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21/11/03

相続・税金・年金

「老後の資金がありません!」…なぜお金がない問題が発生するのか 50代が陥るお金の落とし穴

2021年10月30日に「老後の資金がありません!」という映画が公開されました。コツコツお金を貯めてきた天海祐希さん演じる50代の主婦が、次々にお金の問題に振り回される…というストーリーです。

50代になって出てくるお金の問題は現実社会でも十分起こり得ます。そこで今回は50代になり、堅実に暮らしてきた人でも突然起こりうるお金の問題をご紹介します。またそのような問題が起きる前に、今のうちからできる準備についても解説します。老後の資金計画をできるだけ狂わせることのないよう、対策しておきましょう。

50代のお金の問題1:親の介護費用を負担することに…

50代に差し掛かると、親世代の介護が必要になるリスクが高まります。その場合、介護費用を子どもであるご自身が負担しなければならないケースもあるでしょう。

生命保険文化センター「2021年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉によると、介護期間および介護費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)の平均値は以下のとおりです。

介護期間:61.1ヵ月
一時的な介護費用:74万円
介護費用(月額):8.3万円

上記の一時的な介護費用(初期費用)と月々の介護費用に介護期間をかけあわせた介護費用の総額は581万円となります。もっとも、この金額はあくまでも平均値なので、介護期間や利用する介護サービスによって金額は大きく異なります。たとえば介護付有料老人ホームを利用する場合、入居一時金が1,000万円以上かかる施設もあります。

50代は子どもの大学進学の時期と重なるご家庭も多いので、親の介護と重なった場合はさらなる金銭的負担がかかってしまいます。また親の預貯金等で介護費用を賄える場合でも、認知症になった場合は本人の預金は原則引き出せなくなるので注意が必要です。

●民間の介護保険や家族信託で備える

このようなリスクに備える手段としては、民間の介護保険に加入するという方法があります。公的介護保険は介護サービスが1~3割の自己負担で利用できる「現物給付」ですが、民間の介護保険は「現金給付」なので、幅広い用途で利用することができます。無理なく保険料を支払えるようであれば、民間の介護保険への加入を検討してみてもよいでしょう。

また親が認知症や預貯金の管理ができない状態になっても親の資金を介護費用に充てたい場合は「家族信託」という方法があります。家族信託は介護に必要な資金の管理など特定の目的に従って、その人が保有する資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。

家族信託の契約には委託者となる親の合意が必要なので、事前に目的やどの資産を信託財産にするかを話し合う必要があります。また家族信託の手続きには、司法書士などの専門家の相談料や公正証書作成のための費用として合計50~100万円程度の費用がかかります。このような点もふまえて検討してみるとよいでしょう。

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50代のお金の問題2:病気のリスクが高まり医療費がかさみ始める時期

50代以降はご自身が病気にかかりやすくなる年代でもあります。厚生労働省「平成30年度 国民医療費の概況」によると、年齢が高くなるにつれて医療費が高くなる傾向にあり、55歳以降の一人あたりの医療費は年間21.8万円と、20万円を突破しています。

病気になってしまうと金銭的な負担だけでなく、精神的な苦痛や生活の質(QOL)の低下も伴います。さらに今後の働き方に影響を及ぼすような大きな病気の場合、その後の収入計画も狂ってしまう点にも注意が必要です。

●まずは予防から!民間の医療保険も検討しよう

医療費を抑えるためには、病気の予防に努めることが第一です。健康的な食生活や適度な運動など出来るところから始めてみてはいかがでしょうか。また、病気の早期発見のために、定期的な健康診断や人間ドックの受診も忘れないようにしましょう。

また、病気にかかった場合の医療費負担に備える方法としては、民間の医療保険に加入するという方法があります。公的医療保険には所得に応じて医療費の自己負担額が一定額までに抑えられる「高額療養費制度」がありますが、保険適用外の治療や医療サービスには利用できません。

たとえば入院が必要になった際に個室や少人数部屋を希望する場合、1日あたり約2000円~8000円程度の差額ベッド代がかかることがあります。1日5000円の差額ベッド代がかかる病院に1ヵ月入院した場合、トータル15万円もかかってしまいます。またがんなどの治療で先進医療(厚生労働省が認めた高度な医療技術)が必要な場合、100万円以上の治療費がかかるものもあります。

もしこのような費用が発生しても預貯金でカバーできるのであれば民間の医療保険は必須ではありませんが、前述したとおり50代は親の介護や子どもの大学進学と重なりやすい時期でもあります。このようなリスクに備えたい場合は、民間の医療保険への加入も検討してみるとよいでしょう。

50代のお金の問題3:もらえる退職金が思ったより少ない…

会社員や公務員などの給与所得者にとって、退職金は老後の資金の大きな支えとなる方は多いはず。その退職金が想定していた金額より少ないとなれば、老後のライフプランが大きく狂ってしまう可能性があります。

フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所「高齢者の生活リテラシー」によると、退職金の金額を把握した時期が「定年退職前1年以内」である人が約3割、さらに「退職金を受け取るまで金額を知らなかった」人も約3割いるという結果が出ています。

想定どおりの金額またはそれを上回る金額をもらえる場合はよいのですが、そうでない場合はゆとりある老後生活に影を落としかねません。とくに退職金を住宅ローンの完済やリフォーム費用など大きな支出の当てにしている場合は注意が必要です。

●早めに退職金額の把握を!企業型DCがあるならポートフォリオの見直しも

このような事態を回避するために、早めに会社の規約を確認したり人事部などに確認したりするなどして、どのくらい退職金がもらえそうか把握しておきましょう。

また会社に確定拠出年金(企業型DC)がある人は、ポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)の見直しも検討するとよいでしょう。20代・30代であれば、株式を中心としたある程度リスクをとった積極的な運用をおこなっても、定年退職まで時間があるのでリカバリーが可能です。しかし定年退職まで多くの時間がない50代は、国内債券を中心とした安定性を重視した運用で「資産を減らさない」よう意識を切り替えることが大切です。

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まとめ

50代は子どもの教育費や住宅ローンの返済など、一般的に家計の支出が多くなる年代です。そのような時期に想定外のお金の問題が発生すると、コツコツ貯めた老後資金に手を出さざるを得ない可能性が出てきます。

今回ご紹介した「50代のお金の問題」は多くの人が晒されるリスクなので、老後資金を守るために早めに対策しておくことをおすすめします。

鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com

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