自治体ごとに異なります。
同じ所得でも住んでいる地域によって保険料が変わる場合があるため、制度の詳細は自治体のホームページや窓口で確認しましょう。
iDeCoや医療費控除などは、国民健康保険料を安くする効果はない
iDeCoを始める、医療費控除のために申告する、ふるさと納税を活用するなどで、国民健康保険料を安くできると誤解されることがあります。
iDeCoで利用できる小規模企業共済等掛金控除や医療費控除は所得控除であり、税金を少なくする効果はあります。しかし、国民健康保険料が安くなることはありません。
●国民健康保険料の算定基準は、所得控除を引く前の所得が対象
国民健康保険料は、あくまでもこれらの所得控除を引く前の所得をもとに算定されます。
年金収入の場合は、65歳以上であれば公的年金控除額110万円、60歳~64歳までは公的年金控除額60万円を控除したあとの額が、公的年金等の雑所得となります。
給与収入の場合は、給与所得控除を差し引いたあとの額が給与所得となります。
年金収入とアルバイトなどの給与収入がある場合は、条件を満たせば所得金額調整控除により、給与所得がさらに少なくなることがあります。
それらの合計所得から差し引くことができるのは基礎控除43万円(合計所得金額2400万円以下の場合)のみで、差し引いた後の所得が国民健康保険料の算定基準となります。
なお、個人事業主である場合は、経費をもれなく計上することで事業所得自体を少なくすることができるため、国民健康保険料を抑える効果が期待できます。
「世帯分離」で国民健康保険料は安くなる?
国民健康保険料には、世帯の所得に応じて算定される「所得割」と加入者1人あたりにかかる「均等割」があります。社会人として働いている子どもさんなど、一定の収入がある家族が同居している場合は、世帯分離によって保険料負担が変わることがあります。
●親世帯のみの所得で算定されるため「所得割」が低くなる場合がある
親世帯の収入が年金のみの場合や、子どもさんが社会人で年収が親より高い場合は、「世帯分離」することで親世帯の所得割を抑えられます。例えば、夫婦と社会人のお子さんの3人家族で「世帯分離」した場合、夫婦の所得が低ければ、軽減制度の対象となることもあります。
ただし、子どもさんは新たに単身世帯として国民健康保険、もしくは会社の健康保険に加入する必要があるため、世帯全体で見た負担が必ずしも減るとは限りません。
●世帯の人数を元に決まる「均等割」も低くなる
世帯の人数分かかる均等割は、夫婦2人分となります。3人分の均等割を負担していた場合と比べると、世帯で負担する保険料の総額を抑えられる可能性があります。
●「平等割」が課されている場合は逆に負担が増えることも
ただし「世帯分離」すると、1世帯ごとにかかる「平等割」がそれぞれの世帯にかかるようになります。平等割を導入している自治体の場合は、かえって世帯全体の負担が増えてしまうこともあります。お住まいの市区町村で平等割が課されているかを確認しておきましょう。
●高額療養費制度にも影響がある場合も
「世帯分離」は、高額療養費制度などにも影響する場合があります。「世帯分離」することで、子どもさんの医療費の世帯合算はできなくなります。そのため、医療費の自己負担が上限に達しにくくなる場合があります。
逆に、「世帯分離」によって親世帯が住民税非課税世帯に該当すると、高額療養費の自己負担上限額や介護保険の負担限度額が下がり、負担が軽くなるケースもあります。
なお、「世帯分離」はいつでも元の世帯に戻す(世帯を再び一緒にする)手続きが可能です。
世帯分離をしても、世帯全体の保険料が必ず下がるわけではありません。子どもさん本人の保険料や、平等割、高額療養費制度への影響なども含めて、市区町村で試算したうえで判断しましょう。
国民健康保険料を安くする方法
ここまで見てきたように、国民健康保険料は所得や世帯構成などによって金額が変わります。ご自身やご家族の状況によって検討できる、その他の具体的な工夫についてご紹介します。
●「健康保険任意継続制度」も選択肢に
