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17/06/27

トレンド

雨上がりに輝く光と命 『死神の精度』

東北地方も梅雨入りをして、梅雨本番の時期になりましたね。
雨の日が続くと、私は「あの人がどこかで仕事をしているのかな」と思います。
あの人とは……好青年の姿をして人間の世界にやってくる、まじめな死神です。

およそ死神らしくない死神

今月ご紹介するのは、伊坂幸太郎作『死神の精度』(文集文庫)。
「死神」というと、とにかく怖い、不吉なイメージですよね。西洋の映画に出てくる無慈悲で残酷な、黒衣をまとって大鎌を持った骸骨を連想します。
でもこの作品の「死神」は、違います。無差別に人を殺しまくるような悪役ではありません。
人の命を操っているわけではなく、死期が近い人の前に現れて、その死を「可」にするか「見送り」にするかの最終決断を下す役割です。

死神ワールドについて、あまり詳しく語られませんが、物語の中の彼ら(複数います)は死ぬべき人を見極める時に人間界に降りてきます。
外見はそのたびに変わり、仕事がしやすいように好感度の高い見た目になって、ターゲットとなる人物の前に現れます。
好青年の姿で人に混ざり、誰にも怖がられない彼ら。目立たないところが、やはり従来の死神像とは違っています。

物語の主人公は、「千葉」という名で任務を遂行する死神。
死ぬことがない彼にとって、人の死に関わることは仕事の一環にすぎません。
彼の目を通して語られる死は、常にドライで淡々としており、そこに悲しさや悔しさはないのです。

特に人間が好きなわけでも、仕事熱心なわけでもない「千葉」ですが、几帳面な性格らしく、手抜きをせずにしっかり人間を観察しています。
(几帳面な死神って!?)
傍観者である彼は、人間の邪魔をしない代わり、助けることもしません。成り行き上その場で力を貸すことがあっても、彼が「可」にした人物は、ほどなくして不慮の死を迎えることが決まっています。
時々彼が発する質問は、「雨男と雪男は似ているものか」などといった、どこかずれたものばかり。本人は至って真面目なのに、相手にはとぼけているようにとられる、そのギャップにじわじわきます。

伊坂ワールドの初心者向け小説

著者の伊坂幸太郎氏は、映画化作品の多い人気ミステリー作家ながら、作品世界は基本的にハードボイルドでノワール。
登場人物はよく亡くなるし、残虐なシーンも多いため、読者を選ぶ作家です。
この作品は、死神を主人公にした6つの短編集。死なない”千葉”の目を通して語られるため、生へのあせりもあがきも、命を懸けた人間のギリギリの行動も、あくまで人ごと。
一編だけ『オリエント急行殺人事件』をベースにしたようなミステリー仕立ての話がありますが、残酷な描写がないため、伊坂作品初心者にとっては入りやすい内容になっています。

彼の作品は、人物描写や話のまとめ方が魅力的で、読んでいてぐいぐい引き込まれる面白さがあります。怖いからといって避けてしまうのは、もったいないことです。
この短編集は、思わぬところに仕掛けが潜んでおり、隠された設定に気づくとまた一層楽しめます。
まずは伊坂ワールドの導入モノとして読んでみるのに最適なのではないでしょうか。後日談として『死神の浮力』(文集文庫)も出ています。(ただしそちらは長編で、内容はかなりハードボイルドです)

音楽に目がありません

人の死に関与する死神は、命を張ったトラブルに巻き込まれがち。
それでも人ではない彼らは、死ぬことはなく、痛みも感じません。
一見うらやましく思えますが、寝ることもなく食事もとらないとなると、「えっ?」と驚きます。
おいしいものを食べて幸せになれないなんて、いったい何が楽しいんでしょう。
不死身の彼にとって、時間は無限。時間の観念はあまりありません。
永遠に死神として存在し続けています。

そんな死神たちにも、楽しみがあります。それはなんと音楽です。
人間には興味を持たないのに、人間が作った音楽をこよなく愛する彼ら。
映画『ベルリン・天使の詩』になぞらえて、「天使は図書館にいるようだが、我々はCDショップにいる」と語る「千葉」。
人間界にいる間、暇を作っては音楽が聴ける場所にいりびたるそうです。
「CDショップの視聴コーナーにかじりついて動かない奴は、死神だ」なんて聞くと、実際にそうした人を見たら気になってしまいそう。
彼らの音楽への偏愛が、時には死の判定にも影響するという、死神次第の私たちの人生。まあ、人間にはどうにもできないことですからね。それにしても、食べ物も睡眠も音楽もないなんて、死神の世界はどれほど退屈なものなんだろうと同情します。

さらに「千葉」が人間界に来るときは、どういうわけか決まって雨の日ばかり。ほかの死神はその限りではありませんが、彼は晴れの日に当たったことがないという、徹底した雨男ぶりです。
そのため、6つの物語すべてが、雨の中で展開していきます。常に雨とともに人の前に登場する自分は陰気くさいと、本人も思っているようですが、「まあそれも死神らしいだろうから」と半ばあきらめています。
たとえ死神でも、天気はコントロールできないわけですね。そして、じめじめした雰囲気を好みそうなのに、実は雨より晴れの日の方が好きだという彼らに、なんとなく親しみを感じます。

最初は、死を恐れぬクールな死神にあこがれ、次第にその退屈さに気がつき、最終話にもなると、死期が迫った人の方がまぶしく輝いて見えます。
死にゆく老婆に青空の美しさを教えられて、感動する死神。死があるからこそ生がある、変化することの素晴らしさ。幸せってきっとそういうものだと、人間である私たちは知っています。

最後まで読み終えると、雨上がりの晴れ渡った空を見上げるような、雨露のしずくが乗ったアジサイが辺りに咲き誇っているような、すがすがしさを感じられる短編集です。
ぜひこの時期に読んでみてはいかがでしょうか?

【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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雨上がりに輝く光と命 『死神の精度』
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小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
ブクログ「本のツバサ」

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