18/01/13
美しく生きるためには…「美しい人をつくる『所作』の基本」
新しい年を迎えると、気持ちが引き締まりますね。「一年の計は元旦にあり」というように、自分の年間目標を立てるとともに、すがすがしい空気の中で日々の過ごし方を見つめ直すいいタイミングです。
今年最初に紹介する一冊は、枡野俊明著「禅が教えてくれる 美しい人をつくる『所作』の基本」です。
日常の中にある禅
著者は、造園デザイナーとして数多くの日本庭園を手がける禅僧。
普段の所作を整えると、そこに美しさが生じるといいます。
「行住坐臥(ぎょうじゅうざが)」という「歩き、止まり、座り、臥す」の日常動作を指す言葉があります。この「行住坐臥」のすべてを整えることが禅の修行につながるそうです。
日常に禅を取り入れることで、立ち居振る舞いの美しさが生まれるだけでなく、自然と心も整って穏やかになるというわけです。
たしかに、姿勢がよく、流れるようになめらかな所作の人は、心が落ち着いて見え、いつもキョロキョロ、ドタバタしている人は、せわしなく余裕がないように思えます。
心と身体は切り離せませんね。
数ある動作の中でも最も大切なのは、呼吸を整えること。
それだけで平静心を失わずにすみますが、呼吸のコントロールは案外難しいものです。
ゼイゼイと息を荒げたお坊さんにお目にかかったことがないのは、修行のたまものだと、改めて気がつきました。
いつもの動作を意識的に
日本独自の禅宗には、日本人の精神や思想が反映されており、抵抗なく日常生活に取り入れられるものが多いようです。
シンプルで無駄のない禅的生活がZEN LIFEとして世界で評価を受けているように、余分な動作を取り払うと、気持ちもむらなくすっきりしてきます。
毎日ストイックに修行を重ねる僧侶たちは、座禅やきつい荒行以外の時にも、たゆみなく自己鍛錬を続けています。日常の動作でも、自分の一挙手一投足に注意を払うことで無駄のない動きを生みだしています。
そう、美しい所作とは、特別になにかをすることではなく、ふだん無意識のうちに行っているさまざまな動作を丁寧にこなすことで生まれるもの。
しかし意識しなくてもできてしまうことなので、しっかりと意志を持って取り組まないと、注意を払い続けることはできません。 そもそも、日々の生活を大切にする気持ちがないと、やる意味が感じられないでしょう。
美しい心も、まずはカタチから!
背筋を伸ばして姿勢を正し、腹式呼吸で息を整えて、言葉遣いに気をつけて穏やかに暮らす。
その様子は周りの人の目に好ましく映り、何より実践することで自分が心地よくなれます。
正しく意識的な所作は、美しい動きを産むだけでなく、血の巡りもよくなって体幹力が上がり、健康にも効果的。いいことづくしです。
よく「美しい心をもちましょう」などと言われますが、ストレスの多い毎日を送っていると、なかなか聖人のようにはなれません。
著者は「心を美しくするよりも、所作を美しくする方がずっと簡単」と言います。
確かにそうですね。目に見えるところを変えるだけで、イメージはがらりと変わるもの。
心を美しくするためには、お坊さんのように無我の境地に入る修行が必要かもしれませんが、所作は気持ちさえあれば、とりあえずなんとかなります。
「ゆっくり、季節を感じながら歩く」「畳のヘリを踏まない」「ゴミは正しく捨てる」など、本に書かれていることは、心がけひとつですぐに実践できるものばかり。
ただ、意識するとしないとでは、やはり違います。
どれも当たり前のことですが、気を抜いていると、どれだけ適当な動作をしているものか、自分ではわかりません。雑な動きは投げやりに見え、恐怖の”オバサン”化につながってしまいます。
そう考えると、いくら何万円もする高級化粧品を使っていても、それだけでは完璧なアンチエイジングにはなりませんね。費用はかからないのに、美容よりも即効性があり、効果がはっきりと目に見えるのが意識的な所作。となると、これから心がけない手はありません。
丁寧に暮らすということは、美しく過ごすということ。さりげない所作の一つ一つに気持ちを込めて、新年からきれいに生きていきましょう。
『禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本』
(幻冬舎)
【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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