connecting…

  • NISA
  • FIRE
  • Money&You TV
  • 確定拠出年金「iDeCo」「企業型」
  • マネラジ。
  • ふるさと納税
  • 届け出だけでお金がもらえる! 給付金制度を活用しよう
  • セミナーレポート
  • まとめ記事/チェックテスト
  • 歴女の投資ファイル
  • ズボラでも出来るシリーズ
  • 投資信託でプチリッチ!「投信ウーマン」
  • 投資女子への道
  • 恋株
  • ぽいきさんの幸せを呼び込むシリーズ
  • 大人女子を応援!家庭で出来る漢方の知恵
  • 読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー
  • 駐在マダム、モラハラ夫からの逃亡記
  • “逆打ち”お遍路をご紹介

17/07/14

トレンド

本を開けばメロディが聴こえる。「蜜蜂と遠雷」

7月は、直木賞と本屋大賞のダブル受賞に輝いた、恩田陸著の「蜜蜂と遠雷」をご紹介します。
蜜蜂が飛んでいそうな、明るい装丁。タイトルからは全く想像できませんが、ある国際ピアノコンクールの、始まりから終わりまでの流れを追ったストーリーです。

話題のダブル受賞作

音楽をテーマにした作品といえば、「のだめカンタービレ」が話題になりましたね。あの時は、ドラマ化、映画化、そして登場する曲をまとめたCDもリリースされました。
ただ、「のだめ」はギャグ要素が強く、笑いながらすいすい読めるコミック。「蜜蜂と遠雷」は、500ページにわたる文字だけの長編物語で、ちょっと読むのをためらう分厚さです。
それでも、途中で読書のモチベーションが下がることなく、最後までわくわくしながら読み続けることができました。

見方を変えれば密室ドラマ

ストーリーは、ピアノコンクール会場で展開されるドラマにほぼ絞られています。
限られた場所での物語なので、意外性がさほど期待できないシチュエーション。
でも、見方を変えれば、密室ドラマになりますね。

ミステリー作家でもある著者。この作品にホラー要素はありませんが、エントリーから三回にわたる予選、最後の本選に至るまで、出場者は常にふるいにかけられ、演奏のたびに人数が大幅に減っていきます。それはある意味、先の見えないミステリーだともいえます。

また、参加者の中のひとりの無名の少年が、今は亡き天才ピアニストの弟子であったことが判明し、関係者に大きな衝撃を与えています。少年の持つ未知の才能と彼を世に送り出したピアニストの思惑は、コンクール上での大きな謎。作品のタイトルにも関係しています。

まばゆいキャラクターたち

ピアノコンクールの出場者は十代から二十代。プロ顔負けの堂々としたピアノ演奏を披露しても、ステージを降りると、一人一人が喜怒哀楽の豊かな、年相応の若者たちに戻ります。

中でもクローズアップされたのは、ルックスも演奏も完璧な優勝筆頭候補のジュリアード音楽院生に、エントリー年齢制限ギリギリで今回がラストチャンスとなる妻子持ちのサラリーマン、幼くしてデビューしたものの突然表舞台から消え、長い空白期間の後に再び姿を現した天才少女と、養蜂家の父と各地を渡り歩いて暮らし、「蜜蜂王子」と呼ばれる天衣無縫な少年。
4名ともまばゆさのある、個性的なキャラクターで、(映画化されることになったら、配役は誰になるのかな)なんてあれこれ考えたりします。

コンクールと並行して語られる、彼らの出場理由やピアノへの情熱、そして本番に向かう思い。
どんなに技術があって有望株だと期待されていても、審査される側である以上、心配と懊悩(おうのう)は尽きないもの。
それぞれが苦悩や葛藤と闘いながら練習を重ね、他の出場者と互いに意識し合い、影響し合い、時に支え合って、コンクールに立ち向かう様子を知るうちに、読者は登場人物に親しみを感じ、いつしか彼らと一緒に一喜一憂するようになっています。
かなり、ドキュメンタリー番組に近い構成になっている物語です。

文字から響く音楽の数々

本を開いても音は鳴りません。文章で音楽を感じるのは難しいことだと思っていました。
著者はこの物語で、その不可能性に真っ向から挑戦しています。深い音楽の知識と表現力を駆使して、コンクールでの演奏の様子をさまざまに書き表しているのです。

作中に音楽の描写がある時、読者は記憶の中の旋律を思い起こしながら読んでいきます。
そのため、見知らぬ曲名が登場した場合、通常ならば途方に暮れてしまうところですが、ここでは著者の豊かな表現が想像力の助けとなって、曲の雰囲気を感じることができます。
その表現の量の多さに、圧倒されるばかり。
はじめは何も聴こえてこなかった紙面でしたが、いつしか頭の中には、最終本選で演奏されるオーケストラつきの交響曲まで鳴り響いていました。

先の見えない不安を抱えながらも、惹かれるままにピアノに向かい、地道に技術を磨いて、自分の感性を頼りに進んでいく、ピアニストたちの道。
それは、著者が歩む作家の道と重なるように思われます。文学を音楽に置き換えて、自分を振り返りながら筆を進め、丁寧にまとめあげたのがこの作品でしょう。
直木賞と本屋大賞という、タイプの違う二つの文学賞に評価された、著者の自信と覚悟が見える長編物語です。

【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
全バックナンバーはこちら
科学が好きになるサイエンス・ラブコメディ~『決してマネしないでください。』
お金にウトイ私でも簡単!~『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』
和食のレパートリーが増えそう!~「みをつくし料理帖」〜
雨上がりに輝く光と命 『死神の精度』
本を開けばメロディが聴こえる。「蜜蜂と遠雷」

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
ブクログ「本のツバサ」

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

関連するみんなのマネー相談(FP Cafe)

育児休暇中の内職ってしてもいいの?

家計・ライフ京都府 いいね 4
2015/12/04

現在会社を育児休暇中の母です。私が今回質問したいのは、育児休暇中に内職をしてもよいか、ということです。
私は十分な貯金がないまま子供を出産したので、旦那の給料のみではいずれ家計が苦しくなること...

マネー相談の続きを見る

現在、公営住宅に住んでおります。
世帯収入が低いので月々のお家賃は駐車場込みで32000円ほどです。
3LDKで、まぁまぁ綺麗ですし住む事自体には満足ですが、度々入ってくる住宅販売の広告を見...

マネー相談の続きを見る

転勤族は何時まで付いていくべき?

家計・ライフ岡山県 いいね 0
2015/06/15

私は30代主婦なのですが、我が家には4歳、3歳、0歳の3人の子供がいます。
旦那は世に言う転勤族でして、全国何時何処に異動になるか分かりません。

何度か子供を保育園に預け、私自身も働いて...

マネー相談の続きを見る

閉じる
FP Cafe® お金の相談をするなら、一生涯の「お金の相談パートナー」へ