26/06/14
自己破産したとしても絶対に免除されない6つの支払い

自己破産は、借金の返済が困難になったときの救済制度です。自己破産をすれば借金がなくなると思われがちですが、実はどんな支払いでも免除されるわけではありません。税金や社会保険料、養育費など、自己破産後も支払い義務が残る「非免責債権」があります。
今回は、自己破産しても免除されない6つの支払いと、その理由についてわかりやすく解説します。
年間約7万人が自己破産を申し立て
借金の返済が困難になったとき、最終手段として選ばれるのが「自己破産」です。自己破産とは、債務の返済が現実的に不可能であることを裁判所に申し立て、免責(借金の支払い義務の免除)を求める手続きです。収入や資産では到底返済できないと認められた場合に、法的に借金の帳消しが許される制度であり、生活を立て直すための救済策とも言えます。
裁判所が公表する司法統計によると、令和6年度(2024年度)の個人の自己破産申立件数は7万6309件にのぼります。全国で約7万人もの人が自己破産を選択していることから、自己破産は決して特殊なケースではないことがわかります。
自己破産の原因として多いのは、かつてのようなギャンブルや浪費だけではありません。近年は、病気やケガによる収入減少、勤務先の倒産やリストラ、物価高による家計悪化など、誰にでも起こり得る事情が背景にあるケースが増えています。
また、住宅ローンや教育費、生活費の不足を補うためにカードローンやクレジットカードのリボ払いを利用し、その返済が重なって行き詰まるケースも少なくありません。
自己破産は「だらしない人が利用する制度」ではなく、予期しない事情によって返済が困難になった人を救済するための制度として位置づけられています。
そもそも自己破産するとどうなる?
自己破産というと、「すべてを失う」「社会的に終わる」といった不安を抱く人も多いですが、実際には誤解や思い込みによる心配も少なくありません。自己破産に関するよくある疑問と実際の影響について見てみましょう。
●自己破産したことが戸籍や住民票に載る?
自己破産の情報が戸籍や住民票、運転免許証、パスポートなどに記載されることはありません。自己破産しても第三者に知られることはあまりないと考えてよいでしょう。
●自己破産で引っ越しや海外旅行は制限される?
破産手続き中は一時的に引っ越しや長期の海外旅行に制限がかかることがありますが、手続き終了後は自由に行えます。ビザ取得にも影響はありません。
●自己破産したことが周囲に知られる?
破産手続きは官報に掲載されますが、一般の人が官報を見ることはほとんどありません。家族や職場に知られずに手続きを終えることも可能です。
●自己破産で自宅や車はどうなる?
住宅ローンが残っている場合、自宅は原則として手放すことになります。車についても、ローン付きの場合は引き上げられる可能性がありますが、ローンがなく市場価値が低い車であれば、手元に残せることもあります。
●自己破産で携帯電話は使えなくなる?
携帯電話は、通話料や機種代に滞納がなければそのまま使用可能です。ただし、分割払い中で滞納がある場合は、利用停止となることがあります。
●自己破産は今の仕事に影響する?
ほとんどの職業は継続可能です。弁護士、警備員、保険外交員など一部の職業では破産手続き中に資格制限がかかることがありますが、免責確定後に解除されます。
●自己破産によって就職・結婚・年金・生活保護はどうなる?
自己破産が理由で結婚や就職が制限されることは基本的になく、年金受給や生活保護の申請にも影響しません。保証人になっている場合を除き、家族が借金を肩代わりする必要もありません。
自己破産するとブラックリストに載る
自己破産の影響として、「ブラックリストに載る」ことがあります。実は「ブラックリスト」という正式な名簿が存在するわけではありません。「ブラックリストに載る」とは、信用情報機関に金融事故の情報が登録されることを指します。
日本には、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターといった信用情報機関があり、ローンやクレジットカードの利用履歴、延滞や債務整理などの情報が一定期間保管される仕組みになっています。自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されます。
自己破産の事故情報が登録された場合、ローンやクレジットカードの新規契約・更新がしばらくできなくなります。自己破産の情報は、信用情報機関によって異なりますが、5〜7年程度登録され続けます。その間は、住宅ローンや自動車ローン、スマホの分割購入なども審査に通りにくくなります。
ただし、一定期間が経過すれば信用情報は自動的に削除され、再びローンの利用やクレジットカードの申し込みが可能になります。
自己破産のメリットとデメリット
自己破産しても、日常生活にそれほど大きな影響はないことがおわかりいただけたでしょう。ここで、自己破産のメリットとデメリットをまとめておきます。
●自己破産のメリット(1) 借金の返済義務が免除される
自己破産で免責許可決定を受ければ、借入金やクレジットカードの未払い代金など、多くの債務の支払い義務がなくなります。返済の負担から解放されることで、生活を立て直しやすくなります。
●自己破産のメリット(2) 取り立てや督促が止まる
弁護士や司法書士に手続きを依頼すると、債権者からの電話や郵便による督促は原則として止まります。借金の返済に追われる精神的なストレスから解放される点も大きなメリットです。
