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23/01/09

トレンド

脳も健康も見た目も分岐点は70歳~『70歳の正解』

脳も健康も見た目も分岐点は70歳~『70歳の正解』

生きていると誰もが必ず直面することになる、老いというリアルな障壁。年を取ることへの不安は誰もが抱えているものです。老いを乗り越えるにはどうすればいいのでしょうか。
2022年の年間ベストセラー総合第1位になった本は、老年医学の第一人者、和田秀樹博士による『80歳の壁』でした。約3人に一人が認知症となる80代。いつまでも健康で若々しくいるか、老け込んでしまうかの大きな分かれ目は70歳にあり、60代から70代にかけてどう生きるかでその後が決まってくるのだそう。今回は、その80歳の壁と合わせて読みたい和田秀樹博士の著書『70歳の正解』をご紹介。大切な70代の過ごし方に焦点を当てて解説しています。

コレステロールは避けずに取ろう

誰もが健康は大切だと思っていますが、高齢者にとって元気でいることはもっと切実な願いで、生きる希望や人生の目標にさえなっています。脳を健康にする効果があり、積極的に摂りたい食べ物は「納豆」と「肉」と「野菜」。どれも70歳を過ぎたら心がけて食べるようにしましょう。

ただ、高齢者はどうも肉を敬遠しがちです。牛肉や豚肉のアミノ酸は脳を活性させる重要な健康要素ですが、肉を食べることでコレステロール値が上がると心配する人が多いのです。

実はコレステロールが身体に悪いというのは間違い。コレステロールは人間や動物の体を形づくる脂質の一つで、老後元気に暮らすために必要なのです。たしかにコレステロールが多すぎると動脈硬化のリスクが高まりますが、かといって少なすぎるのも問題です。血管がもろくなって脳卒中を起こしやすくなるからです。免疫細胞の材料が不足してがんになりやすくなるというデータもあります。コレステロールは心を安定させるセロトニンを運ぶため、コレステロール値の高い人の方がうつ病になりにくく、なっても治りやすいのだそう。

戦後、日本人は肉を大量に食べるようになり、コレステロール摂取量が急速に増えました。その結果血管が強くなり、出血性脳卒中の死亡者が激減しました。日本人の平均寿命が世界トップクラスになった理由のひとつは、なんとコレステロールなのです。あまり敬遠せずに、肉を食べてコレステロールをほどよく摂取するようにしましょう。

せっせと噛んでボケを防ごう

ガムを噛みながら記憶力テストを受けると、正解率が2倍にアップしたという実験結果が出ました。噛むことであごの咬筋(こうきん)が動き、脳の記憶を司る海馬の血流が増えて刺激を受けた脳が活性化するのです。逆にあまり噛まないと、脳が刺激されないために認知症になりやすくなります。歯が少ない人は咀嚼をしないため、歯がある人より認知症の発症率は1.85倍も高くなるそう。さらに、噛む力が衰えた高齢者が硬い食べ物を避けると、生野菜などを摂らなくなり、ビタミン不足からアルツハイマー型認知症の発生リスクが高まるという悪循環になってしまいます。

健康に長生きするために歯はとても大切です。食事のときに意識的によく噛んで咬筋を動かすと、脳が刺激されて衰えを防止できます。スルメでも酢こんぶでも、硬いから面倒だと嫌わずに、よく噛んで食べるようにしましょう。

したいことリストを書き出そう

早いうちから定年後の「したいことリスト」を書き出すことが勧められています。まだ実感がわかないうちに先のことを考えるのは億劫ですが、自分のセカンドステージを見すえた計画立案作業だとポジティブにとらえて、大まかなスケジュールを立てておきましょう。関連本を読むと知識はつきますが、それだけで終わらせずに文字化することが大事です。リストに書き出すことでぼんやりとした考えがまとまり、自分なりの正解につながっていきます。

人生100年時代となった今、定年してからも毎日の生活は続きます。80歳になったのちもさらに90歳、100歳と日々は続いていくのです。予想以上に長い高齢期の途中で間違った道を選ばないよう、健康で人間関係にもお金にも苦しめられない最高の老後を送りたいもの。「走るより歩く」「仕事と勉強は死ぬまで続ける」といった具体的なコツも紹介されており、著者は「初めての体験へのチャレンジ」を週2回、年間100回実践しているそうです。

老いを遅らせる方法がまとめられた『70歳の正解』には今から準備できることもたくさん書かれています。読むときっと老後の不安が少なくなり、心強い気持ちになれることでしょう。

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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