会社を退職したあとは、国民健康保険に加入する以外に、それまで加入していた健康保険に最長2年間そのまま加入できる「健康保険任意継続制度」を利用する方法もあります。任意継続は退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。
単身者の場合、「健康保険任意継続制度」を利用すると、在職中は会社と折半していた保険料を退職後は全額自己負担することになるため、国民健康保険に加入したほうが保険料を抑えられるケースも多いです。
一方、配偶者や扶養しているお子さん、ご両親など、扶養家族がいる場合は異なります。健康保険では、扶養している家族が増える分の保険料が別途かかることはありません。
そのため、家族の人数によっては、国民健康保険よりも「健康保険任意継続制度」を利用して健康保険に継続加入するほうが、世帯全体の保険料を抑えられる場合があります。退職前に両方の制度で保険料を試算し、比較検討しておくと安心です。
●家族の扶養に入るという方法も
ご家族の中に会社の健康保険に加入している方がいる場合は、その家族の「扶養」に入ることで、国民健康保険料の負担そのものをなくせる可能性もあります。一定の収入基準を下回っていれば扶養として認定され、新たに保険料を支払う必要がなくなります。
なお、健康保険の扶養については、戸籍上の夫婦でなくても、事実上婚姻関係と同様の場合(いわゆる事実婚)であれば、一定の条件を満たすことで、扶養に入れるケースもあります。一度勤務先の担当窓口などに確認してみると良いでしょう。
【注意】株式等の譲渡所得や配当所得にかかる確定申告をすると国民健康保険料が高くなることも
株式取引で損失が出た場合の繰越控除や、複数口座間の損益通算、配当控除を受けるためには確定申告(総合課税または申告分離課税)が必要です。しかし確定申告をすると、上場株式等の譲渡所得や配当所得が国民健康保険料の算定基準に含まれることになります。
その結果、国民健康保険料が高くなる場合があります。
●国民健康保険料に影響する仕組み
源泉徴収ありの特定口座での譲渡益や配当等は、確定申告をしない(申告不要)ことも選べます。ただし、損失の繰越控除や他口座との損益通算を行うには、確定申告が必要です。
一方、確定申告をすると、その所得が国民健康保険の算定対象となります。結果として国民健康保険料の算定基礎となる所得が引き上げられ、保険料が高くなる場合があります。
申告することで損失の繰り越しができるメリットがある一方、還付される金額以上に国民健康保険料が増えるケースもあるため、両方を踏まえて判断しましょう。
国民健康保険料を安くできないか確認しよう
国民健康保険料は、少子高齢化に伴う医療費の増加などを背景に、年々負担が重くなる傾向にあります。ただし、減免制度や軽減制度、世帯分離や健康保険任意継続制度、扶養の活用など、ご自身やご家族の状況によって保険料を抑えられる方法もあります。
国民健康保険料は家計に大きく影響する支出の一つです。退職前後は、国民健康保険だけでなく、任意継続や扶養への加入など複数の選択肢を比較することが重要です。
「うちの場合はどうなるのだろう」と感じたら、市区町村の窓口や年金事務所などで確認してみましょう。
国民健康保険料は家族構成や所得、お住まいの自治体によって大きく変わります。制度を比較し、自分に合った方法を選ぶことが保険料負担を抑える第一歩です。
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藤田寛子 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員二種資格保有。投資歴23年
「金融はより良い暮らしのためのもの」をモットーに、難しい金融テーマを生活者目線でわかりやすく伝えることを心がけている。
自身でも長年にわたり資産運用を継続しており、シニア世代の出口戦略を見据えた資産形成や、生活防衛資金を含めた現実的な資産設計を得意とする。
現在は、暮らしに影響を与える社会保障制度・投資・資産形成に関する制度(NISA・iDeCo)・老後資産形成など、金融分野を中心に執筆活動を行っている。
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