●自己破産のメリット(3) 差押えを回避できる場合がある
借金を滞納すると、給与や預貯金が差し押さえられることがあります。自己破産の手続きを行うことで、債権者による個別の回収が制限されるため、差押えを回避できる場合があります。
●自己破産のメリット(4) 家計を立て直すきっかけになる
借金の返済がなくなれば、収入の範囲内で生活設計をやり直すことができます。自己破産は決して人生の終わりではなく、家計を再建するための制度でもあります。
●自己破産のデメリット(1) 一定以上の財産を手放さなければならない
自己破産をすると、一定額を超える預貯金や不動産、自動車などの財産は換価され、債権者への配当に充てられます。住宅ローンが残っている自宅は原則として手放さなければなりません。
●自己破産のデメリット(2) 信用情報にキズが付く
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」と呼ばれる状態で、一定期間は金融機関の審査に通りにくくなります。新たなクレジットカードの契約や更新、スマートフォンの分割購入なども制限されることがあります。
●自己破産のデメリット(3) 保証人に請求が及ぶ
借金に保証人や連帯保証人が付いている場合、自己破産によって本人の支払い義務が免除されても、保証人の支払い義務はなくなりません。そのため、保証人に対して借金の請求が行われることになります。
●自己破産のデメリット(4) 一定期間、社会生活上の制限を受けることがある
官報への掲載や一部資格の制限など、一定の影響があります。ただし、ほとんどは一時的なもので、手続き終了後には解除されます。
借金問題を解決するには自己破産以外の方法もある
個人の借金問題を解決する方法を「債務整理」と言いますが、債務整理には自己破産以外にも、任意整理や個人再生といった方法もあります。
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と直接交渉し、借金の返済条件の見直してもらう方法です。任意整理により、将来の利息カットや毎月の返済額の減額が可能になります。任意整理をしてもブラックリストには載りますが、住宅や車を手放さずにすむのがメリットです。
個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額してもらう手続きです。残った債務は3~5年で分割返済することになります。住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残しながら借金を整理できる可能性があります。
自己破産は借金が免除されるという大きなメリットがありますが、財産を処分しなければならないこともあります。どの手続きが適しているかは状況によって異なるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談して判断することが大切です。
自己破産しても免除されない6つの「非免責債権」とは?
自己破産が認められれば、そのとき抱えている債務は原則的に免除となります。しかし、どんな債務でも免除になるわけではありません。法律上、自己破産しても免除にならない「非免責債権」があります。非免責債権に該当する支払いは、必ず行わなければなりません。
以下、自己破産しても免除されない6つの非免責債権について、どんなものかを説明します。
●自己破産しても免除されない支払い(1) 税金・社会 保険料などの公的な債務
税金や社会保険料などは自己破産しても支払いが免除されません。具体的には、以下のようなものは自己破産しても免除されず、支払義務が残ります。
【自己破産しても免除されないもの】
・所得税
・住民税
・贈与税
・相続税
・自動車税
・固定資産税
・国民健康保険料
・国民年金保険料
・下水道料金
税金や社会保険料は、道路や学校などの公共サービスや社会保障制度を支えるための重要な財源です。そのため、一般の借金とは異なり、自己破産しても免除されない非免責債権とされています。
なお、水道料金のうちの上水道料金、電気料金、ガス料金などについては、自己破産により滞納している分の支払いが免除されます。
●自己破産しても免除されない支払い(2) 損害賠償金や慰謝料のうち悪意や重過失で発生したもの
事故などで他人にケガをさせたり迷惑行為を行ったりした場合、損害賠償金や慰謝料を請求され、支払い義務を抱えていることがあるでしょう。損害賠償金や慰謝料については、自己破産したときに免除になるものと免除されないものがあります。
たとえば、飲酒運転や暴力行為などにより他人に重大な損害を与えた場合、その賠償責任や慰謝料は「悪意」または「重過失」によって生じたものと見なされ、破産しても帳消しにはなりません。「悪意」とは相手に損害を加える意思がある状態、「重過失」とは通常では考えられないほど重大な不注意を指します。
こうした損害賠償請求は、被害者保護の観点から強く保護されており、加害者が自己破産しても、被害者の損害回復を妨げることはできないとされているのです。
一方、離婚や不貞行為の慰謝料については、積極的な害意があるとは言えず、自己破産により支払義務がなくなり、免除されるのが一般的です。
自己破産しても免除されず、損害賠償金や慰謝料の支払義務が残るかどうかについては、ケースバイケースで法律的な判断が必要です。自己判断せず、弁護士に相談してください。
●自己破産しても免除されない支払い(3) 親族間の扶養義務にもとづく支払い
