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23/07/30

トレンド

少年を通してものの考え方を学ぶ「君たちはどう生きるか」

—君たちはどう生きるかー

なんだかすごいブームですね。書店に行くたびに、うず高く平積みされたコペル君の表紙を目にします。今月のレビューは、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」です。

初刊は80年前。去年、マンガ版と原著新装版が刊行されてから、ずっと話題の本になっています。子供の頃に読んだこの物語を久しぶりに読み直すと、また新鮮な感動がありました。久しぶりに、またはお子さんと一緒に読まれた方も多いことでしょう。

少年が周囲との交流で成長していく物語を通して、ものの見方や考え方を教えてくれる本です。

物語の中心は、中学2年生の少年

コペル君は中学2年生。よき話し相手の叔父さんがいます。10歳ほど年上の叔父さんは、コペル君が興味をもったことを何でもわかりやすく説明してくれる、クレバーな大人です。
思春期や反抗期まっただ中の多感で難しい年頃ですが、叔父さんの話を聞いて、どんどん知恵をつけていくコペル君。読者は彼と一緒にさまざまなことを学んでいきます。

興味はすべて「知識」となる

物語のきっかけは、彼がデパートの屋上から地上の人々を見て「大勢の人の営みがあるから世界は存在し、自分はその中の小さな一人なんだ」と気づいたこと。
なんでも自分中心に考える子供の発想から、自分は社会の一員だと気が付いた彼を、天文学者コペルニクスの地動説の発見のようだとみなした叔父さん。コペル君の感想を丁寧に拾い上げて学問に結び付けていく、すばらしい教育者です。

自分が飲むミルクが、牛からどんなルートをたどってくるのかを考える彼に、やさしく流通経済について教える叔父さん。最近では、缶詰や加工食品の本来の姿を知らない子供が増えているそうですね。ツナやシーチキンを食べても、それがマグロだと思わないのだとか。
水族館で泳ぐ魚たちを見て「おいしそう」とか「食べたいな」と思わずに「きれいだね」という感想だけで終わるのは、ちょっと残念です。

今と変わらぬ学校問題

80年前の中学生は、今と違ってエリート予備軍でした。小学校で義務教育が終わり、旧制中学校に進学するのはほんの少数。コペル君の学友は裕福な家庭の子供たちばかりですが、やはり今と変わらず校内暴力やいじめ、不登校といった問題が起こります。

クラスの浦川君は、家が貧しい豆腐屋で、周りからいじめを受けていました。彼に平等に接するコペル君を叔父さんは誉め、働く人が世の中を支えており、生産者である浦川君は尊敬すべき人だと教えます。とかくエリートは労働者を3Kだと軽く見がちですが、この叔父さんはやはり人間ができています。

貧しいながらも中学校に進学した浦川君は、路地裏の人たちの希望の星でしょう。馬鹿にされる悔しさをバネにがんばって勉強して、やがて帝国大学に入るかもしれません。
将来はビジネスマンになって多角経営を展開したり、商店街のリーダーになって町の活性化に一役買ったりしそう。彼の今後が気になります。

ところで浦川君のお店のそばで売られている「どらやき」、おいしそうですね。今では訪問土産にもなる和菓子が、当時は駄菓子扱いされていたというのが意外。コペルくんはお母さんに食べるのを止められていましたが、焼きたてほやほやで湯気を立てているどら焼き、絶対においしいに決まっています。この作品がジブリでアニメ化されたら、きっとみんなの食欲をそそることでしょう。

経験値をバネにする

物語最大の事件は、コペル君が友達との堅い約束を破ってしまったことです。仲間同士で上級生から友達を守る約束をしていたのに、彼だけが勇気を出せず、仲間が攻撃されている様子をただ見ていることしかできませんでした。

そんな自分を責め、後悔の念にさいなまれるコペル君。
絶望して家にひきこもる彼を、叔父さんは「自分を責めるのは、君が正しい生き方を強く求めているからだ。」と諭し、仲直りへと導きます。こういう時は知識よりも経験値がものをいうものです。
自分の過ちを認めて相手に謝るのは勇気のいることですが、がんばった甲斐あって、コペル君は友達とまた元通りの仲良しに戻ることができました。

ここで気になるのは、彼を受け入れた3人の仲間です。男同士の堅い約束を破って、自分たちが上級生にいじめられている様子を眺めていたコペル君に、正直失望したに違いありません。
それでも一言も責めずに「何とも思ってないよ」と許すなんて、眩しいくらいにサワヤカ。私なら「ちょっとひどかったんじゃない?」くらいのことは言わずにいられませんが、この3人はたとえがっかりしていてもコペル君の気持ちを汲んで仲直りしてあげる、心の広さを持っています。彼らもまた、日々成長しているんですね。

コペル君のお母さんは、女学生時代の後悔した思い出を語ってくれました。
「同じことを繰り返さないための知恵になるので、失敗も無駄ではない。どんなときにも、自分に絶望しないこと。」というお母さんの言葉は、万人の心に響きます。
人は楽しいことだけでなく、心をえぐるような痛みも背負って成長するもの。

後悔した記憶はいつまでも記憶に引っかかって忘れられません。みんななにかしら、過去の失敗談を持っているものですが、人間だから間違えるのは仕方がないことで、その過ちから学ぶことが重要だと思うと、少し気が軽くなります。
きっとコペルくんも、大きくなったらこの時の話を子供たちにしてあげることでしょう。

生きる意味は自分で考える

読めば読むほど、心にしみとおるようなエピソードばかり。人が不安を抱えながら生きているのは、80年前も今も変わりません。誰でも道しるべを求めてさまよっているのです。

物語は、原作者からのメッセージで締められます。
“最後に、みなさんにおたずねしたいと思います。君たちは、どう生きるか。”

問いかけで終わるこの本に、その答えは書かれていません。
でも、ヒントはたくさん詰まっています。コペル君が叔父さんから『自分で考えること』の大切さを教えられたように、私たちも自分で感じ、考え、行動して生きていくべきなのです。

情報にあふれた現代では、受け身の態度を取って自分で考えることが少ないように思います。SNS上で「自分をどう見せるか」ばかり気にして、不安から目をそらしているようです。

迷いながら生きるすべての人に「どう生きるか」を考えるきっかけを与えてくれるこの本を、初刊から80年の間に、どれだけたくさんの人々が読み、考えてきたことでしょうか。私たちのおじいさんもひいおじいさんも、読んだかもしれません。

コペル君を温かく見守り、アドバイスをくれる叔父さんが自分にもいたらいいのに、と読者はみんな考えます。この本が、私たちにとっての叔父さん代わり。何歳になっても、読むたびに生きるヒントをもらえることでしょう。
誰が読んでも心動かされる、万人にお勧めできる良書です。

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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