23/07/31
定年前後の手続きの違いで1000万円以上の差「定年後ずっと困らないお金の話」

定年は人生の大きな節目です。それまでの生活ががらりと変わり、年金や退職金の受け取り方や資産形成の方法など、お金との向き合い方を真剣に考える時でもあります。ただ、詳しい情報が得られずに、その時が来たらどうするべきかよくわからないと悩んでいる人は大勢います。
2022年に刊行された『定年後ずっと困らないお金の話』は、そうした人たちのニーズにこたえる内容で7万5000部突破のベストセラーとなりました。今回は、より大きな文字や図解を取り入れ、最新の情報に更新された新版をご紹介します。
退職金のおトクな受け取り方
多くの人が老後の生活資金に退職金を充てようと考えていますが、受け取り方で退職金の額が変わることをご存じでしょうか。退職金は一度に全額受け取る一時金と、分割して受け取る年金があり、それぞれにかかる税金が異なることから手取りの金額も変わります。たいていは一時金の手取り額の方が多くなります。どちらかを選ぶほかに、一時金と年金を併用することもできます。
また、定年前に在職中の会社から退職金を前払いで受け取り、本来の退職金が出たときに相殺することもできます。事前にお金が借りられる上に退職金の一部が課税対象から外れるメリットがあり、会社側にも税金はかかりません。このように退職金の受け取り方は何パターンもあるので、自分のライフプランに合わせたお得な方法を検討しておきましょう。
定年後だからこそもらえる手当
定年を迎えたら、年金をやりくりする生活に入ります。再就職してもたいてい収入が減るため、老後が不安でならないという声をよく聞きますが、条件を満たせば定年後にもらえるお金もあります。
たとえば定年後、求職中でも仕事が見つからないときは、年齢によって失業手当か高年齢求職者給付金がもらえます。また、再雇用・再就職で収入が減った時には高年齢雇用継続給付をもらうことができます。
年齢によっては国民年金・厚生年金とは別に、特別支給の老齢厚生年金がもらえます。国民年金や厚生年金は受給時期を繰り下げることで増額しますが、特別支給の老齢厚生年金の額は繰り下げても変わらないため、受給できるようになったら早く手続きをしましょう。
また、複数の仕事をかけもちする人は条件次第で雇用保険に加入でき、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4種類ある失業等給付を受け取ることができます。他にもいろいろな手当があるので、お住まいの市町村に確認し、もれなく手続きしておきましょう。
定年後も資産形成しよう
退職金をもらったらどうやって使うかを考えておきましょう。まとまった金額を受け取れるのは楽しみですね。パ-ッと使いたくなりますが、ここはガマンです。定年後も続く人生のために、投資で資産を増やすことを考えましょう。
NISAやiDeCoは手始めの投資にうってつけです。NISAは利益分の税金を0にできる制度で、2024年から始まる新NISAではNISA制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化、年間投資上限額の増加、つみたて投資枠と成長投資枠の併用化などの改正が行われて、より使いやすくなります。iDeCoは自分で掛金を積立てて運用し、60歳以降に受け取る年金制度で、掛金を全額所得控除できて税金が減らせるので、NISAよりも高い節税効果が得られます。
ただし、投資にはリスクがつきもの。資金が減ることもあるため、退職金を全額つぎこむのは危険です。半分ほどは預貯金や個人向け国債などの安全資産にして持っていましょう。
また、貯金を取り崩して自分のために使うことも考えましょう。資産は大切ですが、いくら貯めてもあの世にお金は持っていけません。一気に現金化するのではなく、運用しながら取り崩すようにすると、資産寿命が伸びて老後資金が増やせます。
まとめ
若い人には早期リタイアを目指すFIREなどが話題ですが、この本では全ての社会人が直面する定年退職や再雇用、年金受給などのトピックが取り上げられ、後悔しない年金の受け取り方や医療や介護に備えるお金の知識など、知っておきたいお金の話がいろいろと載っています。
新版は新NISAや新年金制度にも対応した内容になり、大きな文字で定年後の生活を意識しはじめる年代の読者の方がより読みやすくなりました。お金についての情報を上手に活用しながら、定年後の第二の人生を楽しく過ごしていきましょう。
【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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