18/04/12
恋愛と夢のかなえ方は似ている、『運命の恋をかなえるスタンダール』
寒さが去って、あたたかい春になりました。新しいことに挑戦したくなりますね。すてきな出会いもありそうで、ワクワクします。
今月は、そんな今の季節にふさわしい、恋愛をテーマにした本をご紹介します。
ストーリー仕立ての恋愛ハウツー本
フランスの文豪スタンダールの『恋愛論』を軸に進んでいくこの物語。原作は「結晶作用」や「悪女論」などが書かれたかなりお堅い内容ですが、原作をベースにしたこの本は、おもしろくわかりやすいストーリー仕立てになっています。
主人公は、恋愛経験ゼロの臆病な三十路の女性。自分の素性について知られることを何より恐れ、世間から身を隠すようにひっそりと生きています。全てにおいて自信がなく、引っ込み思案だった彼女ですが、憧れの人と出会ったことで自分を磨こうと一念発起。なぜか自分の前に姿を現すスタンダールにアドバイスをもらうようになってからは、みちがえるほどに変身していきます。
あまりにもとんとんうまくいきすぎますが、これは物語ではなく、ハウツー本。ラブストーリーに必要な「すれちがい」や「誤解」というエッセンスや、もっともらしいリアリティよりも、恋愛のノウハウを的確に伝えることを重視しています。本格的な物語だともっと長編になるところですが、そんなわけで展開はスピーディ。
“憧れの人が実はとんでもない悪人だった”とか、”気づけば同僚の方が好青年だった”というようなどんでん返しがあるかと思いましたが、そうしたヒネリは一切ない、あくまでポイント重視の指南書です。
恋愛と夢のかなえ方は似ている
この本のことを知らない人でも、著者は『夢をかなえるゾウ』の水野敬也氏だと聞いたら「ああ、なるほど」と思うでしょう。『夢を~』の方は夢や運、こちらは恋愛がテーマですが、話の流れは似ています。タイトルもそっくりですしね。
主人公にアドバイスをして成功へ導く存在が、ガネーシャからスタンダールになったということで、個性的なキャラクターが定番事項をわかりやすく伝えるスタイルは一緒です。ほかの登場人物も、はっきりとキャラ立ちしており、特に主人公に「安心しいや」と関西弁で喋りかける抗不安剤のパックン(薬!)がいい味を出しています。
主人公は努力の甲斐あって魅力的な女性になりますが、たとえ外見を整えても、人との接し方はなかなか簡単には変えられないもの。他人の前で萎縮してしまう、人間恐怖症のきらいがあった彼女は、これまで人と交流する度胸も経験値もなかったのに、またたく間に堂々としたふるまいを身につけ、ウィットに富んだ会話ができるようになっています。
実際にそうなるには時間と場数が必要そうですが、ここはスタンダールの魔法だと思って読み進むことにしましょう。(そんな魔法があったら、かけてほしい!)
ありのままの姿見せる
実はこの物語のラストには、「トラウマ解消」という恋愛以上に大きなテーマが隠されています。ハッピーに日々を過ごすためには、自分を苦しめる過去のトラウマをなくすことが大切。なかなかできることではありませんが、避けてきたつらい事実に目を向けることで、なにか解決の糸口がつかめるかもしれません。
殻に閉じこもるのをやめて、自分から踏み出すことが大切。勇気を出して前向きに行動できれば、世界は開けるもの。自分の力で運命を変える強さを持つ女性は、ディズニー作品やジブリ作品のヒロインのようです。
自分を偽り、世間から隠れるように生きていても、ハッピーは訪れません。ありのままの自分と向き合い、自分にも周りにも誠実でいることが一番大切です。その姿勢は恋愛だけでなく、人間関係全般に作用していきます。
春は新しい出会いの季節。恋愛はもちろんのこと、いろいろな形でめぐり逢う人との関係を円滑にしたいと願う人にとって、お勧めの一冊です。
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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