配偶者や子どもなどの親族を扶養するために支払うお金は、自己破産したからと言って免除になるものではありません。もし免除になるとすれば、家族の生活が脅かされてしまうからです。
たとえば、以下のような支払いは非免責債権であるため、自己破産しても免除されず、支払い義務が残ります。
・離婚した元夫または元妻に対する養育費の支払い
・夫または妻に対する婚姻費用(生活費)の支払い
なお、養育費については、2026年4月施行の改正民法により「法定養育費制度」が創設されました。これにより、離婚後に養育費の取り決めをしていない場合でも、養育費を受け取る側は法定養育費(子ども1人につき月額2万円)を請求できるようになっています。養育費は子どもの生活を支えるためのお金であることから、自己破産しても免除されない非免責債権とされています。
●自己破産しても免除されない支払い(4) 従業員の給料や退職金
個人事業主が自己破産した場合、従業員の給料や退職金の支払いが残っていることがあります。従業員を保護するため、たとえ自己破産しても、従業員の給料や退職金は自己破産しても免除されないので、払わなければならないとされています。従業員に対する預り金がある場合にも、従業員に支払いを行う必要があります。
●自己破産しても免除されない支払い(5) 自己破産する際に明らかにしていない借金
自己破産で支払いが免除されるのは、自己破産手続きで明らかにし、免責許可を受けたものだけです。たとえば、家族や友人からの借金を申立て書類に記載していなかった場合、その借金は免除にはなりません。
自己破産の際には、すべての借金を明らかにする必要があります。意図的に借金の存在を隠したと判断されると、「免責不許可事由」に該当し、そもそも免責が認められません。破産申立書類は正確・誠実に作成することが、免責許可を得るための大前提です。
●自己破産しても免除されない支払い(6) 罰金などの制裁金
刑事罰として科される罰金も、自己破産しても免除されず、支払い義務は残ります。科料、過料、追徴金と呼ばれる制裁金や刑事訴訟費用なども同様です。これらの制裁金は、たとえ生活に困窮していても支払いが求められ、自己破産しても帳消しにはなりません。
非免責債権があると自己破産後も支払いは続く
税金を長期間滞納していた人が自己破産した場合、消費者金融などからの借金は免除されても、住民税や国民健康保険料の滞納分は残ります。そのため、自己破産後も自治体と相談しながら支払いを続けなければなりません。
また、離婚後に養育費の支払い義務がある人の場合、クレジットカードやローンの借金が免除されても、養育費は引き続き支払う必要があります。
「自己破産すればすべてゼロになる」と思い込んでいると、手続き後に思わぬ負担が残ることもあります。自己破産を検討する際には、非免責債権が含まれていないかを事前に確認しておくことが重要です。
特に税金や養育費は滞納すると差押えにつながる可能性もあります。借金問題の解決だけでなく、自己破産後の生活設計まで含めて考えておく必要があります。
非免責債権が支払えないときには?
自己破産した場合でも、上記のような支払いは免除されません。自己破産するとブラックリストに載ることになり、一定期間は新たな借入もできなくなってしまいます。自己破産しても免除されず、支払い義務が残ると言っても、実際に払えないことも多いでしょう。非免責債権が払えない場合には、以下のような対処法をとる必要があります。
●税金等は役所に相談
税金の滞納を続けると、延滞金も加算されるため、支払額が増えます。また、クレジットカード会社や消費者金融などの債権者が差押えを行うには、通常は裁判を起こして判決などを取得しなければなりません。一方、税金については、国や自治体が法律に基づいて裁判を経ることなく財産を差し押さえることができます。そのため、税金の滞納は特に注意が必要です。
●損害賠償金は債権者と交渉
損害賠償金を予定通り支払えない場合、分割払いや支払期日の延長について債権者と交渉する方法があります。「払えないものはどうしようもない」と放置しておくのがいちばん問題です。何も連絡せず払わずに放置していれば、裁判を起こされる可能性があります。債権者に対して誠実な対応を心がけましょう。
●養育費や婚姻費用は減額調停する方法も
養育費や婚姻費用についても、約束通り払えない場合には、受け取る側に事情を説明して話し合いが必要です。直接の話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に減額調停を申し立てる方法があります。
調停では、現在の収入状況や生活費、他の扶養義務(たとえば再婚相手など)があるかなども考慮されます。たとえば、収入が激減しており、元々取り決めた養育費を払うのが困難であると裁判所が判断すれば、減額してもらえることもあります。調停は弁護士を立てなくても申立てが可能です。費用もほとんどかからないため、活用しましょう。
自己破産しても支払いが残るものを知っておこう
自己破産をすると多くの借金は免除されますが、税金や社会保険料、養育費などの非免責債権は支払い義務が残ります。特に税金は裁判を経ずに差押えが行われることもあるため注意が必要です。自己破産を検討する際には、免除される債務だけでなく、免除されない債務についても確認し、今後の生活設計を考えておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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