18/08/15
科学者と遥かなる旅に出よう~『世界の果てに、ぼくは見た』
長い休みが取れる8月は、遠くへ旅行に行く絶好のシーズン。北に南に、旅ごころを誘われますね。今月は目を奪われるようにきれいな表紙の旅行記風エッセイです。
今回は、『世界の果てに、ぼくは見た』のレビューです。
「科学界のインディ・ジョーンズ」がお届けする旅の話
著者の長沼毅先生は、国内外のハードな環境下で生きる生物の調査をする研究家。深海の海洋生物の調査から、地底や砂漠、火山にも範囲を広げ、今では南極や北極までも研究フィールドとしており、「科学界のインディ・ジョーンズ」と呼ばれています。
著者の長沼毅先生が、これまで訪れたさまざまな場所が登場し、北極圏で世界最北端の温泉につかった話や、サハラ砂漠で月の虹を見た話、アタカマ高地で透けるほどの宇宙を見た話や、健康な人しか住めないスピッツベルゲン島といった、普通の人はまず行かない辺境の地から、さらに話は銀河にまで膨らんでいきます。
ここまで旅の話を広げられる人は、そうそういないでしょう。
あきらめずに挑戦する気持ち
交通技術の発達により、現在では世界中どこにでも行くことが可能になりましたが、それでもまだ手つかずの土地は残っています。著者はそうした地球の辺境だけでなく、南極、北極にも足を延ばし、なんと宇宙まで目指したほどの冒険家。実際に宇宙飛行士採用試験に応募しただけでもびっくりですが、準決勝まで進んだセミファイナリストとなりました。最後は惜しくも選にもれ、野口総一さんが選ばれたそうです。
彼の冒険心がとどまることはなく、その後は第52次南極観測隊員に応募し、選ばれて越冬しています。宇宙にせよ、南極にせよ、目的地が遥か彼方すぎて、読みながらただ驚くことしかできません。予想をはるかに超えるダイナミックな人です。
また著者は映画『シンゴジラ』の生態監修を担当し、本人もエキストラ出演しているそう。たしかにゴジラも、辺境の生物ですからね!
子供の頃の夢やわくわくする心をそのまま体現してくれる人って嬉しいものですね。いつまでも好奇心を持ち続けているからでしょう。「小さくまとまるなよ」と言われているような気にもなってきます。挑戦する気持ちは、誰にとっても大切なもの。あきらめない心は見習いたいなあと思います。
尽きぬ興味と話のたね
このエッセイは、読んでいるうちにどんどん話題が変わっていきます。
例えば、4ページの間に「古代メソポタミア文明→記録媒体「円筒印章」→ルーブル美術館→エルミタージュ美術館→ピョートル大帝→聖ペテロ→ペトログラード→レニングラード→サンクトペテルブルク→ペトロは石の意味→ペトロリウム(石油)→石油資源への依存→石油化学製品→20世紀文明→資源を巡る局地戦争→南極条約議定書」と話が移り変わり、その鮮やかな流れには舌を巻くほどです。
ポンポンと変わる内容に、読者は目を見張りながらついていく感じ。いろいろなものに興味があり、幅広い知識を持つ著者ならではのことで、一緒に旅をしながら傍らでおしゃべりを聞いているような気分になります。
科学の専門的な話に雑学的な小ネタを織り交ぜて、次から次へとあふれ出す冒険談。全220ページとそう長くはありませんが、地球や宇宙の神秘が詰め込まれた内容に、ぐいぐいと引き込まれます。飽きずに何度も読み返せる、大人向けの冒険科学エッセイです。
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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