16/03/08
女性から問い合わせが急増している「がん保険」を徹底解剖!
がんになった場合、「身体的負担」「精神的負担」「経済的負担」の3大負担が発生します。この3大負担に対していかに対処していくかどうかが、がんとの戦いということです。
幸運なことに、わが国日本では、世界最高水準の公的医療制度「健康保険制度」により、病気やケガをしたときの補償はある程度されています。実際にかかった医療費の3割負担で済むなんて素晴らしいことです。
こんなに素晴らしい制度でも、がんにかかった時の「経済的負担」は大きなものとなります。その上、がん治療時に先進医療(重粒子線治療や陽子線治療など)を利用した場合、これらの治療費は、健康保険の対象とならず、全額自己負担。また、がんと診断された時の「精神的負担」も甚大で一種のパニックを起こす人が多いことでしょう。そんな精神状態で病院・医師選びや治療法を決められるかどうか。この機会に「がん保険」を一緒に確認しましょう。
がん保険は、がん治療に特化した医療保険
がんは傷病として「身体的負担」が大きい恐ろしい病気ですが、「経済的負担」「精神的負担」という点でも警戒すべき病気です。昔に比べて、早期発見時のがんの根治率は増えているものの、その際に、保険適用のない薬剤や治療法を受けることは決して珍しいことではありません。
その際に響いてくるのが、3割負担の効かない「経済的負担」なのです。医療機器の数が少なく、順番待ちで全ての人が受けられない可能性が高いのですが、先進医療の陽子線治療、重粒子線治療、免疫療法などの「経済的負担」は甚大です。
がん保険の補償対象と保険料
がんと診断された場合、がんによる入院・通院・手術などを対象とした保険であるため、一般の医療保険より保障範囲が狭いですが、経済的負担が大きいため保険料は医療保険より「高い」のが特徴です。
告知義務が有る点が特徴
告知義務はあるが、一般的に告知のみの無診査なので、責任開始までの待ち期間(不担保期間)があります。保険商品の中には、喫煙者でなければ保険料が安くなるものもあります。これは喫煙すると肺がんになる確率が高いためですが、「国立がん研究センター」によると日本では、男性で4.4倍、女性で2.8倍程度であると、その影響の大きさを定量的に評価しています。
がん保険の給付金の種類
① 診断給付金
「がん」と診断されたときに支払われます。最近では、上皮内新生物でも診断給金が支払われる保険商品もあります。上皮内新生物とは、名前が難しすぎますが、転移や再発がほぼゼロのがんと覚えておけば良いでしょう。正確には、がんが上皮内にとどまっており、基底膜以降の組織に浸潤していない状態のがんを指します。
② 入院給付金
給付日数、支払回数に制限がないのが一般的です。最近は、病院側の受け入れの問題や治療法の高度化により長期の「入院治療」になることは少なく、「通院治療」となることが多いのが実情です。
③ 通院給付金
一部の保険商品では残っているものの、給付日数に制限がないのが一般的となってきました。この「通院費用」が十分に補償されているかが重要です。
なぜならば、昔と異なり、がん治療は「通院治療」が一般的になっているからです。保険商品の中に「がん入院給付金が支払われる入院をし、退院後180日以内」というような条件がついているものが多いのが実状です。
④ 死亡給付金
がんで死亡した場合はがん死亡給付金が支払われるものもあります。ただし「がん」を直接の原因とする死亡は滅多にありません。がんによる免疫低下が原因で合併症を併発し、それが原因で死亡する場合が多いのです。この場合、死亡給付金は支払われません。以上の経緯から、死亡給付金はなくても問題ありません。特約として付与できることが多いこの給付金ですが、付与することで保険料が上がるならば外しておいて問題ないでしょう。
「精神的負担」を緩和する付帯サービス「セカンドオピニオン」
医者のセカンドオピニオンが無料で行える付帯サービスがついている保険商品があります。このセカンドオピニオンサービスは、ティーペック株式会社の「T-PEC」と、株式会社法研の「プレミアサポート」があります。保険の本質が、自分では対応できない万一に備えるために入るものだとすれば、こういったサービスが付帯されているがん保険はまさにその典型と言えます。
セカンドオピニオンサービスが付帯されている保険会社の具体名を挙げますと、「T-PEC」はアクサ生命、オリックス生命、富士生命、明治安田生命、メットライフ生命など、「プレミアサポート」はアフラックです。
なお、このセカンドオピニオンサービスに個人的に加入したい場合、「T-PEC」は入会金54,000円、月会費10,800円がかかります。入会金を除いても、年間で129,600円と高額です。「プレミアサポート」の個人的な加入は、現時点では不可となっています。
女性特有のがん保険(特約)について
最後に、女性向けがん保険(特約)の補足をしておきます。女性特有のがんの特徴として、例えば、乳がんの治療後は、ホルモン治療でお金がかかる場合があり、手術後は、リンパ浮腫など後遺症が発生することも多く、その治療には長期間を要し、保険適用外の治療があります。
また、乳がんで乳房を失う場合があり、女性として大切な器官を失うことになるため、乳房再建術を選ばれる方が多くいます。乳房再建にかかる費用は、一般的ながん保険では補償対象外であることが多く、「女性向けのがん保険」または「女性特約」へ加入することにより、「経済的負担」に備えることができます。
保険の本質は「自分では対応できない万一に備えるために入るもの」です。僕個人としては、健康保険制度やある程度の貯蓄により、どうにかできてしまう傷病に対して備える「医療保険」の加入は否定派です。でも、「身体的負担」「精神的負担」「経済的負担」の3大負担に対応した「がん保険」への加入は賛成派です。
皆さんが過度に保険に加入しないよう、そして本当に必要な保険に加入できるよう、本記事が参考になれば幸いです。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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